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根のバリアを形成するスイッチ カスパリー線の形成はたった一つの遺伝子により制御される

掲載日:2015年7月21日

© 2015 神谷 岳洋カスパリー線は根の内皮細胞と内皮細胞の間にリグニンが沈着した構造体です。MYB36は、リグニンの合成に必要な遺伝子の発現とリグニンの合成に必要な装置を正しい位置に配置させる遺伝子の発現を活性化します。

カスパリー線形成とMYB36の役割
カスパリー線は根の内皮細胞と内皮細胞の間にリグニンが沈着した構造体です。MYB36は、リグニンの合成に必要な遺伝子の発現とリグニンの合成に必要な装置を正しい位置に配置させる遺伝子の発現を活性化します。
© 2015 神谷 岳洋

東京大学大学院農学生命科学研究科の神谷岳洋講師とスコットランドのアバディーン大学のデイビット・ソルト教授らの研究グループは、植物の根の栄養吸収に重要な役割をはたしている特殊な構造(カスパリー線)を形成するスイッチを発見しました。

カスパリー線は、根の内皮細胞と内皮細胞の間の特定の場所に木材の主成分であるリグニンが蓄積した構造体です。 細胞間の隙間を埋めることにより、不要な物質が植物体内に入るのを防いだり、また、一度吸収した栄養が根から漏れ出るのを防ぐ機能を持っています。カスパリー線は1865年にロバート・カスパリーにより発見された構造で、複数のタンパク質がその形成に関与していることが示唆されていましたが、その全容はわかっていませんでした。

今回、研究グループは葉の元素含量が異なるシロイヌナズナの変異型株を取得し、カスパリー線形成にMYB36と呼ばれるたった一つの転写因子が関与していることを明らかにしました。MYB36はカスパリー線形成に関与する複数の遺伝子の発現を同時にオンにすることにより、局所的なリグニン蓄積を可能にし、カスパリー線を形成していることを発見しました。さらに、MYB36を本来カスパリー線が形成されない細胞で発現させることにより、カスパリー線のような構造を形成させることに成功しました。以上の結果は、MYB36がカスパリー線形成のスイッチであることを示すものです。

本成果は、カスパリー線が植物の栄養吸収に果たす役割やその制御機構の理解、効率的に栄養を吸収する作物の作出技術に大きく貢献することが期待されます。

プレスリリース

論文情報

Takehiro Kamiya, Monica Borghi, Peng Wang, John M. Danku, Lothar Kalmbach, Prashant S. Hosmani, Sadaf Naseer, Toru Fujiwara, Niko Geldner, David E. Salt, "The MYB36 transcription factor orchestrates Casparian strip formation", Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America Online Edition: 2015/6/30 (Japan time), doi:10.1073/pnas.1507691112.
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