東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

黄緑と白の表紙

書籍名

演習サブノート210問シリーズ 憲法演習サブノート210問

著者名

宍戸 常寿、 曽我部 真裕 (編著)

判型など

444ページ、A5判、並製

言語

日本語

発行年月日

2021年7月

ISBN コード

978-4-335-35861-6

出版社

弘文堂

出版社URL

書籍紹介ページ

学内図書館貸出状況(OPAC)

憲法演習サブノート210問

英語版ページ指定

英語ページを見る

本書は、大手法律出版社である弘文堂の「演習サブノート210問」シリーズの一つとして刊行された、憲法の演習書である。憲法の演習書は多く出版されているが、初学者を念頭に、短い事例の設問と解説それぞれ1頁ずつで、憲法の全体をカバーしている点に特徴がある。
 
項目の大枠と執筆者の選定は編者の側で行う一方、具体的な項目の内容や設問については、各執筆者から案を出していただき、それを編者の側で調整するという手順を取った。解説については、基本的な判例や標準的な学説を踏まえた、初学者にもわかりやすい記述をお願いした。
 
同じ出版社からは、『憲法演習ノート』も刊行させていただいているが、こちらは同じ演習書といっても、かなり長文の事例に、様々な観点からの検討を行い、答案例まで付けている。これに対して本書は、私たち中堅・若手の憲法研究者が法学部や法科大学院で教える中で、基本と思われる憲法の知識をシンプルに示したものである。言い換えると、学部生や法科大学院の一年生レベルで、習得しておくべきものはまずはここ、という相場観を示したものにもなっている。
 
私自身の担当を例に挙げると、財産権の保障と限界に関する4項目と、いわゆる統治行為論の項目を執筆している。統治行為論とは、高度に政治的な問題については、司法判断が本来可能であっても、裁判所は判断を示すのを差し控えるべきだという考え方であり、最高裁判所の旧い判例が採用しているほか、高校の公民科の教科書にも出てくるくらい有名なものである。憲法研究者としての私はこの統治行為論を否定する少数説を採用しているが、それはそれとして、判例の内容や標準的な学説について客観的にポイントを絞って解説している。財産権については、憲法29条の構造がそもそも難解であるが、その関係を解きほぐした上で、法学部生であればマスターしておくべき主要な最高裁判所の判例を、裁判で問題となった事案を簡略化した上で設問として提示した上で、説明している。44人という多数の執筆者が関わったにもかかわらず、そのような編集方針をよく理解して下さったおかげで、全体として水準や体裁がそろった演習書に仕上がっていると感じている。
 
本書は、名目こそ曽我部真裕教授(京都大学)との共編であるが、斯界随一の実務能力を誇る曽我部教授が丁寧に、膨大な執筆者の設問案や原稿をチェック下さったおかげで、編集作業の後半にもなると私はいわゆる「おんぶにだっこ」状態だった。この場で告白しつつ、感謝の意を表しておきたい。
 

(紹介文執筆者: 法学政治学研究科・法学部 教授 宍戸 常寿 / 2021)

本の目次

〔総論・人権〕 1~154
〔統 治〕   155~210

関連情報

著者コメント:
一橋教員の本:江藤祥平 (一橋大学ホームページ 2021年)
https://www.hit-u.ac.jp/academic/book/2021/210709.html
 
[執筆者]
青井未帆・淺野博宣・新井誠・稲葉実香・井上武史・上田健介・内野広大・江藤祥平・江原勝行・大河内美紀・大西祥世・大林啓吾・尾形健・奥忠憲・奥村公輔・片桐直人・栗田佳泰・小島慎司・宍戸常寿・志田陽子・白水隆・鈴木敦・曽我部真裕・高畑英一郎・田代亜紀・田近肇・玉蟲由樹・土屋武・奈須祐治・西土彰一郎・西村裕一・二本柳高信・林知更・平地秀哉・堀口悟郎・巻美矢紀・松本哲治・御幸聖樹・村西良太・村山健太郎・山崎友也・山田哲史・山本龍彦・横大道聡

このページを読んだ人は、こんなページも見ています