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白とウグイス色の表紙

書籍名

「家族の幸せ」の経済学 データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実

著者名

山口 慎太郎

判型など

259ページ、新書版、ソフトカバー

言語

日本語

発行年月日

2019年7月18日

ISBN コード

978-4-334-04422-0

出版社

光文社新書

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「家族の幸せ」の経済学

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「帝王切開なんてダメ、あんなの本当のお産じゃない。落ち着きのない子に育ちますよ。
「赤ちゃんには母乳が一番。お母さんの愛情を受けて育つから、頭も良くなるんだよ。」
 
「子どもが3歳になるまでは、お母さんが付きっきりで子育てしないとダメ。昔から、三つ子の魂百までっていうでしょう。」
 
どのように出産を迎え、子育てをすればいいのか日々悩んでいる母親、父親の耳には様々な意見やアドバイスが飛び込んできます。こうしたアドバイスをしてくれる人の多くは、相手のためになると思っていますし、自身や周囲の人がそれでうまくいったという確信もあります。
 
確かに、身近な人のエピソードや口コミには独特の説得力がありますが、これらは本当にあてにしてよいのでしょうか。実は、近年の経済学の研究は、ここに挙げたアドバイスがすべて間違いであることを示しています。
 
本書は結婚、出産、子育てにまつわる事柄について、経済学をはじめとしたさまざまな科学的研究の成果を紹介します。たとえば、保育園に通うことで、子どもが知能面でも情緒面でも健やかに発達するだけでなく、母親の幸福度までが高まることが明らかにされています。
 
子どもが生まれたら、育休を取ることで仕事と子育ての両立を目指す母親も少なくありませんが、ちょうどいい育休の長さは1年ぐらいであり、3年にも渡るような長期の育休はキャリアにとってマイナスになるのみならず、子どもの発達にとっても好ましくないことがわかっています。子どもの発達には、家族以外の大人や子どもと触れ合うことが、とりわけ言語面の発達に重要だからです。
 
そして、育休を取るのは母親に限りません。これからの時代の父親たちは育休を取るようになると見込まれていますが、たとえ1ヶ月の育休でも、その後のライフスタイルが大きく変わり、家事や子育てに積極的な「イクメン」化が進むことがわかってきています。
 
こうした知見は、実社会から得られたデータを分析することによって得られたものです。国勢調査のような大規模な公的調査はもちろん、社会実験から得られたデータや、恋愛と結婚のためのマッチングサイトの利用者データなども分析に活かされています。データ分析によって、個人の体験談の寄せ集めなど比較にならないほど信頼性の高い知見が得られるようになるのです。
 
経済学というとお金にまつわる学問だから、結婚、出産、子育てはもとより、家族の幸せとは関係ないのではないかと思われるかもしれませんが、決してそんな事はありません。経済学は、人々がなぜ・どのように意思決定し、行動に移すのかについて考える学問ですから、そこで得られた知識を活かすことで、家族の幸せにより近づくことが出来るのです。経済学研究の最先端に触れることで、ぜひそのエッセンスをご家族とあなた自身の幸せに活かしてください。

 

(紹介文執筆者: 経済学研究科・経済学部 教授 山口 慎太郎 / 2020)

本の目次

はじめに
 
第1章  結婚の経済学
1. 人々は結婚に何を求めているのか
2. どうやって出会い、どんな人と結婚するのか
3. マッチングサイトが明らかにした結婚のリアル
 
第2章  赤ちゃんの経済学
1. 出生体重は子どもの人生にどのように影響を与えるのか
2. 帝王切開は生まれてくる子どもの健康リスクになるのか
3. 母乳育児は「メリット」ばかりなのか
 
第3章  育休の経済学
1. 国によってこんなに違う育休制度
2. お母さんの働きやすさはどう変わる?
3. 育休と子どもの発達を考える
4. 「育休3年制」は無意味。1年がベスト

第4章  イクメンの経済学
1. 日本は、制度だけ「育休先進国」
2. 育休パパの勇気は「伝染」する
3. 育休で変わる家族のライフスタイル
4. では、夫婦の絆は深まるのか

第5章  保育園の経済学
1. 幼児教育の「効果」について考えてみる
2. 家庭環境と子どもの発達
3. 保育園は、母親の幸福度も上げてくれる
4. 無償化よりも待機児童解消を急ぐべき理由

第6章  離婚の経済学
1. 「3組に1組が離婚している」は本当か?
2. 離婚しやすくなることは、不幸だとは限らない
3. 離婚は子どもたちにどう影響するか
4. 共同親権から「家族の幸せ」を考える
 
あとがき

関連情報

受賞歴:
2019年サントリー学芸賞受賞 (政治・経済) (サントリー学芸賞 2019年12月)
https://www.suntory.co.jp/sfnd/prize_ssah/detail/201902.html
 
週刊ダイヤモンド 2019年ベスト経済書 第1位 (週刊ダイヤモンド 2019年12月)
https://diamond.jp/articles/-/224394
 
中央公論新社 新書大賞2020 第5位入賞 (中央公論新社 2020年2月)
https://chuokoron.jp/shinsho_award/archive/
 
著者インタビュー:
成相通子「不利なデータも隠さない、家族の経済本がヒット。効果が大きい日本の残り3%とは」 (『Forbes JAPAN』 2020年2月14日)
https://forbesjapan.com/articles/detail/32294
 
石川奈津美「3組の夫婦のうち1組が離婚はウソ? データで見る離婚のリアル」 (BLOGOS 2019年11月16日)
https://blogos.com/article/417349/
 
立松真文「『「家族の幸せ」の経済学』山口慎太郎さんインタビュー 無償化より待機児童解消を急いで」 (好書好日 2019年10月22日)
https://book.asahi.com/article/12801880

川崎隆司「長い育休は逆効果、子育てと仕事の両立ができる環境整備を」 (WEDGE 2019年9月26日)
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/17448
 
中西史也「「育児は母親がすべき」は“神話”にすぎない」 (WEB VOICE 2019年9月10日)
https://shuchi.php.co.jp/voice/detail/6814
 
中西史也「データ分析でわかった、育休が1年で十分な本当の理由」 (WEB VOICE 2019年9月13日)
https://shuchi.php.co.jp/voice/detail/6815
 
新聞での書評・紹介:
柳煌硯 評 (『生活経済政策』 2019年12月号)
http://www.seikatsuken.or.jp/monthly/month2019.html
 
藤田一郎「研究員オススメの一冊」 (日本政策金融公庫『調査月報』 2019年12月号)
https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/tyousa_gttupou_1912.pdf
 
平石界 評「(今を読み解く)進化が促す 父親の育児 一人では負担重すぎる」 (日本経済新聞 2020年3月14日)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO56764380T10C20A3MY5000/
 
読書欄 (西日本新聞夕刊 2020年3月2日)
 
福島清彦 (経済学者) 評「身近なテーマをデータで論じる」 (公明新聞 2020年2月17日)
 
小国綾子「あした元気になあれ 男性の育休は「伝染」する」 (毎日新聞夕刊 2020年1月28日)
https://mainichi.jp/articles/20200128/dde/012/070/012000c
 
石川尚文 評「売れてる本」 (朝日新聞 2019年1月12日)
https://www.asahi.com/articles/DA3S14322932.html
 
小林佑基 評「よりよい社会へ データ活用を」 (読売新聞 2019年12月23日)
 
大竹文雄 評「2019年この3冊」 (毎日新聞 2019年12月8日)
 
宇野重規 評「解題新書」 (読売新聞 2019年11月2日)
 
立松真文「データで示す保育園通いのメリット「無償化より待機児童解消を急いで」」 (朝日新聞 2019年10月16日)
https://www.asahi.com/articles/DA3S14220244.html
 
「科学的データによって浮かび上がる、家族を取り巻く社会のリアル(読書案内)」 (西日本新聞 2019年10月11日)
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/549764/
 
(東京新聞/中日新聞 2019年10月6日)
 
立松真文「男性の育休、情報共有で雪だるま式に 話題の著者に聞く」 (朝日新聞 2019年9月22日)
https://www.asahi.com/articles/ASM9B654WM9BUCVL02X.html
 
「使える読書」 (日経MJ 2019年9月11日)
 
中原淳「この3冊」 (毎日新聞 2019年8月25日)
 
書評「結婚や育児 データから分析」 (日本経済新聞 2019年8月24日)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO48916010T20C19A8MY7000/
 
大竹文雄 評 今週の本棚 (毎日新聞 2019年8月11日)
https://mainichi.jp/articles/20190811/ddm/015/070/003000c
 
「本棚」 (しんぶん赤旗 2019年8月4日)
 
坂井豊貴 (経済学者、慶応大教授) 評 (読売新聞 2019年7月28日)
https://www.yomiuri.co.jp/culture/book/review/20190727-OYT8T50130/
 
 
雑誌・ウェブ媒体での書評・紹介:
自分と家族の幸せを考えるヒント (J-CASTニュース 2021年2月4日)
https://www.j-cast.com/trend/2021/02/04404384.html
 
生武正基 評「人生・家族・ことば 新しい「常識」について考える 紀伊國屋書店員さんおすすめの本」 (じんぶん堂 2020年6月15日)
https://book.asahi.com/jinbun/article/13444478
 
大坪亮、「女性が存分に活躍できる男女平等社会を実現するために」 (ハーバード・ビジネス・レビュー 2020年3月14日
https://www.dhbr.net/articles/-/6555?page=2
 
「ベストセラー解剖/アドバイスが押しつけがましくない点が魅力」 (『週刊文春』 2020年3月19日号)
 
西川賢「「家族のイベント」を経済学的に考える」 (『週刊金融財政事情』 2020年3月2日号)
 
石川尚文 評「山口慎太郎『「家族の幸せ」の経済学』 男性の育休は「伝染」する」 (好書好日 2020年1月14日)
https://book.asahi.com/article/13025943
 
中室牧子「2020年のママたちへ VERY課題図書」 (『VERY』 2020年1月号)
 
柏木亮二のDX Book Review (NRI Financial Solutions 2019年10月18日)
https://www.nri.com/jp/knowledge/blog/lst/2019/fis/kashiwagi/1018
 
「2019読書の秋到来!」 (ファンファン福岡 2019年10月17日)
 
庄子結 評「要約の達人が選ぶ、今月のイチオシ!」 (flier 2019年10月1日号)
https://www.flierinc.com/pickup/editorspicks201910
 
石田翼 評 (本の要約サイト flier 2019年9月28日)
https://www.flierinc.com/summary/2016
 
中川凌「「似たもの同士が結婚する」説は本当? マッチングサイトのデータ解析が明かす恋愛と結婚の真実」 (ダ・ヴィンチニュース 2019年9月27日)
https://ddnavi.com/review/567322/a/
 
(『TOPPOINT』 2019年10月1日号)
 
河野龍太郎 評 (『週刊東洋経済ブックレビュー』 2019年9月28日号)
https://str.toyokeizai.net/magazine/toyo/20190924/
 
麻木久仁子 評「個人の実感ではなく、データの分析を重視すること」 (HONZ 2019年9月24日)
https://honz.jp/articles/-/45378
 
BOOKSニュース (『日刊ゲンダイ』 2019年9月18日)
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/261939
 
白河桃子 評 (『サンデー毎日』 2019年9月1日号)
http://mainichibooks.com/sundaymainichi/backnumber/2019/09/01/
 
柳川範之 評 (『週刊エコノミスト』 2019年8月27日号)
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20190827/se1/00m/020/014000c
 
横田英史 評 (オンラインマガジンE.I.S. 2019年8月25日)
https://www.eis-japan.com/reading/20190825/
 
岡崎史子 評 (『週刊ダイヤモンド』 2019年8月24日号)
https://www.diamond.co.jp/magazine/20244082419.html

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