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大西卓哉宇宙飛行士搭乗のソユーズ宇宙船打ち上げ成功にあたって(総長談話)

掲載日:2016年7月7日

本学卒業生の大西卓哉宇宙飛行士が搭乗するロシアのソユーズ宇宙船(47S/MS-01)の打ち上げが無事に成功しました。

大西卓哉さんは平成10年3月に本学工学部航空宇宙工学科を卒業し、民間旅客機のパイロットを経て宇宙飛行士の道へ進まれました。大西さんは国際宇宙ステーション(ISS)第48次/第49次長期滞在クルーとしてこれから約4ヵ月間、宇宙に滞在する予定です。

科学技術のめざましい進歩を牽引力として、人類はかつてない大きな力を獲得し、その活動範囲は飛躍的に拡大しています。しかし宇宙には未知の領域が依然として多く残されており、その潜在的可能性には限りがありません。これが宇宙開発の魅力です。また今回、無重力という環境を用いた数多くの実験が大西さんらクルーの手で行われます。これらの実験は、生命科学、医学、物質科学、環境科学などの多様な分野で、人類のこれからの発展に寄与することが期待されます。

大西さんは、「人間が文明を築いてきたのは、遠くへ行きたいという気持ちや、見たことがない何かを見たいというような、常により高いところをめざしてきた結果だ」という意味のことを述べています。未知への探求によって新たな発見が生まれ、そこから更なる未知への探求が始まる。この積み重ねにより、人類は文明を築き上げてきたというのです。人類の長い歴史の中で、宇宙への探求はまだ始まったばかりです。大西さんらの挑戦は、私たちが宇宙への理解を深める大きなきっかけとなるでしょう。

宇宙という空間でミッションを遂行するには、クルーの方々とのチームワークが欠かせません。私は、本年4月に行われた東京大学入学式における式辞の中で、日本全国あるいは世界の各地から集う仲間と、競い合いまた信頼しあう人間関係を築いてくださいと述べました。大西さんは訓練中、同じ日本人の宇宙飛行士から大きな刺激を受けたと聞いています。また何よりも国際宇宙ステーションでの活動には、クルーや地上の管制室との強い信頼関係が欠かせません。滞在中には私たちの目には映らない、さまざまな壁が立ちはだかることもあるでしょう。クルーの方々と知恵を集め、力を合わせて困難を乗り越えていただきたいと思っています。

大西さんは宇宙から希望に溢れた多くのメッセージを私たちに伝えてくださることと思います。大西さんの活躍によって宇宙が身近に感じられれば、特に未来を支える若者や子どもたちにとっては大きな刺激となるでしょう。また、国際宇宙ステーションでは日本の科学技術が大きな役割を果たすことになっておりますので、大西さんの活動を通じて、日本が誇る科学技術の素晴らしさを実感できるにちがいありません。

本学は、高度の専門性と世界的な視野を兼ね備え、責任感と行動力をもって知の協創を主導する「知のプロフェッショナル」の育成を目指しています。まさにその先駆者ともいうべき大西さんには、本学卒業生として、その持てる力を十分に発揮し、人類社会に貢献していただきたいと思います。順調にミッションを遂行することはもちろん、4ヵ月にわたる宇宙での滞在を十分に楽しんでいただき、私たちの希望の象徴として美しい地球に帰還されることを心から願っております。

 

平成28年7月7日
東京大学総長 五神 真

関連URL:http://www.u-tokyo.ac.jp/president/messages.html

対象者: 社会人・一般 / 在学生 / 受験生 / 留学生 / 卒業生 / 企業



記者会見を行う大西宇宙飛行士 ©JAXA

ISS第48次長期滞在クルー ©JAXA/NASA

射点に立てられたソユーズMS-01宇宙船(47S)を搭載したソユーズロケット ©JAXA
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