東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

SDGsカラーが並んだ表紙

書籍名

SDGs時代のESDと社会的レジリエンス研究叢書 1 SDGs時代のESDと社会的レジリエンス

著者名

佐藤 真久、 北村 友人、 馬奈木 俊介

判型など

158ページ、並製

言語

日本語

発行年月日

2020年4月10日

ISBN コード

9784811905716

出版社

筑波書房

出版社URL

書籍紹介ページ

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SDGs時代のESDと社会的レジリエンス

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2020年から順次改訂される新しい学習指導要領では、「持続可能な開発のための教育 (Education for Sustainable Development: ESD)」を実践することの重要性が強調されている。社会にある問題を自ら発見し、なぜそうした問題が起こっているかを理解し、そこにどのような働きかけをすることで解決を導けるのかを、子どもたち自身が主体的に考える教授・学習のプロセスを、ESDでは非常に重視している。こうした学習を実際に行うためには、座学で教科書を通した学びをしているだけでは不十分であり、自ら積極的に調べたり、他の子どもたち (さらには大人も含めて) と議論したり、そこでわかったことをさまざまな形で表現していく、という参加・体験型の学びを取り入れていくことが欠かせない。
 
このようなESDを推進することは、多くの先生方にとって、そして、多くの学校にとって、大きな挑戦かもしれない。しかし、先が見通せず、急速に変化していくこれからの時代を子どもたちが生き抜いていき、それぞれの能力を十分に発揮していくことを可能にするような資質・能力を育むためには、とても重要な取り組みである。
 
それと同時に、ESDを推進するためには、学校だけではなく、地域コミュニティの中で多様なアクターが連携することが欠かせない。2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標 (SDGs)」を実現するうえで必要なことは、一人一人の個人がその能力を十分に発揮できるようになることである。しかし、そのためには私たちが生活しているコミュニティの中に、そうした個人の能力を発揮できるような環境が整備されることも必要である。さらには、いくつものコミュニティが結びつきあって構成されている社会全体が変容していくことも求められている。それを、コミュニティや社会の「能力 (capacity)」開発として捉えることが必要だと考える。
 
本書の各章は、SDGs時代において個人や社会のレジリエンスを高めるためにESDが重要な意味をもつと考え、さまざまな観点から論じている。SDGsの実現へ向けて、これまで国内でも多様な議論が積み重ねられてきている。しかしながら、本書で提示した議論は、そうしたこれまでの議論を踏まえつつも、多くの議論とは一線を画した角度からESDに焦点をあてて論じたものである。150頁ほどの小著だが、議論の中身は分厚く、各章の著者が熟慮を重ねて紡ぎ出したものであるため、ぜひそれぞれの議論を堪能していただきたい。読み終えたときに読者諸賢の中で、何かこれまでとは異なる、新しい教育のあり方に関する思考の地平が拓けて見えることを願っている。
 
 

(紹介文執筆者: 教育学研究科・教育学部 教授 北村 友人 / 2020)

本の目次

はじめに
第1章 ESDが目指す「学び」のあり方と社会的レジリエンスの強化
第2章 “VUCA社会”に適応した持続可能な社会づくりに求められる能力観
第3章 エイジェンシー的自由とコミットメント─SDGs時代の「個人」と「社会」をめぐる理論考察
第4章 多様化する社会ニーズへの対応─コレクティブ・アクションを通して
第5章 新国富 (Inclusive Wealth) における多様な資本の連関
おわりに

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