ヤーンテラー相転移を示さない銅酸化物磁性体 乱れに強いスピンと軌道の量子液体の形成
超伝導に代表される量子液体は、基礎的にも応用上においても重要な研究対象となっています。これまで磁性体における量子液体状態は 乱れに弱いと考えられてきました。今回、東京大学物性研究所 (所長 家 泰弘) 中辻 知准教授の研究グループは、名古屋大学、大阪大学極限量子科学研究センター、カリフォルニア大学、日本原子力研究開発機構、琉球大学、バンデュン工科大学、米国国立標準技術研究所、メリーランド大学、ジョンズ・ホプキンス大学と共同で、構造に乱れを伴った銅酸化物の磁性体において、電子の持つ自由度であるスピンと軌道の協力現象によりそれらが低温まで秩序化しない新しい量子状態を形成している事を発見しました。これは銅酸化物においてヤーンテラー相転移を示さない初めての例となります。低温で乱れに強い一種の量子液体状態を形成していると考えられ、今後の物質・材料開発に新たな指針を与えると期待されます。
論文情報
S. Nakatsuji, K. Kuga, K. Kimura, R. Satake, N. Katayama, E. Nishibori, H. Sawa, R. Ishii, M. Hagiwara, F. Bridges, T. U. Ito, W. Higemoto, Y. Karaki, M. Halim, A. A. Nugroho, J. A. Rodriguez-Rivera, M. A. Green, C. Broholm,
“Spin-orbital short range order on a honeycomb based lattice”,
Science doi: 10.1126/science.1212154.
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