福島原子力発電所事故がもたらす農畜水産物等への影響 最初の3年間
東京大学大学院農学生命科学研究科の中西友子特任教授を中心とした研究グループの、福島第一原発事故の調査結果についての2冊目の本です。福島の汚染地域はそのほとんどが農業関連であることから、同研究科の40-50人の教員が、事故直後から原子力発電所から放出された放射性物質の動態を調べ始めました。
研究グループは、土壌、食性、動物、魚や森林などを含む広い分野の専門家であり、それぞれの専門に基づくチームを作り、事件直後から即、汚染地域に入り込み調査研究を開始し、現在でもその活動を継続しています。
2013年に発刊した1冊目の後に得られたデータを示し、どのように農産物やその生育環境の汚染レベルが時間と共に変化したのかを紹介しています。これらのデータから、放射性物質が農作物に入るルートのほか、環境システム(例えば森)中の異なる要素(例えば土壌、水、木)の間での放射性物質の動きを明らかにしています。
この本は、農作物の放射能検査、コメや畜産物生産における除染の試み、野生動物・鳥・木・キノコ・材木などの汚染状況、森や水田における放射性物質分布の変化、林業や漁業の損害、消費者心理の変化などを報告しています。そして最終章では、土壌や植物におけるセシウムの動きを可視化する最先端の技術、リアルタイム・ラジオアイソトープイメージングシステムに触れています。
「現場における放射性物質の実際の動きをデータとして体系的に示したものです」と中西友子特任教授は話します。「そして、農業における放射性フォールアウトの影響を理解しようとする研究者にぜひ手に取っていただきたい」と続けます。
書籍情報
Agricultural Implications of the Fukushima Nuclear Accident』(Tokyo:Springer Japan、2016年) ISBN: 978-4-431-55828-6 (Online)
『