
書籍名
叢書・比較教育社会史 職業教育とジェンダーの比較社会史 近現代における女性と戦争障害者への就労支援
判型など
278ページ、A5判
言語
日本語
発行年月日
2025年1月15日
ISBN コード
9784812224014
出版社
昭和堂
出版社URL
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本書『職業教育とジェンダーの比較社会史』は、そのタイトルが示す通り、職業教育に関連して、19世紀から20世紀という時代状況のなかで、ジェンダーによる特質がどのようなものか、いくつかの事例を比較、検討することを目的とする。その際には、近現代のヨーロッパ・日本を考察の場として、教育や職業教育の機会が少ない女性たち、あるいは逆に優遇されている男性たちのうち、中途で就労の困難を抱えるようになった戦争障害者/障がい者 (戦傷病者) に着目する。
本書の第I部は、主として女性の職業教育に関連した論考を集めている。就労の前提となる女性への職業教育に関しては、女性への学校教育そのものや女性就労に関してと同様に、近現代のヨーロッパおよび日本では否定的な論調が強かった。近現代のヨーロッパ、そして日本では、とくに女性への職業教育に目を向けてみると、学校教育や就労が女性にはあまり開かれていなかったのと同様に、ごく限られた人にのみ許された道だった。そのため、どのような形であれ、教育を受ける女性たちはマイノリティだったといえる。ここでは、近現代のロシア、日本、ドイツ、イギリス、メキシコにおいて展開された女性への職業教育の様相が示される。
第II部の主題となっている戦争障害者/障がい者という一部の男性への職業教育は、男性が優遇されている近現代の社会において、中途で障害を持つようになった人びとへの福祉事業として発展してきた。1793年に革命中のフランスで発令された総動員令の発布以降、いわゆる「国民皆兵」の社会が到来した。フランス革命に起因する、市民社会の誕生とともに到来したあらたな問題として、傷病を負って除隊する男性たちの社会復帰が大きな課題となった。それが、より大きな社会問題と認識されるのは、兵器の近代化と医療的な進歩によって、戦場で命を落とさずに帰還できる傷病兵が増加する19世紀後半以降のことである 。
20代から40代という生産年齢の男性が心身に障害を負って数十万人、あるいは百万人といった単位で戻ってくるという前例のない社会変動に対して、近代のヨーロッパおよび日本の社会はどのように対応したのか。参戦国では、戦時中に増え続けた戦争障害者が社会に遍在する状況は、徐々に常態であると考えられるようになり、彼らをどう社会に統合するかは喫緊の課題であり、それは戦後にいっそう深刻さの度合いを増して継続した。その際にめざされたのは、彼ら戦争障害者たちの社会復帰策としては、男性の役割とみなされた扶養者として就労できる道すじをつくることであった。そこには、就労にいくらかの困難を抱える戦争障害者も、男性役割をまっとうできるようにするという思惑も含まれており、この第II部では日本、ロシア、ドイツ、フランスの事例から検討していく。
(紹介文執筆者: 人文社会系研究科・文学部 准教授 北村 陽子 / 2025)
本の目次
■第I部 女性のライフステージと職業教育
第1章 家庭だけでなく職業も――帝政末期ロシアの女子中等教育機関卒業生の進路と男性知識人(畠山 禎)
第2章 男性教師の職業的自覚の形成と女性教師の困難――明治前・中期の学問の「主体」、教育の「対象」としての女性(加島大輔)
第3章 女性社会福祉職の養成と就労――前世紀転換期ドイツの「ベルリン女子社会事業学校」(杉原 薫)
第4章 優生学と慈善の狭間で――二〇世紀転換期イングランドの「精神薄弱の女性・女子」用ホーム(大谷 誠)
第5章 女性教員のキャリア・パス――近代メキシコの女子職業教育とキャリア形成(松久玲子)
■第II部 戦争障害者の職業教育
第6章 「名誉の負傷者」の社会復帰――日露戦争後の癈兵・傷痍軍人の保護政策(松田英里)
第7章 総力戦体制の中の障害者兵士――第一次世界大戦期のロシア(池田嘉郎)
第8章 「鋼の意志があれば、障害などないに等しい」――第一次世界大戦期ドイツの戦争障害者支援の展開(北村陽子)
第9章 戦時チャリティから権利としての職業教育へ――第一次世界大戦から戦間期におけるフランスの戦争障害者政策(舘 葉月)
[コラム]戦傷病者の生活実態と職業訓練――福井県での聞き取り調査から(藤原哲也)
関連情報
佐久間亜紀 (慶應義塾大学教授) 評 (『教育学研究』92巻3号p.481-482 2025年9月)
https://doi.org/10.11555/kyoiku.92.3_481
上垣豊 評 (『日仏教育学会年報』第32号p.83 2025年9月)
https://b57dda66-637e-45b5-9362-99cac25ff2b1.filesusr.com/ugd/635330_6aa6c19d50d548d484d8dd77fc0fd1b5.pdf
望戸愛果 (静岡県立大学准教授) 評「比較教育社会史の新たな幕開け――ジェンダー研究の今後を見さだめる」 (『週刊読書人』 2025年3月7日)
https://dokushojin.net/news/889/
鵜殿篤 (東京家政大学 准教授) 評「要約と感想」 (『眼鏡文化史研究室』 2025年1月24日)
https://meganeculture.boo.jp/2025/01/24/%E3%80%90%E8%A6%81%E7%B4%84%E3%81%A8%E6%84%9F%E6%83%B3%E3%80%91%E5%8C%97%E6%9D%91%E9%99%BD%E5%AD%90%E7%B7%A8%E8%91%97%E3%80%8E%E8%81%B7%E6%A5%AD%E6%95%99%E8%82%B2%E3%81%A8%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%B3/

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