なぜ感染で死ぬのか? 「利他的死による感染防御」の検証
細菌やウイルスのような微生物の感染で、重い病気になり、時には死に至ることまであるのは、なぜなのでしょうか。感染している生き物(ホスト)を殺してしまうと、微生物は自分たちも増えられなくなってしまうのに。
東京大学新領域創成科学研究科の小林一三教授らは、ホスト側に着目して次のように考えました。普通、ある感染個体で増えた病原体は、他の個体に次々と感染を起こします(図左)。しかし、感染された個体がすぐさまその病原体もろとも死ぬと、この二次感染は防がれます(図右)。
この「利他的死による感染防御」仮説を、このグループは、1億ものホスト個体を使った大集団感染実験によって実証しました。実験では、ホストとして大腸菌、病原体としてそれに感染するウイルスが使われました。実験結果は、進化ゲーム型の数理モデルにもとづく大規模なシミュレーションによって、追認できました。シミュレーションでは、1億の升目をもつ二次元の格子で感染の流行が再現されました。
この結果は、病原体の高い毒性を考える上で、ホスト側の因子の重要性を示しています。この系は、感染の様々な問題を解析するのに役立つでしょう。
論文情報
Masaki Fukuyo, Akira Sasaki, Ichizo Kobayashi,
“Success of a suicidal defense strategy against infection in a structured habitat”,
Scientific Reports (オンライン)2012年1月30日(日本時間)
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