東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

黄色い表紙

書籍名

マガジンハウス新書 天才たちの未来予測図

著者名

高橋 弘樹 (編著)、 斎藤 幸平、 小島 武仁、 内田 舞、成田 悠輔 (著)

判型など

216ページ

言語

日本語

発行年月日

2022年9月29日

ISBN コード

9784838775095

出版社

マガジンハウス

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『天才たちの…』という題名から胡散臭さを感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、内容は至ってちゃんとしているのでご安心を。
 
本書はとある動画チャンネルでインタビューを行った研究者の中から4人を選んで書籍に再構成したもので、私のインタビューはその中の一つです。私が専門的に研究をしている「マッチング理論」という経済学の分野の考え方や、その知見が社会にどのように役立っているかについて話しています。具体的な内容は書籍を読んでいただければと思いますが、メタ的な視点からコメントします。
 
これを読んでいるであろう学生の皆さん (学部前期課程の方を想定するように言われています) は、何か知りたいことがあったときにどのように勉強していますか? 自分で本や教科書を読んだりするという感じでしょうか。それは非常に大事なことだと思うのですが、知識の最先端というのは教科書どころかまとまった書籍がないというようなことが往々にしてあります。私の研究しているマッチング理論もそのような状態が長く続いていて、研究者の世界でバイブルと言われる本が出てからもう30年以上も経ちます。
 
なぜこういうことになるかというと、研究の世界はすごいスピードで進んでいるので綺麗に教科書の形にまとめようと思ってもその「区切り」がないことと、研究者たちは研究に忙しくしていて、腕の良い研究者であればあるほど書籍にまとめる時間が取れないことが大きな原因です。かくいう私も教科書を執筆する計画を始めてからもう5年以上経ちますがまだできません。
 
このように教科書や書籍がない中で知識を得ようとする場合、もう少し断片的な解説記事や論文を読むことになるかと思います。そのときは、なるべく最前線で実際に研究をしている研究者本人が書いたものを読むようにして欲しいです。それというのも、研究の世界は良くも悪くも細分化していて、外からはなかなか理解できないので、どうしても外にいる人が書いたものは実態を表さないということになりかねないからです。
 
本書の元になったインタビューでは、なるべく研究の現場の雰囲気を誤解なくお伝えするように気をつけました。もちろんインタビューでは省略せざるを得なかった話もたくさんありますので、もし興味が出てきましたらぜひ私や他の教員の講義を受講してみてください。時間がなければ、講義スライドの多くを私の個人ホームページにアップロードしているので覗いてみてください。
 

(紹介文執筆者: 経済学研究科・経済学部 教授 小島 武仁 / 2023)

本の目次

はじめに――「未来への指針」を示す新時代の羅針盤
 
成田悠輔『「わけがわからない人間」が輝く時代』
 「何をやっているかよくわからない」が理想
 データ分析で「常識」を問い直す
 教育は「個別最適化」されていく
 もう「逆張り戦略」しかない
 民主主義を解体構築する
 人が猫に仕える未来?
 「何の意味のないこと」に精を出す
 
斎藤幸平『資本主義から脱成長コミュニズムへ』
 「限界」を迎える資本主義
 ソ連の問題点
 「科学技術がすべてを解決する」という幻想
 「脱成長」から始まる未来
 世界を救うマルクスの「コミュニズム」
 「人新世の危機」を乗り越える
 困難は次の時代を築くチャンス
 
小島武仁『世界の歪みを正すマッチング理論』
 社会問題を「疑似市場」で解決する
 「ミスマッチ」をなくし「満足度」を高める
 「最高の人事制度」もデザインできる
 「GLAY」から研究者の道へ
 日本の未来は「意外と悪くない」
 
内田舞『withコロナ時代の「心の守り方」』
 「社会正義」としての小児精神科医
 ネガティブな感情を書き替える「再評価」
 「メンタル危機」とどう向き合うか?
 コロナ禍で「心のバランス」を崩す子どもたち
 アメリカ社会の「キャリア」と「育児」
 事実を“そのまま受け入れる”思考法

関連情報

書評:
寺田農 評「『100年先』を見る研究とは」 (産経新聞 2023年1月14日)
https://www.sankei.com/article/20230114-UY3BZQWJXROF7MFZXTJ3TUHTUI/
 
書籍紹介 :
週間エコノミストOnline 2022年11月29日号
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20221116/se1/00m/020/004000d
 
インタビュー:
「配属ガチャの打開策にも? マッチング理論で『不幸なミスマッチ』はなくなるか――小島武仁 東大教授が語る「最適なマッチングを保証」する仕組み」 (Japan Innovation Review 2023年3月30日)
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/74526
 
PRESIDENT 2023年2/3号
https://www.fujisan.co.jp/product/5774/b/2344773/
 
関連記事 :
「『全員が幸福になる人材配置』とは?──東京大学大学院経済学研究科 小島武仁教授とKPMGジャパンが語る、マッチング理論の実践」 (TECH+|マイナビニュース 2023年9月8日)
https://news.mynavi.jp/techplus/kikaku/20230908-2764418/
 
「小島 武仁さんコラム第3回 誰もがハッピーになれる社会へ」 (保険市場 2023年6月21日)
https://www.hokende.com/columns/iccyouisseki/kojimafuhito/003
 
「小島 武仁さんコラム第2回 日本でも進む社会実装」 (保険市場 2023年6月7日)
https://www.hokende.com/columns/iccyouisseki/kojimafuhito/002
 
「小島 武仁さんコラム第1回 社会問題の原因は人ではなく、『制度』」 (保険市場 2023年5月24日)
https://www.hokende.com/columns/iccyouisseki/kojimafuhito/001
 
「マッチング理論で『都市一極化』は解決するのか?」 (POTLUCK|三井不動産 2023年4月21日)
https://www.potluck-yaesu.com/magazine/20230421/444/
 
「マーケットデザインとマッチング理論で適材適所を促進する」 (リクルートマネジメントソリューションズ 2022年2月7日)
https://www.recruit-ms.co.jp/issue/column/0000001030/?theme=hrdepartment,staffing
 
「マッチング理論の社会実装で世界はよくなる」 (日経ビジネス 2022年1月14日)
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00363/011200017/
 
関連動画:
「個々人の希望を叶えるマッチングをいかに実現するか」 (VIDEO NEWS 2023年9月15日)
https://www.videonews.com/oiconomia/12
 
「【マッチングアプリは優秀なプラットフォーマー】Facebookの設計が優れていた理由/学生の青田買いを防ぐアルゴリズム/ノーベル経済学賞が欲しい【元スタンフォード大教授・東大教授 小島武仁】」
https://www.youtube.com/watch?v=iNu_jMnYjic
 
「【配属ガチャをなくすマッチング理論】成田悠輔氏の師匠/サイバーエージェントと共同研究/保育園の待機児童を減らすには?/経済学で新入社員配属をアップデート【元スタンフォード大教授・東大教授 小島武仁】」 (PIVOT公式チャンネル|YouTube 2023年4月10日)
https://www.youtube.com/watch?v=z8rq_qtmsms
 
「『マッチング理論』お金では買えない希望を叶える仕組みとは!? 【小島武仁 | KIDSNA Academy】」 (KIDSNA STYLE チャンネル|YouTube 2022年12月9日)
https://www.youtube.com/watch?v=vQvjVX_6MLA
 
「就活、入試、結婚、待機児童...世界の社会問題は「マッチング理論」で解決できる?【小島武仁×成毛眞】」 (NewsPicks|YouTube 2022年4月12日)
https://www.youtube.com/watch?v=MbElVH3UV3Q

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