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複雑な天然物を生体内で合成する酵素の仕組み インドール化合物にプレニル鎖を付加する酵素の制御に向けて

掲載日:2016年3月9日

© 2016 Ikuro Abe.二つのプレニル基転移酵素(緑、ピンク)はインドール環の特定の位置に様々な長さのプレニル鎖を転移することができます。

テルペンインドールアルカロイドを合成する酵素の結晶構造
二つのプレニル基転移酵素(緑、ピンク)はインドール環の特定の位置に様々な長さのプレニル鎖を転移することができます。
© 2016 Ikuro Abe.

東京大学大学院薬学系研究科の森貴裕助教と阿部郁朗教授らの研究グループは、複雑な天然物を生体内で合成する酵素がプレニル基を付加するメカニズムとその酵素の立体構造を明らかにしました。本成果は、酵素反応を用いた分子デザインと創薬への応用が期待されます。

自然界には様々な構造の化合物があり創薬の材料として探索されています。その中でもテルペンインドールアルカロイドと呼ばれる化合物群は、私たちには腐敗臭として認識されるインドールに5の倍数の炭素から構成されるプレニル基が付加した中間体を経て生体内で合成され、多様な生理活性を持つことが特徴です。このような複雑な構造を含む天然化合物は生物の持つ酵素によって合成され、これらの酵素はユニークな反応を仲介する生体触媒として注目されています。しかし、インドールにブレニル基を付加する酵素の反応メカニズムには不明な点が残されていました。

今回、研究グループはインドールに異なる長さのプレニル基を、通常の反応とは異なる「逆転位」(リバースプレニレーション)という方法で付加させる二つの酵素の結晶構造を得ることに成功し、そのメカニズムを解明しました。また、二つの酵素の構造を比較した結果、プレニル基の長さを制御するメカニズムも明らかにしました。加えて、これらの酵素は炭素数25の長さまでの基質を用いたブレニル化反応を触媒できることを発見しました。

「インドールに対してこれほど長い炭素鎖の付加反応を触媒できるのは、インドールプレニルトランスフェラーゼとしては異例な特徴です」と森助教は話します。「プレニル化は天然物の活性を向上させるために重要な反応として知られているため、今回の成果は生体触媒によるドラッグデザインへの貢献、例えば、有機合成では困難な反応などに本酵素を用いることが期待されます」と続けます。

論文情報

Takahiro Mori, Lihan Zhang, Takayoshi Awakawa, Shotaro Hoshino, Masahiro Okada, Hiroyuki Morita, Ikuro Abe, "Manipulation of prenylation reactions by structure-based engineering of bacterial indolactam prenyltransferases", Nature Communications Online Edition: 2016/03/08 (Japan time), doi:10.1038/ncomms10849.
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