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書籍名

税制と経済学 その言説に根拠はあるのか

著者名

林 正義

判型など

208ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2024年7月29日

ISBN コード

978-4-502-48911-2

出版社

中央経済社

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税制と経済学

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税制に関しては様々なメディアを通じて多様な言説が流布されてきました。例えば、次のような主張を耳にしたことがあるでしょう。
 
・高い労働所得税は勤労意欲を削ぐ。
・最高税率を上げても税収増にはつながらない。
・高い累進課税は高所得者の海外流出を招き、税収を減少させる。
・配偶者控除は女性の社会進出を阻害している。
・相続税は事業承継を妨げ、日本経済に悪影響を与える。
・法人課税は経済成長に悪影響を及ぼす。
・軽減税率によって低所得者を支援できる。
 
これらの言説は一見もっともらしく聞こえますが、なかには論者の「個人的な経験や思い込み」に基づくものもあるかもしれません。また、特定の主義・価値観に依拠するものや、実利や権益から生じた主張もあるでしょう。万人が納得する税制改革は稀であり、特定の主義や利益に沿って組織化された人々は、自らに不利な政策が採用されないよう、また有利な政策が採用されるよう積極的に働きかけるかしれません。
 
実際、税制改革の機運が高まるたびに税制をめぐる言説は繰り返し喧伝されてきました。日頃の税への不満も手伝ってそれらは注目を集めやすく、自己の利益に沿う主張であれば根拠が乏しくても信じてしまうこともあるでしょう。その結果、信頼性の低い言説が広まり、税制改革そのものに影響を及ぼす可能性があるかもしれません。
 
税制は最終的に政治的決定によって定められ、そこには必ず誰かの不満が残ります。日本の民主主義制度のもとでは避けがたい側面ですが、それでも、その政治的結果に至る過程で、事実と異なる思い込みや根拠のない言説が影響力を持つべきではありません。
 
本書はこのような問題意識から執筆されました。本書では、税をめぐる様々な言説がどの程度の根拠を持つのかについて、既存の経済学的研究のレビューを通じて検討しています。ただし、日本のデータを用いた研究が十分に存在しない分野も少なくありません。そのような場合には海外の研究成果を中心に紹介していますが、制度や国民性の異なる国のデータを用いた研究が、日本の税制を評価する根拠になるかは明確ではありません。それでも、日本のデータによる研究が乏しい現状では、海外研究の知見はまず参照すべき重要な情報でしょう。
 
なお、本書の終章では、経済学的研究を読む際に注意すべきポイントを整理しています。特にここでは、近年注目されているEBPM (evidence-based policy making) に触れつつ、既存の実証研究や本書の議論がもつ限界を明示し、読者自身が「きちんと考えること」の重要性を強調しています。
 

(紹介文執筆者: 経済学研究科・経済学部 教授 林 正義 / 2025)

本の目次

第1章 「年収の壁」と配偶者控除―配偶者控除は就業調整を引き起こすのか―
1.1 配偶者控除バッシング
1.2 既婚女性の年収分布
1.3 制度の確認
1.4 何が100万円での集群を発生させているのか
1.5 配偶者控除による就業調整の規模
1.6 結局,何が問題なのか
 
第2章 課税と労働供給―労働所得税は勤労意欲を削ぐのか―
2.1 税制と活力
2.2 税率と労働供給の反応
2.3 課税所得を用いた評価
2.4 最高税率引上げと税収
2.5 最高税率の上昇は高所得者の流出を招くのか
2.6 低所得者への課税と給付
 
第3章 課税と再分配―税は格差の縮小に貢献できるのか―
3.1 税制の再分配効果は減少しているのか
3.2 課税による再分配を阻むもの
3.3 資産の世代間伝達
3.4 資産関連課税
 
第4章 企業課税と経済活力―企業減税は経済成長を促進するのか―
4.1 企業税制と民間投資
4.2 譲渡所得課税と事業活動
4.3 相続税と事業承継
 
第5章 消費税と今後の税制―軽減税率は役に立っているのか―
5.1 消費税のしくみ
5.2 軽減税率(複数税率)を巡って
5.3 消費課税と所得課税
5.4 消費課税と社会保険料
 
終章 「きちんと考える」ということ
 

関連情報

受賞:
第34回 (2025年) 租税資料館賞・著作部門 受賞 (公益財団法人租税資料館 2025年)
https://www.sozeishiryokan.or.jp/034-04/
 
日本応用経済学会著作賞 受賞 (日本応用経済学会 2025年6月)
https://www.jaae.org/prizes.html
https://www.biz-book.jp/topics/detail_011507
 
著者インタビュー:
著者に会いたい (『朝日新聞』朝刊読書3,17ページ 2025年2月1日)
https://www.asahi.com/articles/DA3S16139785.html
https://book.asahi.com/article/15610557
 
書評:
経済学の書棚: 前田裕之 評「日本の税金は高すぎるのか 税金の未来を考える3冊」 (『日経BOOK PLUS』 2025年11月6日)
https://bookplus.nikkei.com/atcl/column/122100175/102800071/
 
書籍紹介:
「まだまだあるぞ!2024年の『必読経済書』11選」 (『週刊東洋経済』 2024年12月28日・1月4日号)
https://toyokeizai.net/articles/-/847723
 
酒井正 評「書評委員の『今年の3点』」 (『朝日新聞』 2024年12月28日)
https://www.asahi.com/articles/DA3S16116257.html
 
今週の本棚: 大竹文雄 (大阪大学特任教授) 評「2024年『この3冊』/上(その1)」 (『毎日新聞』 2024年12月16日)
https://mainichi.jp/articles/20241214/ddm/015/070/014000c
 
「目利きが選ぶ3冊」入山章栄氏が選ぶ一冊 (『日本経済新聞』 2024年11月21日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD181FJ0Y4A111C2000000/
 

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