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東京大学政策ビジョン研究センター・政策シンクネット主催国際シンポジウム 第66回GSDMプラットフォームセミナー 「医療分野の研究開発に関する新たな取り組み」 開催報告

掲載日:2015年9月15日

実施日: 2015年08月18日

写真撮影:今 祥雄
 

開催概要

【日時】 2015年8月18日(火)13:30-18:20 (受付開始 13:00)
【会場】 東京大学本郷キャンパス医学部教育研究棟14階 鉄門記念講堂 地図
【言語】 日本語・英語(同時通訳あり)
【主催】 東京大学政策ビジョン研究センター (PARI)
政策シンクネット
【共催】 東京大学 Global Leader Program for Social Design and Management (GSDM)
明治大学国際総合研究所 (MIGA)

東京大学政策ビジョン研究センター・政策シンクネット主催国際シンポジウム「第66回GSDMプラットフォームセミナー 医療分野の研究開発に関する新たな取り組み」は、医療における研究開発の新たな展開と臨床現場での研究開発などについて、その社会的な価値も踏まえながら、これらが医療をよりよいものに変えてゆく可能性について議論を深めるために開かれたものです。日米欧の産業界、大学や研究開発機関などのアカデミア、政府機関から第一人者の方々を交え、医療分野の研究開発に向けた官民協働、リサーチ・インテグリティの確保、さらには研究から実用化までのスピードアップなどについて、グローバルな視野で議論することができました。以下、開催報告として概要を説明します。

会議のプログラム、および当日の発表資料についてはイベント詳細をご覧ください。
 

開催報告

第1セッション「日本における新たな取り組み」

第1セッションは、医療分野の研究開発について、日本における新たな取り組みを把握し、議論を深めるためのセッションで、4つの基調講演の後、パネルディスカッションを行いました。

基調講演の最初は、末松誠先生(日本医療研究開発機構 理事長)です。末松先生は、「日本医療研究開発機構のミッションと展望」と題して、AMEDの組織とその活動目標の説明に加え、特に重点領域に位置付けられている難病治療のインフラストラクチャー整備等について話されました。

松本洋一郎先生(理化学研究所 理事)は、「基礎研究から臨床研究へ」と題して、日本では臨床研究が比較的少ないこと、日本医療研究開発機構への期待として、治験実施側のネットワークを構築し、効率性、リサーチ・インテグリティ、競争力を強化すること、さらには理研でトランスリレーショナルサイエンスを推進し、日本医療研究開発機構の役割に貢献していくことについて言及しました。

永井良三先生(自治医科大学 学長、政策ビジョン研究センター 顧問)は、「臨床現場での研究開発」と題して、東京大学において今日の「産学連携」が可能となるまでの経緯について、歴史的な観点から議論を起こしたうえで、あらためて橋渡し研究を含む循環型の研究開発の重要性について話されました。

森和彦先生(厚生労働省医薬食品局審査管理課 課長)は、「医療・医薬品行政と研究開発」と題して、医薬品開発に多額の資金が必要になっていることをベースにして、先駆け審査指定制度、クリニカル・イノベーション・ネットワーク構想、レギュラトリーサイエンス・イニシャティブの3つについて詳しく話されました。

パネルディスカッションでは、パネリストに江崎禎英先生(経済産業省商務情報政策局ヘルスケア産業課 課長)と松田譲先生(文部科学省革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)ビジョナリーリーダー、 公益財団法人加藤記念バイオサイエンス振興財団 理事長)を加えて、モデレーターの鈴木寛先生(東京大学公共政策大学院 教授)がリサーチ・インテグリティ、人材育成、難病対策、Under the one roofで産官学の協力、個別化医療などのキーワードで新しい医療が生み出されうる環境の整備について議論が深められました。


第2セッション「臨床研究をめぐる国際的な潮流」

第2セッションは、臨床研究を介して進められる研究開発の国際的な潮流について扱うセッションでした。3つの基調講演を受けて、パネルディスカッションを行いました。

David Epstein 先生(Pharmaceuticals Division Head, Novartis AG)は、「医療活動の変化とイノベーション」と題して、イノベーションの必要性、ノバルティスのイノベーションに対する取組み、デジタル技術の可能性、患者さんのためにという諸点について話されました。

野木森雅郁先生(アステラス製薬 代表取締役会長)は、「オープンイノベーションの加速に向け」と題して、創薬環境が大きく変化しつつあり、単一の企業で完結しない形での創薬のあり方として、創薬連携、オープンイノベーション、新しい産学官連携の必要性であり、官学と業界のそれぞれでそうした試みに向けた取り組みを加速させることへの期待が述べられました。

中尾浩治先生(テルモ 代表取締役会長、一般社団法人医療機器産業連合会 会長)は、「医療機器開発のフロンティア」と題して、医療機器分野が世界的に産業的な成長を遂げていることを述べた上で、さらなる医療機器の特性を踏まえた事業化の必要性とそれを支えるイノベーション教育の重要性について話されました。

パネルディスカッションでは、Bruce Goodwin先生 (President, Janssen Pharmaceutical KK, Vice Chair, PhRMA)に加わっていただき、モデレーターの宮田満先生(日経BP社 特命編集委員)が患者中心の研究開発の在り方や、リサーチ・インテグリティの啓発、産学連携の強化、高齢者医療などの日本のポテンシャルについて議論をリードしました。


第3セッション「全体の総括、今後の展望」

第3セッションは、全体の総括として1つ基調講演の後、パネルディスカッションを行いました。

 

基調講演して下さったのは、武田俊彦先生(厚生労働省大臣官房審議官(医療保険担当))です。武田先生は、医療分野の研究開発の展望と題して、厚生労働省の中長期的視点に立った社会保障政策、研究開発の促進、保険償還価格におけるイノベーションの評価の3点について話されました。

まとめのパネルディスカッションでは、武田俊彦先生(厚生労働省大臣官房審議官(医療保険担当))、江崎禎英先生(経済産業省商務情報政策局ヘルスケア産業課 課長)、鈴木寛先生(東京大学公共政策大学院・教授)、David Epstein先生 (Pharmaceuticals Division Head, Novartis AG)、Bruce Goodwin先生 (President, Janssen Pharmaceutical KK, Vice Chair, PhRMA)、松本洋一郎先生(理化学研究所 理事)をパネリストとしてお招きし、大西昭郎先生(東京大学公共政策大学院 特任教授)と林良造先生(明治大学国際総合研究所 所長)が共同モデレーターを務められました。人口の高齢化や慢性疾患対策の観点に立ったときに、求められる医療、そしてそのための研究開発のあり方は明らかに変容をみせており、それは日本に限らず、世界各国が直面している課題となっています。アンメットメディカルニーズ、ターゲット疾患、予算規模、進捗や成果の管理、人材育成等といった点について、グローバルな枠組みのもとに議論がなされることがますます重要になりつつあるなか、今回のシンポジウムはまさにそのような視点を共有する機会の端緒となったといえるでしょう。


まとめ

産業界、アカデミア、そして研究機関における研究の在り方については、オープンイノベーションや産学連携といったキーワードのもとで、グローバルに新たな展開がはじまりつつあります。日本医療研究開発機構を中心に、さまざまなアクターがそれぞれにインテグリティを保った形で共に研究開発を推進できる環境を整えるとともに、患者本位の研究開発、そしてグローバルな連携のもとでの研究開発の実現に向けてさらに議論を深めて参りたいと思います。

 

参考リンク

関連URL:http://pari.u-tokyo.ac.jp/event/smp150818_rep.html



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