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神経細胞の突起の“伸び”と“つながりやすさ”は別々に制御される 細胞骨格制御蛋白質DCLKの新しい機能を発見

掲載日:2013年2月27日

神経細胞は、樹状突起と軸索という二種類の突起をつくり、長く伸びた二種類の突起の間で接着が起こり「シナプス」と呼ばれる構造を形成します。シナプス間の情報のやりとりにより機能的な神経回路が発達期に形成されます。突起の伸長とシナプスの形成の両者は共に回路の形成を促進しますが、突起が十分伸びた後でシナプスが形成される必要があり、両者のバランスをきちんと調節することが必要です。

神経ネットワーク形成は軸索と樹状突起という二種類の突起が伸長し、シナプスを介したネットワークを形成することにより進行します © Shigeo Okabe
DCLK蛋白質は樹状突起の先端に濃縮し、この部分で突起が伸びる事を助けます。一方でDCLKがあることでこの部分は軸索とシナプスを形成することから逃れ、動的な状態を維持することができます。緑:DCLK蛋白質の分布、マジェンタ:樹状突起マーカーのMAP2

東京大学大学院医学系研究科神経細胞生物学分野 岡部繁男教授らの研究グループでは、脳の発達障害に関連する分子であるDCLKが突起の先端に局在して突起形成を促進することを見出しました。一方でDCLK分子はシナプス内にも入り込み、突起先端でシナプスの形成が過剰に起こることを抑制することも見出しました。DCLKはN末端に微小管結合ドメイン、C末端に蛋白質のリン酸化を行うドメインを持つキメラ分子ですが、N末端ドメインが突起を伸ばし、C末端ドメインがシナプス形成を阻害する事で相反する作用が生じることもわかりました。

今回の研究により神経突起の伸長とシナプス形成という二つの神経回路形成に重要な出来事のバランスが一個の分子の二つのドメインで制御されていることを初めて示しました。

本研究成果は、2013年2月5日に科学雑誌「Nature Communications」のオンライン版で公開されました。なお、本研究は、文部科学省脳科学研究戦略推進プログラムの一環として、科学研究費補助金などの助成を受けて行われました。

プレスリリース [PDF]

論文情報

Euikyung Shin, Yutaro Kashiwagi, Toshihiko Kuriu, Hirohide Iwasaki, Teruyuki Tanaka, Hiroyuki Koizumi, Joseph G Gleeson, and Shigeo Okabe,
“Doublecortin-like kinase enhances dendritic remodeling and negatively regulates synapse maturation”,
Nature Communications Online Edition: 2012/02/05 (Japan time), doi: 10.1038/ncomms2443.
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大学院医学系研究科 神経細胞生物学分野

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