細胞内取り込みのメカニズムを解明 分子モータータンパク質KIF13Bの役割
細胞による細胞外の物質の取り込みは、例えば、血中コレステロールの輸送担体であるLDLやHDL(low/high density lipoprotein、低/高密度リポタンパク)の除去や、体内に侵入した細菌などの排除において重要な役割を果たす。この取り込みの過程にはクラスリンタンパク質で囲まれたクラスリン被膜小胞を介したものとカベオリンタンパク質を含むカベオラと呼ばれる小窪を介したものがあり、これまでクラスリン被膜小胞を介したものについては詳しく調べられてきたが、カベオラを介したものについてはほとんど解っていなかった。
今回、東京大学大学院医学系研究科の廣川信隆特任教授、金井克光准教授らの研究グループは、細胞内で物質の輸送を担うタンパク質(分子モーター)の一種、KIF13BがLDLやHDLを細胞内に取り込む膜受容体のLRP1(lipoprotein receptor related protein-1、リポタンパク質受容体関連タンパク質-1)とカベオラを結び付けることでLRP1のカベオラを介した細胞内取り込みを促進することを見出した。KIF13Bは肝臓に多く、肝細胞の細胞膜上、それも血流と直接接する洞様毛細血管側の細胞膜上に観察された。KIF13Bを欠損するよう遺伝子が改変されたマウスでは血中コレステロールの上昇、KIF13Bを欠損した細胞ではLDLの取り込みの低下がみられた。さらにKIF13BがLRP1とカベオラをそれぞれhDLG1とutrophinという細胞膜下にあるタンパク質を介して結びつけ、これらの結合のいずれもがKIF13BによるLRP1の取り込みに必須であることを見出した。これらの結果から、KIF13BがLRP1とカベオラを結びつけることで細胞内への血中コレステロールの取り込みを促進するという一連の過程が明らかになった。
本研究の成果は、カベオラを介した細胞内取り込みのメカニズムを解明する先駆けであり、高コレステロール血症や悪性腫瘍といったカベオラが関わるさまざまな疾患の治療法開発に全く新しい方向性を提供すると期待されます。
論文情報
Y. Kanai, D. Wang, N. Hirokawa,
“KIF13B enhances the endocytosis of LRP1 by recruiting LRP1 to caveolae”,
Journal of Cell Biology, vol. 204, no. 3, p. 395-408, doi: 10.1083/jcb.201309066.
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