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書籍名

コモンズのガバナンス 人びとの協働と制度の進化

著者名

エリノア・オストロム (著)、原田 禎夫、 齋藤 暖生、 嶋田 大作 (訳)

判型など

324ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2022年12月20日

ISBN コード

9784771037083

出版社

晃洋書房

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コモンズのガバナンス

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本書は、2009年のノーベル経済学賞を受賞したエリノア・オストロム (1933-2012年) の主著の翻訳書である。政治学を専門とする著者は、制度の成立や変容の過程に着目し、人びとが共同で利用するコモンズ、特に自然資源を持続的に管理しうる社会的仕組みについて、精力的に研究を行ってきた。さらに、人類学や経済学、地域研究など多様な出自の研究者が参画する研究グループを牽引してきた。本書は、彼女がこのような精力的な研究活動を展開していたさなかに彼女がまとめた「中間報告」(序文p.ⅷ) である。
 
従来の理解では、コモンズでは誰もがより多くの利益を得ようと振る舞うことで、制限なく資源が浪費され、やがて崩壊に至る、とされてきた。こうした認識から、コモンズをうまく管理するには、政府による統制に任せるか、分割して個人の合理的経営に任せるべきだという、二通りの処方箋が示されてきた。つまり、コモンズを利用してきた現場の「人びと」は、コモンズの管理者としては否定されてきたのである。これに対し、本書は「人びと」がコモンズを長期的に管理しうることを示したことに最大の意義がある。
 
第1章では、関連する学説史を整理しつつ、その理論を批判的に検討することで、本書の課題が明確化される。紹介者なりに概括すれば、演繹的に命題を論証するアプローチに対し、実例をもとに帰納的に論証する必要性を示した。あまり紙幅は割かれていないが、演繹的な議論に依拠して森林の国有化などの政策実行がなされたことの弊害を指摘していることは重要だろう。続く第2章では、本書での概念の定義と分析枠組みが示される。「人びと」が自分たちでコモンズを管理する仕組みを担うとき、そのルールや制度はどのように供給されるのか (供給問題)、ルールや制度のもとで人はどのように振る舞うのか (コミットメント問題)、ルールが遵守される状況をどのように確保するのか (相互監視問題)、という3つの問題があり、これが事例を分析する軸となる。
 
第3章から第5章にかけて、数多くの事例研究を議論の俎上に載せ、詳細な分析が展開される。取り上げられるコモンズは、牧草地、森林、灌漑用水、地下水、沿岸漁業と実に多様である。第3章では、いわば成功事例と言える事例が分析対象となっており、本書のハイライトと言える。ここで、著者の業績として頻繁に引用される、持続的なコモンズ管理の設計原理が示される。また、この章では、日本から富士山麓の入会地の事例が取り上げられていることも付記しておく。第5章で、いわゆる失敗事例が取り上げられていることも重要だろう。これにより、第3章で示した設計原理の妥当性が裏付けられる。
 
これらの事例分析を踏まえて、第6章で上記の3つの問題への応答がまとめられ、制度が生成・変容される過程における費用に着目した分析枠組みが提案される。
 
原書の出版は1990年であり、その後、コモンズ研究は目覚ましく発展した。しかし、コモンズを捉える基本的視点を提供するものとして本書の価値は失われていない。
 

(紹介文執筆者: 農学生命科学研究科・農学部 講師 齋藤 暖生 / 2025)

本の目次

第1章 コモンズを見る視点
第2章 共的資源をめぐる自己組織化と自治に関する制度分析
第3章 長期にわたって持続的で自律的な共的資源の管理
第4章 制度変化の分析
第5章 制度の失敗および脆弱性の分析
第6章 自律的な共的資源管理の分析枠組み
 

関連情報

書評:
前川聡一郎 評 (『コミュニティ政策22』p.206-211 2024年11月25日)
https://www.toshindo-pub.com/book/91938/
 
矢島ショーン 評 (『経済学史研究』66巻1号p.87-89 2024年7月25日)
https://doi.org/10.5362/jshet.66.1_87

高村学人 評 (『図書新聞』3593号 2023年5月27日)
https://toshoshimbun.com/product__detail?item=1703316323910x245063760536101700

【一挙公開】プロピッカーが選ぶ「読んでよかったビジネス書」10 (『NewsPicks』 2024年1月3日)
https://newspicks.com/news/9351190/body/

本よみうり堂: 牧野邦昭 (経済学者・慶応大教授) 評「資源維持 利害の共有で」 (『読売新聞』オンライン 2023年3月31日)
https://www.yomiuri.co.jp/culture/book/review/20230327-OYT8T50058/

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