森林の機能やサービスへの世界的な関心の高まり 世界森林資源評価2015の解析から明らかに
東京大学農学生命科学研究科三浦覚特任准教授は、世界3か国2国際機関の研究者らを率いて国際連合食糧農業機関(FAO)による世界森林資源評価(GFRA)2015のデータを解析し、水土保全機能や生態系サービスの指定を報告する国の数は過去四半世紀一貫して増加し続けていることを明らかにしました。これは、近年の森林の多面的機能への社会的な関心の高まりを示唆する結果です。
GFRAはFAOが1948年から5~10年おきに世界の森林資源を評価して発行している報告書です。初期には主に木材資源量調査を目的としていましが、1970年代以降はそれを拡張して森林の多面的機能も調査対象とするようになりました。
今回、GFRA2015のデータを解析には、世界で13の研究チームが参加しました。その中で、世界の森林面積は1990年の4,128百万ヘクタール(ha)から2015年の3,999百万haへと3%減少したことが明らかにされました。2010年から2015年にかけての森林減少率は、1990年代に比べて約半分に低下しましたが、依然として減少が続いています。三浦特任准教授らは、そのうち水土保全機能の維持と生態系サービスの提供に指定されている世界の森林面積は、1990年の8.21億haと9.16億haから2015年の10.02億haと10.18億haへと増加し、世界の全森林面積の25.1%と25.4%を占めていることを明らかにしました。水土保全機能や生態系サービスの指定を報告する国の数が25年間一貫して増加し続けたことが、それらを保全する森林面積の増加に貢献しています。これは、近年の森林の多面的機能への社会的な関心の高まりを示すものです。
「森林は、世界の陸地面積の29%、地球の表面積の8%を覆っているにすぎませんが、人々の暮らしを支え、気候変動の脅威の緩和に重要な役割を果たしています。今回発表したGFRA2015を網羅する共同解析は、森林・林業分野における非常に重要な成果といえます」と三浦特任准教授は説明します。「GFRA2015の解析特集の緒言と本編を含む13編の論文は、世界の環境問題に関心を持つすべての科学者、森林経営者、NPO、そして政策決定者に新たな着想を促す森林と林業に関する知識の宝庫というべき貴重なデータです」。
論文情報
Protective functions and ecosystem services of global forests in the past quarter-century", Forest Ecology and Management 352, 35-46, doi:10.1016/j.foreco.2015.03.039.
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