
書籍名
ヨーロッパの政治経済・入門 [新版]
判型など
358ページ、A5判、並製
言語
日本語
発行年月日
2022年4月
ISBN コード
978-4-641-18457-2
出版社
有斐閣
出版社URL
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ヨーロッパにはドイツ、フランス、イギリスなど大国もあれば多数の中小国もある。さらに政策分野によっては本来は、国家の持つ権限を共有して政策展開するヨーロッパ連合 (EU) も重要な役割を果たしていて、ヨーロッパの全体像を理解することは容易ではない。気候変動問題で議論を主導し、法の支配・人権分野でも国際的に大きな存在感を示しているが、ユーロ危機、難民危機、イギリスのEU離脱、コロナ禍、ロシアによるウクライナ侵攻など、ヨーロッパは非常に厳しい危機に直面し続けてもいる。ヨーロッパの諸国やEUの危機について、短いニュースを見聞きすることは多いが、報道の背景を正確に理解できているかと問われれば、自信がない人も多いのではないだろうか。
ヨーロッパとその国々、EUについては個別には既に多くの文献があるが、政治も経済も外交も俯瞰して見られるものは多くない。表面的なニュースの背景にどのような歴史的経緯があるのか、どのような制度が存在しているのか、EUと構成国の関係はどうなっているのかなどについて、知っておかなければならない基本的知識をコンパクトにまとめ、誰にとっても読みやすい形で提示することを目標として本書は作成された。
本書は第I部でまず主な国々を、政治制度、経済政策、対外政策とEUとの関係の視点から扱っている。政治・経済ともに特に影響力の大きい仏、独、伊、英以外の国々はいくつかの地域ごとにまとめられており、ギリシャなど各章で扱いきれなかった国々や、ロシア、中国との関係、さまざまな興味深いトピックもコラムで扱われている。
第II部では、ヨーロッパ統合が扱われており、EUの歴史、制度を理解した上で、経済政策の章へ読み進めば、共通通貨ユーロを中心とした経済統合の深さを感じられるはずである。また、今回の新版で大幅に改訂されたEUを取り巻く地域との関係についての章は、EU拡大の問題、近隣諸国との複雑な関係をわかりやすく説明しているし、EUの安全保障・防衛政策の章は、特に複雑で理解の難しい政策展開を理解する基礎を与えてくれる。
ロシアによるウクライナ侵攻はEUとその構成国にも大きな衝撃を与え、ヨーロッパ諸国は歴史的な転換点に立たされている。今後のヨーロッパの行方を考えるためにも、現在の制度や歴史についての正しい理解が不可欠である。ヨーロッパに興味を持ち始めた読者の最初の一歩として本書が役立ち、さらに4億5千万人もの人々がEUという不思議なシステムを運用しているヨーロッパへの関心を強め、知識を深めていくことを願ってやまない。
(紹介文執筆者: 総合文化研究科・教養学部 教授 森井 裕一 / 2022)
本の目次
第I部 ヨーロッパの主な国々
第1章 フランス (山田文比古)
第2章 ドイツ (森井裕一)
第3章 イタリア(八十田博人)
第4章 ベネルクス三国 (正躰朝香)
第5章 南 欧 (武藤 祥)
Close up [1] ギリシャ (村田奈々子)
第6章 北 欧 (五月女律子)
第7章 中東欧 (仙石 学)
Close up [2] クロアチア, ブルガリア, ルーマニア (同上)
第8章 イギリス (小川浩之)
第II部 ヨーロッパ統合とEU
第9章 ヨーロッパ統合の歴史 (戸澤英典)
第10章 EUのしくみ (森井裕一)
第11章 EUの経済政策 (岩田健治)
第12章 EUを取り巻く地域 (東野篤子)
Close up [3] EUとロシア (同上)
第13章 EUの対外政策 (森井裕一)
Close up [4] EUと中国 (同上)
第14章 EUの安全保障・防衛政策 (小林正英)
関連情報
藤好陽太郎 評「EUへの模索と国家間の摩擦。複雑な欧州史を解説」 (『週刊エコノミスト』 2022年6月7日号)
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20220607/se1/00m/020/011000c
書籍紹介:
「欧州政治を知る | 政治と社会の今の姿を巨視的に捉える〈お薦めの3冊〉 [推薦者: 鶴岡路人] 」 (『週刊東洋経済』 2022年4月30日・5月7日合併号)
https://str.toyokeizai.net/magazine/toyo/20220425/