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白と赤の表紙

書籍名

スタートアップ入門

著者名

長谷川 克也

判型など

300ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2019年4月25日

ISBN コード

978-4-13-042151-5

出版社

東京大学出版会

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スタートアップ入門

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本書は、東京大学で全学向けに開講している授業科目「アントレプレナーシップ」および課外講座「東京大学アントレプレナー道場」の2017年度の講義内容をまとめたものです。
 
「アントレプレナーシップ」を辞書で引くと「起業家であること、起業家としての活動、起業家精神」といった訳語が並んでいます。多くの皆さんにとって、起業やアントレプレナーシップは別世界の出来事かもしれませんが、これからの時代は誰もが起業できるような能力と心構えを身に付けておく必要があります。特に、世の中にない何か新しいものを生み出したいと思ったときや、自分の人生を賭けてやりたいことを見つけたときには、起業という道が有力な選択肢になります。
 
本書は、なぜアントレプレナーシップが大事か?という点から始まり、新しい技術から新しいビジネスを生み出して社会を進歩させていくのはスタートアップという形態の会社であることを解説した上で、スタートアップとして新しい事業を始める過程で知っておくべき様々なビジネスの基礎知識を説明します。ビジネスは、顧客に対して何らかの価値を提供して、その対価として収入を得る活動です。大きなビジネスを作るためには顧客、マーケット、競争、お金の稼ぎ方など多くの要素を考えて事業を組み立てていかなければなりません。本書の後半では、実際に会社を設立して経営していくために必要な株式会社の仕組みや資金調達の方法、ベンチャー・キャピタルの仕組みや資本構成の考え方、スタートアップにおける知的財産や財務の基本的な知識を説明します。
 
本書は、ビジネスや経営に関する知識を全く持たない学生や、学生時代にアントレプレナーシップやスタートアップに触れる機会のないまま職に就いた社会人の方々が、自分自身のキャリアとして起業という選択肢を考えたときに知っておくべき基礎知識を薄く広く網羅する書です。しかし、この本に書いてある知識を身につけたからといって起業家になれるわけではありません。この本を読んでも新しいビジネスのアイデアを生み出す方法はわかりませんし、起業する仲間を集める方法も書かれていません。成功した起業家の多くは、社会の大きな課題を見つけ出し、その課題に対して今までになかった新しい解決方法を生み出したり、画期的な新製品を生み出すことで成功していますが、この本には社会課題の見つけ方も新製品の作り方も書いてはありません。
 
しかし、事業計画の立て方にしろ資金調達の手法にしろ、会社を立ち上げていく上で「知らない」では済まない大事な事柄です。特に、大きな会社になることを目指すスタートアップ企業の立ち上げ期は、一般的な会社経営の手法とは異なる考え方が必要です。この本が、皆さんが起業やスタートアップに興味を持つきっかけになり、また、将来、皆さんが起業という選択肢を考えたときの To Do List の「目次」になれば幸いです。

 

(紹介文執筆者: 産学協創推進本部 特任教授 長谷川 克也 / 2020)

本の目次

第1章 序論
 1-1 なぜアントレプレナーシップが大事か?
 1-2 東京大学での起業家教育と本書の位置付け
第2章 イノベーションの担い手はスタートアップ
 2-1 イノベーションとは何か?
 2-2 イノベーションの担い手の変遷
 2-3 日本の状況
 2-4 シリコンバレーのエコシステム (生態系)
第3章 スタートアップと普通の会社は違う
 3-1 スタートアップとは?
 3-2 スタートアップとスモールビジネスは違う
 3-3 スタートアップは大企業の小型版ではない
 3-4 大企業の中での新規事業
 3-5 なぜスタートアップの仕組みを学ぶのか?
第4章 ビジネスとは顧客に価値を届けること
 4-1 そもそもビジネスとは何か?
 4-2 顧客は何に対して対価を払うのか?
 4-3 顧客とユーザー
 4-4 マーケティング
 4-5 どうやって売るか?
第5章 どうやってスケールするビジネスを見つけるか
 5-1 マーケットと市場規模
 5-2 どれくらい大きなマーケットが必要か?
 5-3 マーケットが大きければ必ず競合が居る
 5-4 どうやって競争に勝つか?
 5-5 スケールするビジネスの見つけ方
 5-6 リーン・スタートアップの考え方
第6章 ビジネスモデルとビジネスプラン
 6-1 狭義のビジネスモデル=お金の稼ぎ方
 6-2 広義のビジネスモデル=ビジネスの仕組み
 6-3 ビジネスプラン (事業計画)
 6-4 プレゼンテーションとピッチ
第7章 株式会社の本質を理解しよう
 7-1 なぜ事業をするには会社がある方がいいのか
 7-2 なぜスタートアップは株式会社なのか
 7-3 株式会社の特徴と基本的な構成
 7-4 スタートアップにおけるオーナーシップ
 7-5 株式会社以外の企業形態
第8章 事業に必要なお金をどうやって集めるか
 8-1 資金調達
 8-2 出資と融資
 8-3 スタートアップへの資金の出し手
 8-4 ベンチャーキャピタルの基本的な仕組み
 8-5 EXIT (エグジット)
 8-6 ベンチャーキャピタル投資の特徴
第9章 多様な株式と資本政策
 9-1 資本政策
 9-2 多様な株式と資金調達方法
 9-3 スタートアップの資本政策
 9-4 Googleの実験
第10章 会社経営のための基礎知識
 10-1 会社設立の手続き
 10-2 事業を営む上で必要な法律的な知識
 10-3 知的財産権
 10-4 会社の財務と会計
 10-5 会社の様々な機能

関連情報

特集記事:
東京大学におけるベンチャー支援の取組み (『淡青』39号 2020年2月4日)
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/features/z1304_00052.html

書籍紹介:

MPDの本棚 東大メソッドで起業を選択肢に 『スタートアップ入門』ほか新刊 (事業構想 2019年9月号)
https://www.projectdesign.jp/201909/book/006864.php
 
「優秀な起業家の輩出は大学の社会的使命」 (ALL REVIEWS 2019年7月4日)
https://allreviews.jp/review/3422
 
韓国語版:
스타트업 101 미래 성장 동력과 혁신의 아이콘
https://book.naver.com/bookdb/book_detail.nhn?bid=16311457

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