野生メダカからひも解く人類進化 配偶者獲得と個体生存のトレードオフが性差の程度を決める

世界各地に住んでいる人々には髪の色や顔貌などさまざまな姿カタチの違いが見られます。性差という男女の違いにも地域差があります。一般にアフリカやヨーロッパと比べて、アジア人は性差が小さいと言われています。しかし、なぜそうなるのか、どのようにそうなるのかといった点に関する分子進化メカニズムは明らかではありません。
今回、東京大学大学院新領域創成科学研究科先端生命科学専攻の三谷啓志教授、河村正二教授、片岡宏誌教授、尾田正二准教授、北里大学医学部解剖学研究室の勝村啓史博士研究員と太田博樹准教授と統計数理研究所は、野生のメダカ集団を用いて、メダカの雌雄の地域差が薬物代謝酵素の遺伝的バリエーションに影響されている証拠を明らかにしました。さらにこれら雌雄の地域差が、チャールズ・ダーウィンの提唱した“自然淘汰”と“性淘汰”がそれぞれ働く“生存のための薬剤耐性”と“繁殖のための配偶者獲得”のトレードオフの上に成り立っている可能性を示しました。
人類においても薬物代謝酵素の遺伝的バリエーションと男女の違いの地域差とにメダカと似たパターンが観察されることから、今回の結果は、人類の男女の違いに観察される地域差もこうしたトレードオフにもとづいて形成されてきた可能性を示唆しています。
本研究成果は英国王立協会紀要「Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences」に掲載されました。
論文情報
Takafumi Katsumura, Shoji Oda, Shigeki Nakagome, Tsunehiko Hanihara, Hiroshi Kataoka, Hiroshi Mitani, Shoji Kawamura and Hiroki Oota,
“Natural allelic variations of xenobiotic-metabolizing enzymes affect sexual dimorphism in Oryzias latipes”,
Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences Online Edition: 2014/11/15 (Japan time), doi: 10.1098/rspb.2014.2259.
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