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白と黄色の表紙

書籍名

幻冬舎新書 674 なぜ理系に女性が少ないのか

著者名

横山 広美

判型など

224ページ、新書判

言語

日本語

発行年月日

2022年11月30日

ISBN コード

9784344986763

出版社

幻冬舎

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なぜ理系に女性が少ないのか

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日本の理系女性率はOECD諸国の中で最下位である。一方で女子学生の理数系の成績は国際的に見ても大変高い。優秀な女子生徒たちはなぜ、理系を選ばないのか。理系は男子、文系は女子、といった刷り込みはどのように生じているのか。本書はこうしたシンプルな疑問について、著者をはじめとする6名の研究者が、日本のジェンダー平等やイメージというこれまで研究がされてこなかった社会風土を切り口に論ずる書籍である。各章は著者たちの論文の紹介になっている。看護は女性、機械工学は男性というイメージがどれくらい強いのか。親のバイアスは女子生徒の進学にどのように影響するのか。読者にとっても身近な問題を具体的なデータで紹介する。
 
著者たちは、科学と社会の関係を問う科学技術社会論、科学教育、教育経済学、科学コミュニケーション、ダイバーシティ研究を専門にするチームで、これまで注目をされてこなかった、社会の雰囲気、つまり「社会風土」に着目した。残念ながら日本はジェンダーギャップ指数が非常に悪い。日々の暮らしの中で、さまざまに差別的なことに出会う確率はまだ高い。そこで、理系女性の研究ではこれまであまり注目をされてこなかった、女子生徒や親のジェンダー平等意識が女子生徒の理系進学と関係するのか、そもそも社会における理系の男性イメージがどの程度なのかを測定するなど、独自の測定でこの問題に取り組んだ。例えば、ジェンダー平等意識が低い人ほど、看護学は女性のイメージが強く、女子生徒は理系に進学しない。また母親の数学ステレオタイプが強い娘ほど理系に進学をしない。こうしたデータを集積し、紹介している。
 
特に、原因のある程度の特定、その改善策のテストを行っている点に注目いただきたい。チームは、数学や物理など工学部入学に必須となる科目の男性イメージが、就職イメージや、男性の方が女性よりも数学ができると言った間違ったステレオタイプ (数学ステレオタイプ)、そして優秀さは男性のものといった思い込みに影響することを発見した。そこで、これらの項目を否定する、実際に事実のデータを提供することで、中学生の男女ともに理系への進学に関心を強めることも確認している。
 
女性は理系に進学をしたくとも反対されるケースが多い。かつ、理系人材の確保は各国の人材育成で大きなテーマである。理系に女性が少ない状況は、世界で同様に見られる現象で、かつ先進国では様々に取り組みがされているにもかかわらず、なかなか改善されていない。こうした大きな社会問題の共有と同時に、大きな謎に、データで一歩一歩迫る楽しみを感じ、この問題を共に考えていただければ幸いである。
 

(紹介文執筆者: カブリ数物連携宇宙研究機構 教授 横山 広美 / 2025)

本の目次

序  章「理系女性問題」とは何か
第1章 理系女性の割合はOECDで最下位
第2章「数学・物理学に求められる能力」のイメージとは
第3章 男女差は生まれながらか環境要因か
第4章 学問分野にはジェンダーイメージがあった
第5章 学問分野から連想させるキーワード
第6章 中学で物理が嫌いになる?
第7章 ジェンダー平等意識と理系進学の関係
第8章 親のバイアスはどう影響するか
第9章 数学・物理の男性イメージはどう作られる?
第10章 壁を取り払ってくれるのはどんな情報?
 

関連情報

著者コラム:
Society, No.84: Why Are There So Few Women in Science?  (Discuss Japan 2024年10月7日)
https://www.japanpolicyforum.jp/society/pt2024100712001714676.html
 
東大に女性は2割しかいない あまりにも特殊な日本の現状 (幻冬舎plus 2024年6月13日)
https://www.gentosha.jp/article/25572/
 
女性は「論理的思考」が不得意? 平等意識が高い人にも根深く残るジェンダーバイアス (幻冬舎plus 2024年6月20日)
https://www.gentosha.jp/article/25568/
 
女性に機械工学は向かない? 学問についたジェンダーイメージ (幻冬舎plus 2024年6月27日)
https://www.gentosha.jp/article/25574/
 
親の「学問のイメージ」が娘の進路に影響 理系でも「薬学」が賛成されやすい理由 (幻冬舎plus 2024年7月4日)
https://www.gentosha.jp/article/25569/
 
女性研究者の推薦書は男性より圧倒的に短い 性別で不利益を被る「無意識のバイアス」 (幻冬舎plus 2024年7月11日)
https://www.gentosha.jp/article/25573/
 
特集記事・著者インタビュー:
【特集】悩める東大
学生も教員も女性がまだまだ少ない 東大の現状.5|横山広美ほか (『淡青』50号 2025年5月7日)
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/features/z1304_00330.html
 
日本に数学や物理学を学ぶ女性が少ないのはなぜ?
理系進学の壁、独特の女性規範と能力ステレオタイプ (科学技術振興機構JST - POLICY DOOR)
https://www.jst.go.jp/ristex/stipolicy/policy-door/article-08.html
 
科学技術と平和は両立できる?理系・文系を超えた先にある、社会科の学び【東京大学教授・横山広美さんに聞く】 (ベネッセ教育情報 2025年2月17日)
https://benesse.jp/kyouiku/202502/20250217-4.html
 
《小中学生トコトンチャレンジ審査員》東京大学教授・横山広美先生インタビュー (子供の科学のWebサイトKoKaNet 2023年11月29日)
https://www.kodomonokagaku.com/interview_yokoyama/
 
「数学や物理は女性に向かない」という思い込み…「リケジョ」増やすには「見えない壁」の背景分析し議論を (讀賣新聞オンライン 2023年11月12日)
https://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/kyoiku/daigakunyushi/20231102-OYT1T50185/
 
Think Gender なぜ女子の理工系進学は少ないのか 横山広美・東大教授に聞く解決策 (朝日新聞EduA 2023年3月20日)
https://www.asahi.com/edua/article/14861744
 
著者インタビュー「なぜ理系に女性が少ないのか」横山広美氏 (日刊ゲンダイDIGITAL 2023年1月12日)
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/317083
 
話題の本 著者に聞く
女性の「理系嫌い」は日本の社会風土の産物だ『なぜ理系に女性が少ないのか』横山広美氏に聞く (東洋経済ONLINE 2023年1月1日)
https://toyokeizai.net/articles/-/642426
 
「数学ステレオタイプ」って何? 理系女性が少ない要因を東京大学 横山広美教授に聞く (BUSINESS INSIDER 2022年9月13日)
https://www.businessinsider.jp/article/259220/
 
講義動画:
2022年春季 東京大学特別公開講座「エビデンスに基づく男女共同参画を目指して」「理系のジェンダーバランスに影響する社会的要因は何か」横山広美 (東大TV / UTokyo TV | YouTube 2023年8月2日)
https://www.youtube.com/watch?v=k2uwNx2idzI
 
ジェンダー不平等を考える (学術フロンティア講義)
第7回 理系になぜ女性が少ないのか 横山広美 (OCW – UTokyo OpenCourseWare 2022年)
https://ocw.u-tokyo.ac.jp/lecture_2329/
 
書評:
#書評のひろば 加藤美砂子 評 (東京大学大学院総合文化研究科・教養学部付属 教養教育高度化機構 - 科学技術コミュニケーション部門 2024年1月12日)
https://scicom.c.u-tokyo.ac.jp/activity/3230
 
#書評のひろば 坂本真樹 評 (東京大学大学院総合文化研究科・教養学部付属 教養教育高度化機構 - 科学技術コミュニケーション部門 2024年1月12日)
https://scicom.c.u-tokyo.ac.jp/activity/3224
 
#書評のひろば 松原洋子 評 (東京大学大学院総合文化研究科・教養学部付属 教養教育高度化機構 - 科学技術コミュニケーション部門 2024年1月12日)
https://scicom.c.u-tokyo.ac.jp/activity/3234
 
日本の理系女子割合はOECDで最低…「理数好き」も文系を選ぶ残念な理由【おすすめ本紹介】 ~『なぜ理系に女性が少ないのか』(横山 広美 著)を読む (DIAMOND online 2023年3月31日)
https://diamond.jp/articles/-/320362
 
ひらめきブックレビュー
安藤奈々 評「算数が好きな娘を守れ 理系減らす男女平等意識の低さ」 (NIKKEI BizGate 2023年2月16日)
https://bizgate.nikkei.com/article/DGXZQOKC098EN009022023000000
 
香山リカ(精神科医) 評「女の子は文系で」の時代錯誤 日本の“知的な女性を好まない社会風土”の問題点 (『週刊ポスト』 2023年2月10・17日号)
https://www.news-postseven.com/archives/20230206_1836585.html?DETAIL
 
石原安野 (千葉大学ハドロン宇宙国際研究センター教授) 評「日本特有の「社会風土」から分析」 (朝日新聞 2023年1月7日)
https://book.asahi.com/article/14808798
 
藤田結子 (明治大学教授) 評「見えない壁を解き明かす「なぜ理系に女性が少ないのか」 藤田結子が選ぶ新書2点」 (好書好日 2022年12月14日)
https://book.asahi.com/article/14790422
 
書籍紹介:
【マイブック】『なぜ理系に女性が少ないのか』 (横山広美 教授) (東京大学大学院 情報学環・学際情報学府 2023年4月27日)
https://www.iii.u-tokyo.ac.jp/research/230427mybook
 
フォーラム:
ジェンダー平等 まず大学が変わらないといけない件 (朝日地球会議2024 2024年10月25日 – 31日)
https://www.asahi.com/eco/awf/program/#day7
 
NORDIC TALKS JAPAN: Women in Science Breaking through the Glass Ceiling 女性科学者たちの挑戦 -ガラスの天井を破るには- (Nordic Innovation House 2024年3月6日)
https://www.nordicinnovationhouse.com/tokyo/nordic-talks-japan/women-in-science-breaking-through-the-glass-ceiling-
 

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