東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

白い表紙にカラフルな模様

書籍名

要説 中国法

著者名

高見澤 磨、 鈴木 賢 (編)

判型など

392ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2017年9月29日

ISBN コード

978-4-13-031190-8

出版社

東京大学出版会

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要説 中国法

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本書は、中華人民共和国法の中級レベル教科書・自学書である。こうした企画は、たぶん少ないと思う。「すでに法学及び現代中国法の基礎 (中国語学習を含む) を学んだ大学院生・実務家や中国法に関心ある実定法研究者にとって論点を体系的に知る手引きとなることを目指しつつ、それを通じて、中国における立法・法務・法学の到達点と課題とを示す」(はしがきi頁) ものである。
 
法学部での教科書を想定したものとしては、西村幸次郎編『現代中国法講義 [第3版]』(法律文化社、2008年)、小口彦太・田中信行『現代中国法 [第2版]』(成文堂、2012年)、高見澤磨・鈴木賢・宇田川幸則『現代中国法入門 [第7版]』(有斐閣、2016年) がある。これらを全て読了し、中国語の基礎も学び、日本法についての基礎も学んだ、という中国法入門段階修了者を読者として想定している。自ら調査・研究を行うレベルを上級とするならば、そのための参考書は、本書の「研究の手引き」にある。本書は、入門と上級とをつなぐものとしての中級指南書である。外国語学習やスポーツにおける上級者を目指す段階と似たものを感じてもらえれば企画者としてはうれしい。
 
各章担当者は、担当の各法分野の中国における立法・法務・法学の到達点と課題とを示しつつ、日本における中国法研究の到達点と課題とを示すことも目指した。2017年9月の出版物であるので、2017年前半までの情報に依っているが、本書が示すものは、2018年3月の憲法改正や今後さらに続く新たな立法・改正などにも見通しを与えるものとなっている。1990年代に市場メカニズムを全面的に導入し、今日では規模の上では世界第二の経済大国であるという側面からは、民商法を中心に、我々が教室で学んだ民商法と対話可能なものとなっている中国法を見ることになろう。他方、共産党が領導して国家的意思決定がなされる姿もまた各法領域に見ることができる。幾重にも見える中国の姿にいったんは正直に戸惑い、その後で自分なりの視座を見つける道具として本書を利用されたい。
 
本書は、1950年代より中国法研究者として活躍した浅井敦 (1931-2012) を記念するための出版企画を出発点としている。浅井は、東京大学社会科学研究所助手 (1958-1962) の後、愛知大学の教員となった。その間、東京大学法学部の非常勤講師として長く比較法原論B (中国法) を担当した。出版時点での東京大学教員たる担当者は、徐行と編者でもある高見澤の2名だけであるが、東京大学の学術成果の一部をなすものでもある。○寿記念論集といった企画にはせず、教科書として定まった方針のもとに体系性のある書とすることでより意義深いものにしようと考えた (記念論集型出版の意義そのものを否定するものではない)。
 

(紹介文執筆者: 東洋文化研究所 教授 高見澤 磨 / 2018)

本の目次

はしがき
凡例
第I部  法と国家
  第1章  法源 (高見澤 磨)
  第2章  中国共産党と法 (鈴木 賢)
第II部  憲法・行政法
  第3章  人権 (石塚 迅)
  第4章  統治機構 (高見澤 磨)
  第5章  行政法 (但見 亮)
第III部  民商法
  第6章  民事財産法 (王 晨)
  第7章  家族法 (國谷知史)
  第8章  企業法 (周 劍龍)
第IV部  司法制度
  第9章  民事訴訟法 (徐 行)
  第10章  紛争解決 (宇田川幸則)
第V部  刑事法
  第11章  刑法 (坂口一成)
  第12章  刑事訴訟法 (坂口一成)
第VI部  社会問題と法
  第13章  環境法 (片岡直樹)
  第14章  労働法 (山下 昇)
研究の手引き
索引
執筆者一覧

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