東京大学の先生伝授 文系のためのめっちゃやさしい　統計 数学が苦手なわたしでも、どんどん楽しく読めちゃう！

統計学はさまざまな実務の現場で用いられています。医療や疫学調査は言うに及ばず、農業試験、品質管理、マーケティング、経済計測、教育効果測定やテストなど自然・社会・人文の諸分野で不可欠な存在となっています。GNPや物価指数などによって、われわれは経済活動の大きさや物価の水準などといった一般的な概念を具体的な数値によって捉えることができます。また、幾つかの検査数値からある特定の病気のリスクを計算するなどといった「予測」も統計手法の一つです。新しく開発された教育法に効果があるか否かを調べる際には、「仮説検定」という統計手法が本質的な役割を果たします。
 
統計学は、具体的・実際的な要素を多く持つ一方で、その理論の根幹部分は数学言語で作られています。そのため、興味はあるけれどもとっつきにくいと感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。しかし、数学が用いられているということはメリットでもあります。数学はいわば諸学問の「共通言語」ですから、数学の論理を用いることでデータ解析の考え方に一般性や汎用性がもたらされます。つまり、皆さんのバックグラウンドが何であっても、経済であってもマーケティングであっても、そこで用いられるデータ解析の論理は共通であり、専門分野に関係なく学び、応用することができるということです。
 
本書はその学びの第一歩を提供するものです。先生と生徒の対話を楽しみながら、統計学の最重要事項を一通り押さえることができます。具体的には、統計学の基本フレームワークである「母集団と標本」、データの代表的な特性値である「平均」、「分散」、「標準偏差」、「相関係数」の性質、最も重要な確率分布である「2項分布」と「正規分布」の基本的な考え方を学んだ後、幾つかの平易な例を通して統計的推測のエッセンスに触れることができます。例えば、視聴率調査の数値から全世帯における視聴率を推定する信頼区間、臨床試験から新薬の効果の有無を判断する統計的検定などが解説されます。本書を通して得られた知識は、「データを読む力」としてビジネスや仕事の現場で役に立ち続けることと思います。
 

(紹介文執筆者: 総合文化研究科・教養学部 教授 倉田 博史 / 2022)