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白い表紙に油絵のような水色の絵

書籍名

政治学原論 方法・理論・実証

著者名

加藤 淳子

判型など

384ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2025年4月28日

ISBN コード

978-4-13-032238-6

出版社

東京大学出版会

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政治学原論

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本書は、東京大学法学部で「政治学」として行ってきた授業の講義録に基づいている。この講義は、政治理論・政治思想や政治史以外の、実証政治学の入門講義としてカリキュラムの最初に位置づけられ、政治学の専門科目を学ぶための準備として、実証分析に関わる基本的な概念や考え方を学ぶ目的で行われた。講義が行われた20年以上の間に、急速な専門分化が政治学で進んだため、本書は、各分野をできる限り網羅し、曲がりなりにも統一した観点から政治学を見るように構成されることとなった。これは、他の政治学のテキストにはあまり例を見ない本書の特徴ともなっている。本書のもう一つの特徴としては、理論や一般化された枠組を中心に取り扱っていることがあげられる。限られた時間でなるべく広く政治学の分野を横断することを目的とする講義に基づき書かれたためである。これは、必ずしも初学者にとって学びやすい構成ではない一方で、政治学において、どのように問題を設定し対象への理解を深めていくかを学ぶには適している。専門分化の結果、各分野では体系的に知識が提供されるようになった一方、政治学全体を通して知識が積み上げられてきた過程が見えにくくなっている。理論や一般化された枠組を紹介する際にも、本書では、そこに至る過程―政治学者の思考や政治学者間の議論の過程―をたどれるように、特に留意して書かれている。どのような知識でも古くなっていくことは避けられないが、知識を得る過程を学ぶことで、読者自身がそれを新しくしていくことができるのである。
 
このような背景もあり、本書は必ずしも最初から順に読む必要はないよう構成されている。政治学の方法に関わる、第1章と第18章は、今後の政治学の展開を方法から見越すことを目的とし、他の章の主題にも言及していることもあり、そのため難解である。そこで、これら以外、第2章から第17章までの章を読んでから、第1章と第18章を読むこともできるように書かれている。第2章は権力の概念、第3章と第4章は合理性の概念に基づいた方法論的個人主義に関わるアプローチと、政治学の各分野に関わる、抽象的な内容となっている。それに対し、第5章から第17章は、具体的な主題を扱っている。他の章の内容に関連する場合は適宜参照し、興味を持つどの章から読むこともできるよう留意して書かれているので、読者の興味関心や既に持っている知識にあわせて読むことができる。大学院レベルで、必ずしも専門としない政治学の分野に興味を持った時にも活用できるよう構成されるとともに、関連する文献も引用されている。 
 
本書を通じて最も伝えたいことは、政治という現象の不可思議さであり、政治学の面白さである。政治は、革命や戦争・虐殺から、民主主義における代表や平等の追求まで、異質で多様な現象を含む。社会や人間の幅広い側面に向き合い分析を行なってきた政治学の考え方は、政治学や社会科学を専門としないとしても、社会における様々な問題の解決に応用できる。政治学を学ぶことを超えて、社会人の方にも読んでいただき、人間社会の広い理解にも資することができれば、望外の喜びである。
 

(紹介文執筆者: 法学政治学研究科・法学部 教授 加藤 淳子 / 2025)

本の目次

はじめに

第1章 政治学の方法
1.事実と一般化/2.科学的研究としての政治学の方法/3.分析の対象―変数間の関係/4.定量的分析の方法―その論理とリサーチ・デザイン/5.定性的分析の方法―比較の論理と比較政治学の方法/6.比較政治学のリサーチ・デザインと定性的分析の方法

第2章 権力の概念
1.権力の二側面―主体間の強制的権力と集団の発揮する力としての権力/2.ルークスの権力の三次元/3.政治過程分析の道具としての権力の概念

第3章 個人の合理性―ゲーム理論・公共財・集合行為理論
1.合理的選択論とは?/2.ゲーム理論/3.公共財と集合行為理論/4.集合行為や公共財の供給は可能か?

第4章 個人の合理性――選好の表現と空間理論
1.個人の選好の表現/2.空間理論/3.社会的選択論

第5章 個人の政治的態度―政治文化と政治参加
1.ポリアーキーとしての民主主義/2.政治文化/3.政治的態度の継承と変化/4.政治参加と価値観/5.民主主義の制度を超えて

第6章 政党
1.政党はなぜ存在するのか?/2.政党の定義/3.政党の目的と機能/4.政党の起源と歴史的変遷/5.民主主義の安定の下での政党組織の変遷と政党政治の変化/6.政党の政策とイデオロギー/7.ポピュリズムとポピュリスト政党

第7章 政党システム
1.政党システム形成の歴史的説明―凍結仮説/2.政党システム形成の合理的選択論的説明―ダウンズの空間理論/3.政党システムと選挙制度―デュヴェルジェの法則/4.サルトーリによる政党システムの分類

第8章 選挙制度と投票行動
1.選挙制度を決める条件(1)―投票/2.選挙制度を決める条件(2)―議席配分の決定方式と選挙区/3.決定方式の多様性―移譲式・非移譲式・混合制/4.投票と政治的態度/5.投票行動モデル

第9章 利益集団
1.利益集団とは何か?/2.利益代表の概念/3.コーポラティズムの概念と比較政治体制

第10章 議会
1.議会内の行為者と対立/2.議会内の対立に影響を与える要因/3.議会の機能の評価と類型/4.米国連邦議会と合理的選択論

第11章 政党の連合と連立
1.政党の連合と連立をめぐる理論枠組/2.政権追求モデル/3.政策追求モデル/4.連合理論と現実政治―日本の事例を中心に

第12章 官僚制
1.官僚の行動分析―公共選択論アプローチと組織論アプローチ/2.政治家と官僚―政官関係の理論と実証研究/3.政治経済学的分析―強い国家vs 弱い国家から異なる組織合理性へ

第13章 民主主義の制度
1.民主主義の制度に関する相対立する考え方/2.ウェストミンスター・モデルとコンセンサス・モデル/3.政府・政党次元/4.連邦・単一国家次元/5.民主主義の二次元概念図とパフォーマンス

第14章 政治体制の移行と安定
1.歴史的事例としての欧米諸国の民主化/2.権威主義と従属的発展論/3.競争的権威主義と国際環境要因/4.グローバリゼーション以降の経済的要因―経済発展・租税・平等/5.デモクラティック・バックスライディング

第15章 民主主義と資本主義
1.民主主義と資本主義―民主化・経済発展から福祉国家へ/2.民主主義と資本主義―経済危機への対応の国際比較研究/3.資本主義の多様性/4.資本主義の多様性の継続と展開

第16章 福祉国家
1.民主主義、資本主義、福祉国家/2.エスピン- アンデルセンの福祉レジーム論/3.エスピン- アンデルセンへの批判とその後の展開/4.社会的投資と資本主義の多様性

第17章 国際関係と国内政治
1.合理的な単一行為者としての国家と無政府状態の国際関係/2.ネオリアリズム/3.覇権安定論とネオリベラリズム/4.国家間の相互依存の下での国際制度の形成/5.コンストラクティヴィズム/6.国際関係と国内政治経済

第18章 方法論の展開―実験と定量的分析・定性的分析
1.定量的分析と定性的分析―再論/2.実験の方法―その基本と種類/3.実験研究の妥当性/4.実験の論理の現実への応用/5.方法の混合から方法の交差へ

引用文献/あとがき/索引(人名・事項)
 

関連情報

著者インタビュー:
東京大学法学部教員メッセージ(政治学・加藤淳子) (東京大学法学部YouTubeチャンネル | YouTube 2022年12月1日)
https://www.youtube.com/watch?v=fLHIX1Ecun8

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