
書籍名
The University of Tokyo Studies on Asia Harvest Loss in China Rice, Mechanization, and the Moral Hazard of Outsourcing
判型など
176ページ、ハードカバー
言語
英語
発行年月日
2024年12月28日
ISBN コード
978-981-97-9155-2
出版社
Springer Singapore
出版社URL
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食料ロスの削減は、国連で2030年までの国際開発目標に掲げられている。世界の食料ロスは、国連食糧農業機関 (FAO) によれば、その発生段階 (生産段階・小売段階・消費段階など) でみたとき、生産段階のロスが半分程度を占め、その生産段階のロスの多くが新興国・開発途上国で発生している。
中国農業は、世界の農業生産の中で最も多くの生産を占めるが、他方で生産段階での収穫損失 (ハーベストロス) も多い。とりわけ近年では、農作業の機械化や外部委託 (アウトソーシング) 化によって生産性が向上する一方、これに伴って収穫損失が発生していることが指摘されている。そこでは、農作業の外部委託化に伴う受託者 (エージェント) の作業態度が収穫に負の影響をもつこと、すなわち委託者 (プリンシパル) の利益に反して受託者が行動するモラルハザードが、収穫損失の発生に影響を与えていることが示唆されている。しかしながら、これについて実証的な分析はほとんどなかった。
本書は、中国の稲作農家を対象に、収穫損失の発生要因について、本人・代理人 (プリンシパル・エージェント) の関係の観点から、代理人=受託者のモラルハザードによる収穫損失への影響を明らかにすることを目的としている。本書の構成は、上記のような問題背景やモラルハザードなど概念を整理した第1章、米の収穫損失に関する推定方法や影響など先行研究を整理した第2章、サンプルの基本統計量を整理した第3章、実証分析のパートにあたる第4章~第6章、最後に結論と政策的インプリケーションをまとめた第7章からなる。
実証分析の最後のパートとなる第6章は、第4章と第5章の分析を踏まえて、受託者のモラルハザードが収穫損失率に与える影響について、操作変数法を用いて、農地面積の大きさの別に検討されている。その分析の結果、受託者の負の作業態度は収穫損失率を上昇させること、また受託者の負の作業態度による収穫損失率への影響は農地面積が大きくなるにつれて減少し、上位1/10の農地では有意でなくなることが確認されている。これらのことから、外部委託による受託者のモラルハザードが収穫に負の影響をもつ一方、大規模な農地ではモラルハザードの影響はみられなくなることが明らかにされている。
以上のように、本書は、中国の米の収穫損失について、外部委託による受託者のモラルハザードの存在とそれによる収穫への負の影響を実証的に明らかにしたものである。本書が着目するモラルハザードによる要因はもとより、これ以外の要因 (農地面積や収穫方法など) についても新知見が見い出されている。こうした知見は、中国農業のように機械化や外部委託化が進むことが見込まれる新興国・開発途上国の農業にとっても、収穫損失の削減への有益な示唆となるものと考えられる。
(紹介文執筆者: 農学生命科学研究科・農学部 教授 小嶋 大造 / 2026)
本の目次
Chapter2 Literature Review
Chapter3 Data Collection and Descriptive Statistics
Chapter4 The Moral Hazard in Harvest Outsourcing Service
Chapter5 The Effect of Outsourcing Service on Rice Harvest Loss Through Moral Hazard
Chapter6 The Effect of Moral Hazard on Rice Harvest Loss
Chapter7 Conclusion and Policy Implications
Appendices
Index
関連情報
2025年 日本農業経済学会 学術賞受賞 (日本農業経済学会 - AESJ 2025年)
https://www.aesjapan.or.jp/award/award2025
関連記事:
research letter
A Study of Rice Harvest Losses in China:Do Mechanization and Farming Scale Matter?
Xue Qu, Daizo Kojima, Yukinaga Nishihara, Laping Wu, Mitsuyoshi Ando (『Japanese Journal of Agricultural Economics』23巻pp.83-88 2021年3月31日)
https://doi.org/10.18480/jjae.23.0_83
書籍紹介:
極東書店ニュースNo.736 日本人著者・編者 日本関連テーマ 注目タイトル
小嶋大造、安藤光義他著 中国における収穫損失-米、機械化、アウトソーシングのモラルハザード【オープンアクセス】 (極東書店 | note 2024年12月2日)
https://note.com/fareasternbks/n/n6d1612a6e94e#ebfda31e-8d54-49be-a6f1-b48ff6cc0862

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