
書籍名
ガバナンスと評価 16 科学技術政策とアカウンタビリティ
判型など
218ページ、A5判
言語
日本語
発行年月日
2025年3月20日
ISBN コード
9784771039599
出版社
晃洋書房
出版社URL
学内図書館貸出状況(OPAC)
英語版ページ指定
本書は晃洋書房の「ガバナンスと評価」シリーズの1巻であるため、第1章では評価の一般論が紹介されている。政策の評価はもともと、予算が適正に執行されているかという会計監査の発想で行なわれていた。しかし、予算が適正に執行されたからといって目指していた成果が達成されるとは限らないことから、内容を評価すべく「プログラム評価」が試みられるようになった。しかし政策の実施内容を評価するのには困難が伴うことから、結局外形的な、「プロセス評価」で代替することが多い。この点からすると、内容が高度に専門的な科学技術政策については、一層の難しさがあることが指摘されている。
第2章から第4章は歴史的な経過が取り上げられている。第2章では「科学技術」という日本語が、第2次大戦の総力戦体制、とりわけ第2次近衛内閣の基本国策要綱の一環である「科学技術新体制確立要綱」のなかで登場したことを確認している。その推進主体として設立された「技術院」は戦後解体されたが、その一部は工業技術院などに引き継がれた。第3章では戦後3度の試みの末に「科学技術庁」が1956年に発足するまでの経緯を辿っている。他省庁からの抵抗もあり、科学技術政策の一元化という当初の構想からは遠く、実質的には「原子力庁」に近い出発となった。第4章ではその科学技術庁が、宇宙、深海などと所轄範囲を拡大しながら、また科学技術政策を展開する政策ツールを開発しながら発展した経過を描き出している。2001年の省庁再編によって「総合科学技術会議」を政府の中心的な位置に押し上げることに成功したものの、小泉政権→民主党政権→第2次安倍政権という政治的展開のなかで、その司令塔機能はむしろ政治の側に掌握されるようになっていった。
第5章からは各論である。第5章では省庁再編時の科学技術庁の扱いに関する多様な意見の交錯を紹介し、その結果誕生した総合科学技術会議が、2003年以降科学技術予算を一元的に審議するようになるなかで、日本学術会議が「車の両輪」との表現のもと、独立性を脅かされる可能性に警鐘を鳴らしている。第6章では研究開発機関の法人化について論じている。橋本行革の中で独立行政法人制度が創設され、省庁再編後には国立大学法人制度も導入された。その後、独立行政法人が研究開発に馴染まないのではという問題提起を受けて、2008年に研究開発力強化法が制定され、2014年の独立行政法人通則法改正で国立研究開発法人制度が導入された。本来別の目的をもつ国立研究開発法人と国立大学法人の位置づけが類似してきていることが指摘されている。第7章では研究職における任期制の導入について、1960年代の議論まで遡り、90年代以降の不況期で環境が変化した中で任期制が導入されてしまったのではないかと問題提起を行っている。第8章では、単年度決算主義によって前年の反省を活かすことなく計画が立案されている等の現状の政策サイクルの問題点を指摘し、また、科技庁のトップダウンマネジメントという戦略がより上位の政策ドクトリンを上書きした結果、総合科学技術会議以外にも「司令塔」が林立する事態が生じたことを指摘している。第9章ではJAXAの研究開発部門において、事業部門の評価システムが引き写しされるために評価のための作業が膨大になるという、現場の悩みが紹介されている。第10章では欧州宇宙機関における、研究と管理に一線を引く、日本とは異なる体制のあり方が紹介されている。
(紹介文執筆者: 総合文化研究科・教養学部 特任准教授 定松 淳 / 2025)
本の目次
はじめに
1.「リヴァイアサン」
2.大前提――アカウンタビリティ概念の拡大
3.可視化とその枠組み
4.2つの整理軸
5.素人が科学をつかまえる
6.誤謬と混乱を超えて
第2章 科学技術政策の誕生 (南島 和久)
――戦前・戦中・戦後
はじめに
1.科学と技術
2.科学技術の誕生
3.戦時体制
4.戦後への承継
おわりに
第3章 科学技術庁設置過程 (山谷 清秀)
――「三度の波」と「一元化」
はじめに
1.科学技術庁設置までの「三度の波」
2.初期科学技術庁の体制
3.科学技術庁の誕生過程の結果
おわりに
第4章 司令塔機能の形成と展開 (定松 淳)
はじめに
1.科学技術庁による科学技術政策の拡大(1956~1994)
2.科学技術基本法の制定と総合科学技術会議の成立(1995~2004)
3.科学技術イノベーション政策への展開(2005~2020)
おわりに
第5章 科学技術政策と学術 (村上 裕一)
――科学アカデミーをめぐって
はじめに
1.日本学術会議の動向
2.科学技術政策の司令塔機能強化
3.「車の両輪」論の捉え方
おわりに
第6章 研究開発機関の法人化と研究開発の評価 (西山 慶司)
――独立行政法人・国立大学法人・国立研究開発法人
はじめに
1.独立行政法人と国立大学法人の制度
2.研究開発力強化法と国立研究開発法人制度
3.研究開発機関の法人化と研究開発の評価の論点
おわりに
第7章 雇用と科学技術 (湯浅 孝康)
――国立大学・理化学研究所の事例から見る任期付問題
はじめに
1.繰り返される雇止め問題
2.研究者の雇用環境が悪化した背景
3.研究者と任期制・流動性の起源と経緯
4.任期制のねらいと社会の変化
おわりに
第8章 日本の科学技術における改革の病理 (白川 展之)
――政策遺産とドクトリンの古層がもたらす研究力低下の構造
はじめに
1.戦後科学技術政策の課題
2.ドクトリンと政策遺産
3.行政改革と政策の発展――戦後科学技術政策の展開
4.政策遺産が規定するドクトリン――明治期に遡る産業技術と学術推進体制の影響
おわりに――制度的変化と行政学の対象としての科学技術政策
第9章 国立研究開発法人における研究・開発と評価 (宮崎 英治・柳瀬 恵一)
――JAXA研究開発部門の事例
はじめに
1.研究開発の現場における評価
2.研究開発法人と評価の複雑さ
3.JAXA の評価体制―― Big Science組織に根付いた評価の体系
4.研究開発組織の評価が陥る罠
おわりに
第10章 海外における科学技術政策 (三上 真嗣)
――欧州宇宙機関の責任追及と行政管理
はじめに
1.宇宙開発政策における責任追及
2.欧州宇宙機関の組織と政策
3.欧州宇宙機関における評価と管理
4.民主的統制のバランス

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