
書籍名
全2巻 戊辰戦争の新視点 (上) 世界・政治 (下) 軍事・民衆
判型など
(上) 212ページ、A5判 (下) 222ページ、A5判
言語
日本語
発行年月日
2018年1月31日
ISBN コード
(上) 9784642083294
(下) 9784642083300
出版社
吉川弘文館
出版社URL
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戊辰戦争とは、1868年(慶応4年=明治元年)正月3日に鳥羽・伏見の戦いが勃発してから、翌1869年(明治2年)5月18日に榎本武揚以下の旧幕府脱走軍が降伏して箱館戦争が終結するまでの約1年半に及ぶ日本国内の戦争である。この戦争は、日本の近代が創出される過程において大きな転換点となり、その後の近代国家・社会の形成に多大な影響を及ぼしている。
戊辰戦争は、時代や地域による歴史観の違いはあるにせよ、現在に至るまで多くの人々の興味・関心を集め続ける歴史上の出来事であり、日本史学界でも、その歴史的評価をめぐって大きな論争になったほどの重要な研究対象の一つとなってきた。
本書を刊行した2018年は、戊辰戦争の勃発から150年目の年である。編者一同は、政府によって「明治百年」の年とされた1968年のように、「明治150年」とされる2018年も、研究者の関心が高まるだけでなく、各地の博物館等における特別展や一般向けの出版などが盛んに行なわれるのではないかと予想し、本書の刊行を企画した。その内容は、現在までの研究成果を集大成するだけでなく、今後の研究を推進させる新たな視点や、これまで未開拓であった分野の研究材料となる新出史料の紹介など、最新の研究動向について、研究者のみならず一般読者にも分かりやすく伝えることに努めている。
これまでの戊辰戦争研究は、政治史や国家権力論といった観点からの研究に関心が集中してきたが、最近では軍事史研究の分野でも、個別の戦闘経過や戦局の推移を明らかにする狭義の戦史研究から、軍隊や戦場における社会史的な物事に着目する新たな軍事史研究へと展開している。また、戊辰戦争を日本史の枠組みにとどまって解釈するのではなく、海外所在の日本未紹介史料を積極的に利用し、欧米列強の監視下で遂行された内戦として世界史の中に位置づける試みも活発になった。本書では、こうした成果や研究動向をできる限り紹介するようにしている。
本書は、上巻を「世界・政治」、下巻を「軍事・民衆」とし、各巻9名ずつ計18名の研究者によって執筆を分担した。上巻では、国際法のなかで戊辰戦争がどのように展開したのか、各国はこれをどう見ていたのかという世界史との関わり、維新政府による諸政策、奥羽越列藩同盟や大奥の動向、戊辰戦争をめぐる歴史叙述の問題といった政治との関係を論じた。下巻では、陸海軍の軍事力、戦費調達などの軍事面、民衆の負担・被害や主体的対応、戦場となった諸地域の状況など、従来あまり取り上げられてこなかったテーマにも光を当てた。
戊辰戦争研究は、かつての国家権力闘争史あるいは近代国家形成史として解釈する狭義の政治史・国家史的研究の段階から、世界史、民衆史、そして社会史的観点を組み込んだ広義の軍事史など、多様な視点から多角的に研究される段階に至っている。編者としては、本書が提示した様々な視点・論点が、今後の戊辰戦争研究の進展に寄与することを願っている。
(紹介文執筆者: 史料編纂所 准教授 箱石 大 / 2018)
本の目次
【上】世界・政治
カラー口絵/刊行にあたって
I 世界史のなかの戊辰戦争
国際法のなかの戊辰戦争 保谷 徹
フランス・ジャーナリズムと戊辰戦争 寺本敬子
ロシアから見た戊辰戦争 麓 慎一
ドイツ公使から見た戊辰戦争 ―蝦夷地と内戦の行方をめぐるブラントの思惑― 福岡万里子
II 戦争と政治
維新政府による旧幕藩領主の再編と戊辰戦争 箱石 大
軍事同盟としての奥羽越列藩同盟 ―会津藩・庄内藩・小藩・飛び地― 栗原伸一郎
静寛院宮・天璋院の行動と江戸城大奥の消滅 畑 尚子
戊辰戦争下のキリスト教政策 清水有子
戊辰戦争の歴史叙述 松沢裕作
参考文献/関連地図/関連年表
【下】軍事・民衆
カラー口絵/刊行にあたって
I 戦争と軍隊
戊辰戦争期における陸軍の軍備と戦法 淺川道夫
戊辰戦争の海軍力と基地機能 ―江戸・東京近海の榎本艦隊をめぐって― 神谷大介
長州藩慶応期軍制改革と藩正規軍 柳澤京子
戊辰戦争の戦費と三井 村 和明
II 戦争と民衆
東海道軍と沿道の人々―横浜とその周辺地域を中心に 小林紀子
江戸周辺地域における内乱と民衆 宮間純一
「上野のお山」をめぐる官軍と江戸市民の攻防 奈倉哲三
徴発と兵火のなかの北東北の民 ―秋田藩と盛岡藩の戦争にみる― 菊池勇夫
戊辰戦争期の宗教政策 ―神仏分離と招魂祭― 三ツ松 誠
参考文献/関連地図/関連年表
関連情報
加藤陽子(東京大学教授)評 (『毎日新聞』今週の本棚 2018年6月24日朝刊)
http://mainichi.jp/articles/20180624/ddm/015/070/026000c
天野真志(国立歴史民俗博物館特任准教授)評 (『歴博』第209号 2018年7月20日)
https://www.rekihaku.ac.jp/outline/publication/rekihaku/209/index.html
加藤陽子(東京大学教授)評 (ALL REVIEWS書評/解説/選評 2018年11月8日)
https://allreviews.jp/review/2683
書籍紹介:
『読売新聞』2018年3月7日朝刊
『産経新聞』2018年3月25日朝刊
https://www.bookbang.jp/article/549952
『毎日新聞』2018年4月28日朝刊