ARTICLES

English

印刷

頭骨の発生と脳の進化 頭部の発生タイミングは脳サイズの進化を反映する

掲載日:2014年4月17日

地球上には約6000種の哺乳類が陸、海、空、地中とさまざまな空間で暮らしています。この生態的な多様性を反映して、哺乳類の形態も実に多様であり、このような多様性が生み出された背景の一つに、哺乳類の進化の過程で胎子期の成長様式が著しく改変されてきたことが考えられます。しかし、マウスやモルモットといった実験動物や、ウシやブタといった家畜動物以外の哺乳類は母胎の中でどのように成長(発生)が進んでいくのかはほとんど知られておらず、哺乳類において発生がどのように種間で異なり、その発生の差異が最終的にどのような種間の形態差につながるのかは分かっていませんでした。

© Daisuke Koyabu.
さまざまな哺乳類のの胎子のCT画像。左上から順にハリネズミ、イノシシ、シカ、コウモリ、サル、ヒヨケザル。

今回、東京大学総合研究博物館マクロ先端研究発信グループの小薮大輔特任助教を中心とした日本、スイス、ドイツ、アルゼンチン、韓国、ベトナムの国際研究グループは、地球上の代表的な哺乳類を網羅する102種もの膨大な哺乳類の胎子標本を各国から収集し、哺乳類における頭蓋骨の形成タイミングとその多様性の進化は、哺乳類の脳の大きさの進化(大脳化)と強く結びついていることを明らかにしました。具体的には、脳が体重と比べて相対的に大きい種ほど脳を覆っている骨片の形成されるタイミングも早いことが分かりました。また、ヒトの頭蓋骨の発生が他の哺乳類と比べてどのように違うのかが明らかになりました。

本成果を踏まえて、今後は骨形成のタイミングの改変を司る遺伝子的基盤を特定し、進化の歴史のなかでヒトの脳にはどのような遺伝子基盤の改変が起き、どのように頭部の発生スケジュールが変更され、このように大きな脳をもつに至ったのかも明らかになってゆくと期待されます。

本研究成果は4月4日(金)にネイチャー・コミュニケーションズ誌に掲載されました。

論文情報

Daisuke Koyabu, Ingmar Werneburg, Naoki Morimoto, Christoph P.E. Zollikofer, Analia M. Forasiepi, Hideki Endo, Junpei Kimura, Satoshi D. Ohdachi, Son Nguyen Truong, Marcelo R. Sanchez-Villagra,
“Mammalian skull heterochrony reveals modular evolution and a link between cranial development and brain size”,
Nature Communications Online Edition: 2014/4/4, doi: 10.1038/ncomms4625.
論文へのリンク

リンク

総合研究博物館

総合研究博物館 マクロ先端研究発信グループ

小薮大輔のホームページ

アクセス・キャンパスマップ
閉じる
柏キャンパス
閉じる
本郷キャンパス
閉じる
駒場キャンパス
閉じる