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バーガンディーの表紙にミャンマーの写真4枚

書籍名

現代ミャンマーにおける社会支援の人類学 「協会(アティンアポェ)」をつくる

著者名

藏本 龍介、 土佐 桂子 (編著)

判型など

276ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2026年3月31日

ISBN コード

9784750360928

出版社

明石書店

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現代ミャンマーにおける社会支援の人類学

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ミャンマーというと、近年は軍事クーデターや内戦、難民問題といったニュースを思い浮かべる人が多いかもしれません。しかしそうした激動のなかで、人びとは日々、どのように他者を支え、社会を維持しているのでしょうか。本書は、現代ミャンマーの人びとが、国家や国際NGOに依存するのではなく、自分たちの手で支え合いの仕組みをつくりだしてきた営みを、文化人類学の立場から明らかにする論集です。
 
私たちが注目したのは、ミャンマーで広く見られる「協会 (アティンアポェ)」と呼ばれる組織です。その活動は、葬式支援、医療、教育支援、災害援助、宗教や文化の保護など、驚くほど多岐にわたります。こうした協会は、一見すると、日本のNPOや欧米のNGOに似ていますが、西洋由来の「市民社会」論の枠組みだけでは十分に捉えきれません。というのも、その背景には、上座部仏教世界に深く根ざした「布施経済制度」、すなわち人びとから寄付を集め、管理し、必要な人びとへと分配していく独特の仕組みがあるからです。布施は単なる寄付にとどまらず、宗教的実践であると同時に、人びとを結びつけ、組織を支え、社会的な支援を成り立たせる基盤でもあるのです。
 
本書の独自性は、こうした協会の実態に複数の角度から総合的に迫った点にあります。第1部では、仏教協会の歴史的展開、行政資料にもとづく全国の協会の分布、「政府系NGO」の実態を検討します。第2部では、葬式支援協会、瞑想センター、ムスリムの社会支援組織、シャンやタアンといった少数民族の組織など、宗教的・民族的背景の異なる多様な事例を、各執筆者が長年の現地調査にもとづいて描き出します。そこから見えてくるのは、支援とは単に「困っている人を助ける」行為ではなく、功徳や倫理、共同性、地域社会の秩序と深く結びついた実践でもあるということです。
 
本書は、現在のミャンマー情勢を考えるうえでも重要な意味をもちます。2021年の軍事クーデター以降、抗議運動の負傷者を支援したことで弾圧を受けた協会もあれば、活動の停止や縮小を余儀なくされた協会もあります。それでもなお、人びとが支え合い、自発的に「公共」を担おうとする実践そのものは消えていません。こうした協会の営みは、ミャンマー社会に根づく連帯の力を改めて浮かび上がらせているのです。
 
読者のみなさんに伝えたいのは、現地の人びとの生活世界に即して考えることで、「市民社会」「NGO」「支援」といった一見自明な概念を根本から問い直すことができる、という文化人類学、ひいては人文社会科学の醍醐味です。遠いミャンマーの「協会」を知ることは、日本社会における支え合いのかたちを考え直すことにもつながるはずです。本書がそのための入り口となれば幸いです。
 

(紹介文執筆者: 東洋文化研究所 教授 藏本 龍介 / 2026)

本の目次

 用語集
 
第1部 協会の概要
 
第1章 序論[藏本龍介]
 1.はじめに
 2.布施経済制度
 3.ミャンマーの市民社会組織研究
 4.本書の意義
 5.本書の構成
  参照文献
 
第2章 ミャンマーにおける仏教協会の歴史[藏本龍介]
 1.はじめに
 2.仏教協会の登場
 3.仏教協会の広がり
 4.仏教協会から福祉協会へ
 5.おわりに
  参照文献
 
第3章 登録された「協会」の分布と特徴[土佐桂子]
 1.はじめに
 2.『地域関連事項』の特色と使用における留意点
 3.登録済み協会の概要
 4.組織種別語にみる全国的傾向
 5.おわりに
  行政資料/参照文献/インターネット資料
 
第4章 ミャンマーにおける「政府系NGO」[飯國有佳子]
 1.はじめに
 2.5つの「政府公認NGO」とその歴史
 3.「郡報告書」における5つの「政府公認NGO」
 4.先行研究における「政府系NGO」の捉え方
 5.おわりに
  行政資料/参照文献/インターネット資料
 
第2部 事例編
 
第5章 国家と市民社会のはざまからみえるもの――地域社会における政府公認NGOと協会のガバナンス[飯國有佳子]
 1.はじめに
 2.民主移行期におけるミャンマーのガバナンスと政府系NGO
 3.調査地と社会組織(ルーフムイェイ・アティンアポェ)
 4.ピィ市における補助消防団とその活動
 5.ピィ郡の協会(アティンアポェ)の活動
 6.おわりに
  行政資料/参照文献/インターネット資料
 
第6章 功徳と倫理のあいだ――ミャンマー葬式支援協会の展開[土佐桂子]
 1.はじめに
 2.葬式支援協会の設立――功徳以前の揺らぎ
 3.葬式支援協会の普及
 4.地方都市部の葬式支援協会
 5.ボランティアを通じて確立されていく倫理的実践
 6.おわりに
  行政資料/参照文献
 
第7章 「協会」としてのダバワ瞑想センター[藏本龍介]
 1.はじめに
 2.ダバワ瞑想センター概要
 3.センター内部の様子
 4.ダバワ瞑想センターにおける「布教」
 5.「善行」概念が形づくる人間関係
 6.ダバワ瞑想センターの組織運営
 7.おわりに
  参照文献
 
第8章 ムスリム社会支援組織――同胞のための活動と地域社会に開かれた貧困者支援[斎藤紋子]
 1.はじめに
 2.ムスリム組織の概要と特徴
 3.ムスリム運営の葬式支援協会
 4.貧困者支援のための組織活動――ムスリム支援を越えて
 5.おわりに
  参照文献
 
第9章 シャン文芸文化協会考[髙谷紀夫]
 1.本章の射程――なぜシャン文芸文化協会に注目するのか?
 2.SLCA組織基本規約から――全国・ムセー・ヤンゴン・マンダレー
 3.タイ・リエン(シャン・ニー)SLCAの特異性
 4.社会福祉活動の支援基盤としてのSLCAの事例
 5.シャン系の人々がめざす自助支援組織とはどのようなものか?
  行政資料/法令資料/参照文献
 
第10章 少数民族地域の貧困者支援の再編――タアン社会における「支援」と「協会」[生駒美樹]
 1.はじめに
 2.生業を基盤とする互酬的支援
 3.協会による支援
 4.越境的な支援
 5.おわりに
  行政資料/参照文献
 
 あとがき[土佐桂子]
 
 編著者・執筆者紹介
 索引
 

関連情報

自著解説:
著者からの紹介 (東京大学東洋文化研究所ホームページ)
https://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/news/pub2603_kuramoto.html
 
東京外大教員の本 (東京外語大学ホームページ 2025年)
https://www.tufs.ac.jp/tufstoday/books/2025/26033102.html

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