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磁性体中を伝搬する磁気モノポール 磁気モノポールの量子ダイナミクスの発見

掲載日:2013年7月23日

© Kenta Kimura,
磁気モノポールの量子ダイナミクスを表した概念図

磁石は必ずN極とS極がペアを形成することが知られてきました。しかし、近年の理論的研究により、特殊な磁性体ではその素励起がN極とS極のみの磁石(磁気モノポール)のように振る舞うことが分かってきました。特に、スピンアイスと呼ばれる磁性体においては、熱揺らぎの効果として現れる点欠陥が磁気モノポールとして振る舞うことが実験的に確認されています。しかし、この磁気モノポールは電子のような波動性を持たず、ランダムな熱拡散的運動を行い低温で凍結してしまいます。

今回、東京大学物性研究所の研究チームは、名古屋大学、ジョンズ・ホプキンス大学、オークリッジ国立研究所と共同で開発したPr2Zr2O7という新しいスピンアイス磁性体において、磁気モノポールが半導体中の電子のようにコヒーレントに伝搬することを見出しました。量子的波動性を持つ磁気モノポールが見つかったのは本研究が初めてであり、磁性体における磁気モノポールの理解に大きく貢献する可能性があります。さらに、この磁気モノポールは電流を必要とせずにスピンの情報を運べる可能性があるため、よりエネルギーの損失が少ないスピントロニクスの構築に繋がると期待されます。

プレスリリース (JST)

論文情報

K. Kimura, S. Nakatsuji, J-J. Wen, C. Broholm, M. B. Stone, E. Nishibori, H. Sawa,
“Quantum fluctuations in spin-ice-like Pr2Zr2O7”,
Nature Communications Online Edition: 2013/06/17 (Japan time), doi: 10.1038/ncomms2914.
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