東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

白い表紙に大きなタイポグラフィ

書籍名

しぶやぶし

判型など

84~168枚、2冊セット、ブックケース

言語

日本語

発行年月日

2019年8月

出版社

shibuya1000実行委員会事務局 (株式会社パブリッヂデザイン内)

出版社URL

書籍紹介ページ

学内図書館貸出状況(OPAC)

しぶやぶし

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私たち建築の分野では、建築物の美しさだけでなく、その建築が社会にとっていかなる役目を持ちうるのか、という自己定義がとても重要になっています。そして、近年特に重要なのは、都市再生という視点です。コンクリートや鉄が一般的な建築物にも使われるようになり建物が長寿命となったこと、戦後の復興の過程で建設されたストックが、半世紀をすぎ、抜本的な改修が必要になったこと、郊外化が進む中で都心の役割を再定義する必要があること、などがその理由です。建築物単体の価値だけでなく、周辺の環境の中で建築がどのような貢献ができるのか、その方法論が試されているというわけです。
 
そうした背景の中、2002年には都市再生特別措置法が制定され、日本の都市再生の重要な地域として同法に基づく都市再生特別地区が指定されました。日本を代表する都市である渋谷もこの都市再生特別地区の1つで、渋谷駅を中心に様々なプロジェクトが企画され、建設が進んでいます。しかしながら、巨大なプロジェクトがいくつも駅周辺で進むことから、この工事の期間中、渋谷はいわば眠った状況になってしまいます。いくら立派なハードができても、その間に渋谷の都市文化が消えてしまっては意味がない、そう思った有志メンバーで、shibuya1000という活動を10年間行いました。都市を作るのは、建築家だけでも、都市計画家だけでもできることではありません。この場所に通勤する人、暮らす人、一人ひとりの存在が都市を形成するのだと考えました。
 
この「しぶやぶし」には、この10年間で集めた様々な人々の言葉が詰まっています。一人ひとりの声は、もしかしたら教科書には載らない記録かもしれませんが、この本の言葉を見つめていると、21世紀初頭の渋谷のまちがどのような空気感を持っていたのかがよくわかるはずです。建築のこと、音楽のこと、暮らしのこと。様々な専門家が発する渋谷の言葉は、どれも多様で、短い言葉ながらどの言葉にも渋谷への深い洞察が込められています。各言葉が載っているページの1枚1枚は、ページのデザインが全て異なるという手の込んだデザインになっていて、そのデザインの違いが重なることによる書籍全体の熱量もまた、渋谷のまちの活気のようでもあります。一人ひとりの渋谷の小さな声を集め、その書籍そのものがデザインになっている、という新しい渋谷の本がこの「しぶやぶし」です。

 

(紹介文執筆者: 生産技術研究所 准教授 川添 善行 / 2020)

関連情報

出版記念イベント:
『しぶやぶし』出版記念イベント×WeWork渋谷スクランブルスクエアオープニングウェルカムイベント (WeWork 2019年12月2日)
http://www.shibuya1000.jp/event_20191202/index.html
 
書籍紹介:
回転窓/東京・渋谷の底力を見たい (日刊建設工業新聞 2020年5月11日)
https://www.decn.co.jp/?p=113773
 
川添善行監修『しぶやぶし』発行 (建築情報サイト『KENCHIKU』ブログ 2020年4月9日)
http://kenchiku-blog.blogspot.com/2020/04/blog-post_9.html

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