ハチドリが甘味を感知するシステムの進化 花蜜食への適応

動物の味覚や嗅覚などの感覚を受容するシステムは、新しい環境に適応して進化していくことがあります。例えば、鳥類は進化の過程で甘味物質を感知するセンサータンパク質(甘味受容体T1R2-T1R3)を失っていることが知られています。しかし、鳥類の中にはハチドリのように花の蜜を主食とするものもあり、甘味受容体のないハチドリがどのように糖の味を感知しているのかは、これまで分かっていませんでした。
そこで、東京大学大学院農学生命科学研究科の戸田安香研究員および三坂巧准教授らの研究グループは、ハーバード大学等と共同で鳥類の味覚受容体を解析し、脊椎動物において一般的に旨味物質を感知するセンサータンパク質(旨味受容体T1R1-T1R3)が、ハチドリにおいては甘味物質の受容体として機能していることを明らかにしました。更に、T1R1-T1R3が認識する甘味物質の特徴とハチドリが実際に嗜好性を示す味物質とが一致することを見出しました。
本成果から、ハチドリが近縁種である昆虫食のアマツバメから分岐した後に、旨味受容体の機能が変化して花の蜜を利用する能力を獲得し、この能力がハチドリの大規模な種の拡散に貢献したことが示唆されます。
論文情報
Baldwin, M.W., Toda, Y., Nakagita, T., O’Connell, M.J., Klasing, K.C., Misaka, T., Edwards, S.V., Liberles, S.D.,
“Evolution of sweet taste perception in hummingbirds by transformation of the ancestral umami receptor”,
Science 345 (2014): 929-933, doi: 10.1126/science.1255097.
論文へのリンク