哺乳類において雄効果フェロモンの発見 雌ヤギの生殖制御中枢を促進する嗅覚分子
フェロモンは、「ある個体が放出し、同種の他個体が受容したときに特定の行動や生理的変化を誘起する物質」で、嗅覚系を介した同種間動物のコミュニケーションに重要な役割を果たしています。哺乳類では、「行動を制御するフェロモン(リリーサーフェロモン)」は数種類が同定されており、その作用機構も徐々に明らかにされてきましたが、「内分泌系を制御するフェロモン(プライマーフェロモン)」に関してはいまだに確実な分子同定が行われておらず、作用機構についてもほとんど不明でした。
今回、東京大学大学院農学生命科学研究科の森裕司教授と武内ゆかり准教授を中心とする研究グループは、ヤギにおいて非繁殖期の雌が雄の匂いを感じることで排卵と発情が誘起される「雄効果」に着目し、生殖制御中枢に促進的に作用するフェロモンとして、4-ethyloctanalという新奇の揮発性化合物を同定しました。
雌における生殖制御中枢活動の促進を明瞭に示すフェロモンの同定は、哺乳類では本成果が初めてです。今後は、今回得られた知見をもとに、フェロモンを用いた家畜の繁殖制御方法の開発などへの展開が期待されます。
論文情報
Ken Murata, Shigeyuki Tamogami, Masamichi Itou, Yasutaka Ohkubo, Yoshihiro Wakabayashi, Hidenori Watanabe, Hiroaki Okamura, Yukari Takeuchi, and Yuji Mori,
“Identification of an Olfactory Signal Molecule that Activates the Central Regulator of Reproduction in Goats”,
Current Biology,Online Edition: 2014/2/28 , doi: 10.1016/j.cub.2014.01.073.
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