
書籍名
学生からの総合的な学習/探究の時間 福島県の事例に学ぶ理論と実践
判型など
288ページ、A5判、並製
言語
日本語
発行年月日
2025年2月28日
ISBN コード
978-4-86359-291-9
出版社
一藝社
出版社URL
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英語版ページ指定
本書は、大学の教職課程を履修する学生に向けて執筆された「総合的な学習/探究の時間」の教科書です。数ある関連テキストのなかで、本書の大きな特色は二つあります。
第一の特色は、第1部「理論編」が、現役の大学院生や若手研究者を中心に執筆されている点です。教育学を専攻する学生同士が繰り返し意見を交わし、共同執筆のかたちで文章を練り上げました。専門知識がなくても理解でき、同時に学びの面白さを感じられるように、記述の仕方や用語の選び方にも細心の注意を払っています。各章の末尾には、本文の内容を別の角度から考えるためのコラムを設け、読者が思考をさらに広げられるようにしました。また、紙幅の都合で十分に触れられなかったテーマ(ジェンダー・セクシュアリティ、多文化共生など)については、「話し合ってみよう」と「もっと学びたい人のために」という欄を章末に設け、読者自身が探究を深める出発点を示しました。こうした仕掛けを通して、読者が受け身ではなく、自ら問いを立てて考える主体となることを意図しています。
第二の特色は、第2部「実践編」で、東日本大震災の被災地である福島県の学校の実践を取り上げている点です。執筆者らは「東京大学浜通りプロジェクト」として、福島の学校に足を運び、探究学習の伴走支援を続けてきました。第9章「地域の中で子どもと大人が出会う:相馬市立第二中学校の事例」や第12章「大学との協働に基づく探究学習の伴走支援:福島県立相馬総合高校の事例」では、実際に学生が関わった活動を紹介しています。さらに、第7章・第8章・第10章では、先生方に自らの実践を振り返り、その意義を語っていただきました。震災やcovid-19の流行といった困難に直面しながらも、学校現場が多様な工夫を凝らし、学びを切り拓いてきた姿を知ることで、「地域」との関わり方や探究のあり方が決して一様ではないことを実感できる構成になっています。福島という特定の地域から出発しつつも、そこで浮かび上がる問いは、日本各地や世界の教育にも通じる普遍的なテーマを孕んでいます。
本書は大学の教科書であると同時に、現場の先生方や保護者、探究学習の最新動向に関心をもつ一般読者にとっても有益な一冊です。タイトルに込めた「学生からの」という言葉には、教育学を学ぶ学生の視点から記述された本書の特徴とともに、学生として縛られてきた従来の経験則や当たり前を一歩越えていこう、という執筆者の願いが込められています。
(紹介文執筆者: 教育学研究科・教育学部 教授 大塚 類 / 2025)
本の目次
第1部 理論編
第1章 総合的な学習/探究の時間とは何か:創設から2017年の改定まで(小林尚矢・石毛ゆか)
コラム(1) 大学と総合学習
第2章 総合的な学習/探究の時間の目的と内容:学校と社会をつなぐ探究課題とは(濵本潤毅・小野裕太)
コラム(2) ケアと総合学習
第3章 総合的な学習/探究の時間の指導計画の作成:カリキュラム・マネジメント、各教科等との関連を踏まえて(中村 優・古瀬まい)
コラム(3) ICTと総合学習
第4章 総合的な学習/探究の時間の指導と評価:「カリキュラムづくり」と「真正の評価」論(佐野良介・瑞慶覧洸太)
コラム(4) 民主的な指導/評価と総合学習
第5章 総合的な学習/探究の時間の前史:過去の教育実践から現在を問う(久島祐介・佐野良介)
コラム(5) 公害学習と総合学習
第6章 総合的な学習/探究の時間の哲学:〈課題の発見・解決〉と〈自己の在り方・生き方〉の連関(小林遼也・小野裕太)
コラム(6) 「能力」と総合学習
第2部 実践編
第7章 「あの日からのおくりもの」―「あの日」を書き綴り読み合ったことから:南相馬市立原町第一小学校の事例(白木次男)
第8章 コロナ禍において地域とつながった総合学習の実践:須賀川市立白方小学校の事例(鹿又 悟)
第9章 地域の中で子どもと大人が出会う:相馬市立第二中学校の事例(長戸 光・中村 優)
第10章 主体的に取り組み、地域の魅力を発信し、未来を創造することができる総合学習の実践:福島県双葉郡楢葉町立楢葉中学校の事例(根本太一郎)
第11章 地域の大人と協働する「猪苗代学」の実践:福島県立猪苗代高校の事例(依田公華・紀村 樹)
第12章 大学との協働に基づく探究学習の伴走支援:福島県立相馬総合高校の事例(小野裕太・小林遼也)
おわりに(大塚 類)
関連情報
探究学習の取り組み
学校・地域・大学の協働による探究学習推進のためのアクションリサーチ / 大塚 類 さん、小野 裕太 さん (『探求の森』 2025年5月1日)
https://tankyu-no-mori.jp/2025/05/01/20240730-ohtsuka/

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