環境化学物質が子どものこころの健康に影響 マウスで実証・・ダイオキシンが高次脳機能をかく乱
東京大学大学院医学系研究科 疾患生命工学センター 健康環境医工学部門の遠藤俊裕大学院生、掛山正心助教、遠山千春教授は、環境化学物質が脳発達に与える影響を動物実験により明らかにしました。ダイオキシンは、環境・食品中に広く存在している残留性有機汚染物質(POPs)の一種です。ダイオキシンの母胎への取り込みが、生まれてきた子どもの脳発達に影響を及ぼすことが示唆されていますが、そのメカニズムは十分解明されていません。同部門を中心とした研究グループは、マウスを集団で飼育しながら行動観察を行う新規の行動試験技術を開発しました。その結果、微量のダイオキシンを投与された母マウスから生まれたマウスでは、成熟後において状況変化への適応が遅く、かつ社会的競争状況で活動レベルが低下することが分かりました。さらに、こうした行動異常の背景として、高次の脳機能をつかさどる前頭前皮質と扁桃体において脳の神経活動のアンバランスが生じていることを突き止めました。
今回の結果は、そのままヒトには適用できませんが、母体・母乳から体内に取り込んだ微量の化学物質が、子どもの「こころの健康」の発達に影響を及ぼす可能性を示唆しており、今後より詳しく検討していく必要性があります。
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論文情報
Toshihiro Endo, Masaki Kakeyama, Yukari Uemura, Asahi Haijima, Hiroyuki Okuno, Haruhiko Bito, Chiharu Tohyama,
“Executive Function Deficits and Social-Behavioral Abnormality in Mice Exposed to a Low Dose of Dioxin In Utero and via Lactation”,
PLOS ONE Online Edition: 2012/12/13AM7:00 (Japan time), doi: 10.1371/journal.pone.0050741.
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