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カルボン酸を目印に炭素骨格を伸長する反応を開発 酢酸からアミノ酸や医薬候補化合物を合成可能に

掲載日:2015年6月8日

東京大学大学院薬学系研究科の金井求教授、清水洋平助教らの研究グループは、医薬品や天然物の分子構造中に含まれることの多いカルボン酸のみを変換する新たな技術の開発に成功しました。

医薬品や天然物などの複雑な構造を有する有機分子を直接的に変換する反応は、化合物の性質をさまざまに調節できる可能性を秘めていますが、思い通りの位置に思い通りの変換を施すことは困難です。

同研究グループはカルボン酸の酸素原子と相性の良い高いホウ素触媒を用いることにより、抗炎症薬であるロキソプロフェンやインドメタシン、植物ホルモンであるジャスモン酸などに含まれるカルボン酸部位から炭素骨格のみを伸ばすことのできる技術を開発しました。 今回の方法と同様の変換を施す従来の方法とでは、多量の金属を用いるなどの厳しい条件を必要とするため化合物内の変換を想定しない位置で反応が進行してしまう副反応が問題となり、医薬品などの複雑な構造を有する化合物に従来の方法を適用することは困難でした。また従来法では、変換を想定しない位置での反応が進行しないように、そのような位置をあらかじめ反応しにくい構造に変換しておく「保護」という余分な工程を経る必要がありました。それに対して今回開発した方法では、わずかな量のホウ素触媒でカルボン酸のみを活性化できるため、「保護」を必要とせず、さらに、金属も必要ない穏和な条件にて変換できることがわかりました。

同様のホウ素触媒を用いることで、私たちの食卓でもよく目にするお酢の主成分である酢酸からβアミノ酸と呼ばれる特殊なアミノ酸を多種合成することにも成功しました。従来のβアミノ酸合成法と比較して、合成にかかる工程数や廃棄物が少ないためコスト削減や環境負荷の低減につながると期待されます。

医薬品や候補化合物にはカルボン酸構造を有するものが多数存在するため、この構造のみを変換することのできる技術は、新規の医薬品を創出するための強力な武器になると期待されます。

論文情報

Yuya Morita, Tomohiro Yamamoto, Hideoki Nagai, Yohei Shimizu, Motomu Kanai, "Chemoselective Boron-Catalyzed Nucleophilic Activation of Carboxylic Acids for Mannich-Type Reactions", Journal of the American Chemical Society Online Edition: 2015/05/27 (Japan time), doi:10.1021/jacs.5b04175.
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