細菌の酵素による巧みな合成の技 複雑な炭素骨格を一気に組み立てる酵素

テルペン化合物は、医薬品や芳香剤などの原料として重要な天然化合物を含んでいます。その一種であるサイクロオクタチンは、放線菌、ストレプトマイセス メラノスポロファシエンスMI614-43F2株によって生産され、抗炎症作用を示します。サイクロオクタチンの炭素骨格は、テルペン環化酵素、CotB2が炭素20個の直鎖状化合物、ゲラニルゲラニル2リン酸(GGDP)に作用して、5員環と8員環と5員環が融合した3つの環構造と6個のキラル中心を含むサイクロオクタット-9-エン-7-オールに変換することで構築されると推定されてきました。しかしながら、CotB2の反応機構については実証されてはいませんでした。
東京大学生物生産工学研究センター、大阪市立大学、微生物化学研究所の共同研究グループは、CotB2の働きを詳しく調べることで、CotB2が進化の過程で獲得した巧みな反応機構を解明することに成功しました。CotB2は、GGDPのジリン酸基の解離によって反応を開始した後、ヒドリドの移動と炭素-炭素結合の組み換えを介して、サイクロオクタット-9-エン-7-オールを合成することが分かりました(図)。
生物活性を示す多様なテルペン化合物を創製するための新しい生体触媒の開発につながると期待されます。
論文情報
An Unusual Terpene Cyclization Mechanism Involving a Carbon-Carbon Bond Rearrangement", Angewandte Chemie International Edition Online Edition: 2015/2/17 (Japan time), doi:10.1002/anie.201411923.
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