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史料編纂所蔵『中院一品記』の出陳のお知らせ

掲載日:2015年8月7日

 動乱の南北朝時代を生きた貴族・中院通冬(1315~63)の日記『中院一品記』自筆原本の大部分を、史料編纂所では所蔵しております。貴重な史料でありながら、全体に保存状態が劣悪で、これまで所内外において閲覧・展示することは困難でした。2013年度より3年間、貴重史料継承のための保全事業をお認めいただき、奈良国立博物館内の文化財保存修理所にて修復が順調に進んでおります。
 本史料と元は一具であった断簡が、同じ奈良市の大和文華館に所蔵されています。本断簡は、京都大学で教鞭を執った中世史家の中村直勝(1890~1976)氏が蒐集した古文書(双柏文庫)で、巻物状をなす本所所蔵の『中院一品記』と直接連続する部分にあたります。本紙の修復を終えて仕立て直す以前の機会を捉え、原状の接続状態に近い形で、同館特別企画展「中世の人と美術」にて展示する運びとなりました。
 あわせて、一紙ごとに解体された修復中でなければ実現できない展示を試みます。双柏文庫旧蔵者ゆかりの京都大学からもご出陳を仰ぎ、複雑なパズルを解くような原本の復元や、紙背文書(裏面の白紙が日記の書写に再利用されて残った文書)を元の書状の状態で並べるなど、研究の現場を実物で直観的にご理解いただけるよう努めています。もちろん、後醍醐天皇、光厳天皇、足利尊氏・直義、高師直、佐々木導誉、夢窓疎石といった時代を彩る人物たちの動向を伝える日記のハイライトもご紹介します。
 本展では、大和文華館のコレクションから撰り出された日本中世の絵画・文書に加え、館外から拝借した絵巻が展示される予定です。優れた美術作品とともに文献史料がひとつの空間をなすことで、時代の空気をお伝えしたいと考えております。夏季休暇や初秋の連休にかかる時期、少し足を伸ばして頂いて、ご観覧を賜りましたら幸いです。
 なお会期中の9月20日(日)には、講演会・シンポジウム「文化財を守り、未来へ伝えるために―『中院一品記』修理事業から―」を開催します。

会場:大和文華館(近鉄奈良線「学園前」駅下車徒歩約7分)
奈良県奈良市学園南1-11-6 TEL:0742-45-0544
会期:2015年8月21日(金)~10月4日(日)
※『中院一品記』の展示箇所は半期で全て展示替(前期:8月21日~9月13日、後期:9月15日~10月4日)
休館日:月曜日(ただし、9月21日は開館、24日は休館)
開館時間:午前10時~午後5時
入館料:一般620円、高校・大学・大学院生410円、中学生以下無料
主催:大和文華館、後援:東京大学史料編纂所・奈良県教育委員会・奈良市教育委員会

関連URL:http://www.kintetsu-g-hd.co.jp/culture/yamato/exhibition/tyuuseinohitotobizyutu.html

対象者: 社会人・一般



史料編纂所蔵『中院一品記』暦応五年(1342)三月七~十六日条(当該部の展示期間:8月21日~9月13日)
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