
書籍名
虎関師錬の禅思想の研究 日本中世禅における復古・独創
判型など
832ページ、A5判
言語
日本語
発行年月日
2026年2月27日
ISBN コード
9784831860774
出版社
法藏館
出版社URL
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本書は、日本中世に活躍した虎関師錬 (1278–1346) というひとりの禅僧の思想を研究対象とする。聖一派と呼ばれる禅宗の一派――師錬の師翁 (師の師) にあたる円爾 (1202–1280) を祖とし、日本中世、とくに京都における禅の定着に大きな役割を果たした一派である――に属する師錬は、後世、
山に富士有り、僧に錬公有り。(『本朝高僧伝』巻二十七)
―― (日本で) 山といえば富士山がある。僧といえば虎関師錬がいる。
とも評された、日本仏教史上屈指の学僧である。師錬の手になる『元亨釈書』は日本初の総合的仏教史書として名高く、その漢詩文は五山文学の先駆けとして注目を集める。
ところがこれらの輝かしい事績に目を奪われるかたちで、虎関師錬の思想を解明する研究、とくに禅思想という核心部分を解明する研究は、これまでほとんど行われてこなかった。もっとも、先行研究の欠如が師錬の思想研究の不必要性を示すわけではない。師錬の禅思想を解明することは、聖一派の思想的展開を考えることと表裏一体の関係にあり、日本における禅の定着・展開の様相を窺うことにもつながる。また、周囲の誤った禅理解へ師錬が向ける批判的眼差しを追うことで、中世禅の思想的潮流に対する理解も深まる。本書の研究は、単に師錬の禅思想の解明を志向するにとどまらず、近年活況を呈する聖一派研究の成果とあわせて、今後、聖一派、ひいては中世禅の思想的展開を解明する端緒をひらくことを期して行われている。
本書が明らかにしたのは、禅宗の教えが中国より本格的に日本へ持ち込まれはじめてから約百年を経た鎌倉後期から南北朝期、多様な禅理解がなされるなかで、伝統の源流にさかのぼりながら虎関師錬が形成した思想の内実である。すなわち、虎関師錬が、禅宗および仏教の伝統の源流を見定め、源流に近い言説・伝承を解釈しなおすことで、独自のあたらしい思想を作り上げるさま――「日本中世禅における復古・独創」――を描き出した。
描出した内容の全体像を大まかに述べれば上述のごとくであるが、本書の大半は、慎重な文献学的検討と地道な文献読解・解釈に費やされている。具体的には、第一部「虎関師錬の著作」で、思想研究に不可欠な師錬の著作『正修論』『禅戒軌』『仏語心論』の基礎的かつ批判的検討をおこない、第二部「虎関師錬の禅思想」では実際に著作を読み解きながら、禅風論 (禅の正邪をめぐる議論)・修証論 (修行と悟りの関係性をめぐる議論)・経典観 (経典の位置づけや解釈をめぐる議論)・禅戒観 (禅宗における戒律についての議論) といった多角的な観点より師錬の禅思想の基本構造を解明、そのうえで、師錬の禅思想が禅思想史上で占める位置を可能なかぎり描出する。さらに本書は、師錬の禅思想がもっとも簡潔かつ体系的に記される『正修論』の翻刻テキストと全訳注を収録している。中世禅研究や中世仏教研究、あるいは師錬の言説を扱う様々な分野の研究に、基礎的研究成果を提供していることが、本書の大きな意義である。
一方で、虎関師錬を研究対象の中心に据えながら、いわば禅の日本的展開の一端――新たに流入した禅宗の思想が解釈しなおされ、独自の展開を遂げてゆくさま――を描く本書は、思想の移入・定着・展開という巨視的観点においても、興味深い内容を含んでいるのではないかと思う。本書が読者の多様な関心に少しでも応えられるものとなっていれば幸いである。
(紹介文執筆者: 人文社会系研究科・文学部 助教 佐久間 祐惟 / 2026)
本の目次
本論
第一部 虎関師錬の著作
第一章 『正修論』の基礎的考察
第二章 『禅戒軌』と諸授戒儀軌
第三章 『仏語心論』の諸問題
第二部 虎関師錬の禅思想
第四章 虎関師錬に至る禅宗史
第五章 虎関師錬の禅風論
第六章 虎関師錬の修証論
第七章 虎関師錬の『楞伽経』理解
第八章 虎関師錬の経典観―他宗の経典解釈への批判を中心に―
第九章 虎関師錬の禅戒観
結論
附録
『正修論』翻刻
全訳注
書き下し
現代語訳
参考文献
あとがき
索引
関連情報
第6回東京大学而立賞受賞 (東京大学 2025年)
https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/research/systems-data/n03_kankojosei.html
シンポジウム:
【公開国際シンポジウム】 「語りえぬもの」を語る —グローバル時代の禅の言葉と翻訳 (京都大学人文科学研究所 2025年2月15日)
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