
書籍名
触発するアート・コミュニケーション 創造のための鑑賞ワークショップのデザイン
判型など
カラー2+モノクロ274ページ、B5判、並製
言語
日本語
発行年月日
2023年5月
ISBN コード
978-4-86555-109-9
出版社
あいり出版
出版社URL
学内図書館貸出状況(OPAC)
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あなたは誰かの作った作品に感動して、自分もそのような作品を作りたい、そのようなクリエイティブな仕事をしたいと思ったことはあるだろうか。著者らはこうした体験を触発するアート・コミュニケーションと呼んでいる。触発するアート・コミュニケーションは人々が自らの創造性に気づき、創造的な人生を楽しむ上で重要な役割を果たす。近年は、学校、美術館、博物館、オンラインでの教育実践など様々な学びの場で、触発するアート・コミュニケーションを生み出すような教育実践やワークショップが行われるようになってきた。
こうした触発的なコミュニケーションの場づくりについては、『触発するミュージアム:文化的公共空間の新たな可能性を求めて』(2016年,中小路・新藤・山本・岡田 編) に詳述されている。本書はその視点を発展させて、アート作品の鑑賞からの表現や創造が動機づけられる触発プロセス、すなわち、「鑑賞と表現の接続」に焦点を当てた。そして、鑑賞と表現をつなぐワークショップの事例を紹介しながら、ワークショップの中での体験がどのように創造につながるかについて、認知科学・心理学的な視点から理論的に考察した。
また、本書は触発するアート・コミュニケーションの場を一回限りの場として捉えるのではなく、その実践が改善したり、新たに発展したりすることを想定しながら学びをどのように評価することができるかについても考察している。アート・ワークショップの実践には様々なステークホルダーが関わるが、誰か一人の視点に偏らずに統合的な実践理解をするにはどうすればいいか。こうした目的から、実践評価については研究者だけでなく実践者の事例を掲載している。ワークショップ開発の背景やデザイン、実践後の取り組みについて、様々なワークショップ実践者の事例をコラムに紹介した。このように、本書では研究者と実践者の両方の視点を取り入れることで、触発するアート・コミュニケーションについて統合的に理解することを目指した。
アート鑑賞は少し堅苦しい感じがする人も、きっと自分もクリエイティブになれる!と思えるワークショップはどのようにデザイン・評価すればいいだろうか? 本書は、芸術の心理学や教育学、アート・コミュニケーション、美術館の来館者研究、アート・ワークショップの実践などに携わる人々やそれを学ぶ学生、あるいはワークショップの参加者や実践に興味のある全ての人を読者として想定している。アートを楽しむためのヒントになる実践を13個掲載しているので、自分もワークショップに参加しているような気持ちで読んでほしい。
(紹介文執筆者: 教育学研究科・教育学部 教授 岡田 猛 / 2023)
本の目次
Part1 鑑賞と表現をつなぐ触発:理論的背景
第1章 市民を触発するアート・コミュニケーション
第2章 実践デザインの方法論
第3章 アート・ワークショップを評価する視座
第4章 触発するアート・ワークショップの効果測定の方法
第5章 アート事業の評価:アートの価値が可視化される創造的な対話の場であるために
Part2 鑑賞と表現をつなぐアート・ワークショップ:実践報告
表現を触発する鑑賞ワークショップ
第1章 絵の中の世界に入り込む!? 虚体験ワークショップ
コラム1 虚体験ワークショップ
第2章 絵画を歩く さんぽ鑑賞ワークショップ
コラム2 「さんぽ鑑賞」と私の鑑賞観
第3章 「関わり合う」アート・ワークショップ:アート体験の可能性
第4章 日常と結びつくアート鑑賞:アートを通して世界をみる
コラム3 赤ちゃんとびじゅつかんプロジェクト:乳児のアート鑑賞をデザインする現代アートを体験するワークショップ
第5章 表現を触発する:現代アーティストによる3つのワークショップ
現代アート・ワークショップ1『猫になって猫オリンピックの開会式に行こう』
コラム4 ワークショップ『猫になって猫オリンピックの開会式に行こう』
第6章 ワークショップ2『色と形のテラス』
コラム5 ワークショップは空き地をつくる
第7章 ワークショップ3『空飛ぶウサギに乗ってみるかい?』
コラム6 ワークショップ『空跳ぶウサギに乗ってみるかい?』感覚や分野を融合するワークショップ
第8章 諸感覚を横断する芸術表現ワークショップ:「音からはじまるムーヴメント」
第9章 ワークショップ『Discover your Duchamp!!:大ガラスを踊ろう』
コラム7 「仲良し」の発見:パフォーマンスショーとしてのワークショップ
第10章 アーティストとの出会いで生まれる触発:尾竹永子の「デリシャス・ムーブメント」を題材に
コラム8 デリシャスムーブメントTime is not Even.Space is not Empty
第11章 〈意味〉としての声、〈音〉としての声:ワークショップ『言葉と音楽の間を探る』
第12章 ひらけ感覚! 絵を奏でよう、音を描こう:美術作品を題材とした音楽づくりに関するワークショップ
第13章 『Inspire; Create』:世界にただ一つの楽器を創るSTEAMワークショップ
コラム9 作詞ワークショップについて
他著者
朝倉由希/夏川真里奈/佐藤悠/蓬田息吹/王詩雋/古藤陽/清水大地/杉浦幸子/竹川宣彰/山本晶/篠原猛史/髙木紀久子/高田由利子/中野優子/Cュ、タツヤ/林由夏/尾竹永子/古山詞穂/澤田怜奈/田舎片麻未/三橋さゆり/鹿倉由衣/Enrico Bertelli/浜田真理子
関連情報
アーティストの「仕事のやり方」に何を学ぶべきか
特別対談/アーティストに「これからの思考法」を学ぶ【岡田猛×佐宗邦威[1]】 (DIAMOND online 2019年10月18日)
https://diamond.jp/articles/-/214252
書籍紹介:
「表現や創造を触発するオンラインアートワークショップの開発と評価」 (夏川真里奈 | note 2024年8月6日)
https://note.com/9marina/n/nb27416dd935f
石黒千晶専任講師(心理学科)共編著『触発するアート・コミュニケーション』が出版 (聖心女子大学ホームページ 2023年6月30日)
https://www.u-sacred-heart.ac.jp/news/20230630/14356/
触発するアートと私たち | 心理専攻 横地早和子 (東京未来大学の教員が運営するWebマガジンFuture 2023年6月1日)
https://www.tokyomirai.ac.jp/future/yokochi/yokochi-770/
関連記事:
横地 早和子 (東京未来大学):誌上討論「創造的自己」 をめぐって「アーティストと私たちの創造的自己信念」 (『認知科学』29巻2号p.285-288 2022年6月1日)
https://doi.org/10.11225/cs.2022.008
イベント:
公開講座「アートの触発と創造」 (第93回東京大学五月祭 2019年9月21日)
https://gogatsusai.jp/93/visitor/kikaku/111/
公立はこだて未来大学・特別講演会「アートの触発と創造」 (公立はこだて未来大学 2019年11月22日)
https://www.fun.ac.jp/event/2324
森美術館×東京大学大学院教育学研究科岡田猛研究室 触発と創造のための芸術鑑賞ワークショップ・シリーズ|ワークショップ「猫になって猫オリンピックの開会式に行こう」 (Mori Art Museum 森美術館 | YouTube 2019年4月24日)
https://www.youtube.com/watch?v=0WyS3h9f05M
2018年度第1回勉強会「創造的教養の育成:触発するアートコミュニケーションの観点から」 (臨床美術学会 2019年3月1日)
https://www.clinicalart.gr.jp/20190301.html