東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

白い表紙に黄土色の模様

書籍名

外国法入門双書 現代中国法入門 第8版

著者名

高見澤 磨、 鈴木 賢、宇田川 幸則、坂口 一成

判型など

470ページ、四六判、上製カバー付

言語

日本語

発行年月日

2019年12月

ISBN コード

978-4-641-04825-6

出版社

有斐閣

出版社URL

書籍紹介ページ

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現代中国法入門 第8版

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書名が示すように、現代中国法 (中華人民共和国法) についての初学者向けの入門書である。1998年の初版以来、版を重ねて第8版となった。概ね3年ごとに内容を改めている。第8版は、4名の共著であり、それぞれがある章の原案を担当し、それに対して全員で討論して定稿する。論文集ではなく、全体としての体系性を重視し、いずれの章も4名の共著である (とは言いながらも、原案担当者の癖は残るので、その点は楽しみの対象としていただきたい)。その基本は、中国においてはいかなる意味において法が役に立っているのか、ということについて考えるための素材を提供することである。そのために本書は、歴史的考察を重視し、また、政治や社会との関係を意識する記述を心がけた。
 
第1章においては、清末に西洋近代型法整備を始める前の固有法 (伝統中国法) 及びその後の清末・中華民国の近代法史を概観し、第2章においては中華人民共和国の法の歴史を政治との関係において概観している。これらにおいて論じられていることは、今日の台湾、香港、マカオを法の側面から考える上での基礎ともなる。歴史的に中国の法と社会との関係を概観した後に、各法分野を論じている。第3章以降については、以下の目次を参照されたい。なお、第6章においては、企業法・会社法・商事法・経済法を、第7章においては、家族法・労働法・社会保障法を、第9章においては、刑法、刑事訴訟法だけではなく行政的処罰を扱っている。

2019年の本書出版以降には、2020年の民法典制定や香港をめぐる立法活動がある。出版物の宿命として、出版後の出来事への対処は、次の版を待たねばならないが、第8版からは、出版社である有斐閣のHPに補遺を設け、一定の対処をしている。
http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641048256
 
これは第8版の新たな試みである。あわせて参照されたい。正誤表の分量の多さに驚かれる読者もあるかもしれない。基本的には著者陣の不手際であるが、言い訳をすれば、近年の中国の活発な立法 (法改正を含む) が背景となっている。こうした立法のうちには、日本の法学部で学ぶ民商法や企業活動関連の法と同じものを見いだすことも容易で、これを通じて中国の市場としての経済社会の展開を見ることができる。権利の束としての法を感じることが可能である。他面では、中国共産党の指導を強く法に反映させる姿も見ることができる。統治の道具として、また、よき統治を示す道具としての法を目の当たりのすることになる。この両面性こそが本書が読者に伝えたいことである。

 

(紹介文執筆者: 東洋文化研究所 教授 高見澤 磨 / 2020)

本の目次

第8版 序
初版 序
凡例
目次
著者紹介

第1篇 総論

第1章 現代中国法の前史
第2章 現代中国法の歴史

第2篇各論

第3章 憲法
第4章 行政法
第5章 民法
第6章 企業活動と法
第7章 市民生活と法
第8章 民事訴訟法
第9章 犯罪と法
第10章 紛争処理システム
第11章 法学教育と法曹養成

付録
中国近代法史関連事項年表
現代中国基本法令年表
学習のための文献案内
主要参考文献
索引
 

関連情報

自著紹介:
編者からの紹介 (東洋文化研究所ホームページ)
http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/news/pub2001_takamizawa.html
 
書評:
徐行 (北海道大学大学院法学研究科准教授) 評 (『書斎の窓』 2020年7月)
http://www.yuhikaku.co.jp/shosai_mado/2007/HTML5/index.html#/page/14
https://www.bookbang.jp/review/article/630312
 
初学として本書を読み、さらに現代中国法に興味がある読者には、付録を参照して自ら調べることのほかに、中級編として高見澤磨・鈴木賢編『要説 中国法』(東京大学出版会、2017年)を薦めたい。
https://www.u-tokyo.ac.jp/biblioplaza/ja/D_00197.html

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