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世界の卒業生紹介5/TIME誌が「世界の発明50」に選んだ玉城絵美さん|広報誌「淡青」34号より

掲載日:2017年4月13日

実施日: 2017年03月07日

文系から理系、ビジネスから学究、芸術から政策と縦横無尽に地球規模で活躍する東大卒業生14名の姿から、世界と共にある東大を浮き彫りにします。
 

TIME誌が「世界の発明50」に選んだHCI研究
玉城絵美さん Emi Tamaki
(http://h2l.jp/)
H2L株式会社創業者、早稲田大学人間科学学術院助教
2011年学際情報学府博士課程修了(2011年度総長賞受賞)


 人とコンピュータの相互関係を探るHCI(Human Computer Interaction)という分野があります。2011年9月、大学院生時代の玉城さんが発表したHCI技術を、米誌「TIME」が「世界の発明50」の一つに選びました。

 その名は「ポゼストハンド(Possessed Hand)」。リストバンドから腕の筋肉に電気刺激を与えることで手指の関節を自由に動かす装置です。装着してみると、己の意志とは関係なく、電気刺激と同時に指がビクンと動きます。整骨院の電気治療器にも似た風変わりな装置が生まれた背景には、高校時代の入院体験がありました。

  「心臓病の治療でした。病室って、ヒマですよね。それは、外の世界で人生経験を得られないから。病室にいながら外の世界を体験できればいいのに、と考え始めたんです」
 

東大時代の玉城さん

卒業直前、2012年頃の一枚。


 たとえば、日本にいる我々はアフリカにいる人がいま見聞しているものを体験できませんが、スマートフォンなどの技術で生中継すれば、その体験を共有できます。視覚や聴覚において可能なことは、HCI技術があれば触覚でも可能かも……。その思いを具現化した装置は、筋肉だけでなく、医学、工学、脳科学など様々な研究者の意欲を刺激しました。

 「当時、研究室の仲間が東大のベンチャーキャピタル(UTEC)に通っていたのに影響されて、私もインターンを体験し、人生にとって重要な刺激を受けました。研究を加速させるにはベンチャーによる普及が必要だ、と気づいたんです」

 そして2012年に起業したのがH2Lです。名前はHappy Hacking Lifeの略。ハッキングというと、システムに不正に侵入するようなマイナスのイメージがありますが、本来そうした意味はないそうです。

 「ライフハックという言葉があるように、「とんち」に近いイメージです。少し風変わりな技術で幸せな生活を実現する、という思いを社名にこめました」

 何かに体を操作されることを可能にする技術には一抹の違和感も漂います。しかし、それを補って余りあるほど、人間の感覚と幸せを拡張してくれるものになるに違いない。その信念が玉城さんの手を今後も動かし続けます。
 

おまけQ&A
研究室の暦本純一先生(情報学環)の言葉で印象的だったのは?
「ないものはつくろう」「十歩先でなく一歩先を目指そう」
東大のいいところは?
「すぐ近くに様々な分野の研究者がいたこと」
東大の後輩へメッセージを。
「僭越ながら、専門以外の分野を体験すべきだと思います」
Possessed Handが発展したUnlimited Handとは?
「amazonなどで販売中の触感型ゲームコントローラーです」


※本記事は広報誌「淡青」34号の記事から抜粋して掲載しています。PDF版は淡青ページをご覧ください。

 


レインボーブリッジに臨むオフィスにて。左手に装着しているのがUnlimited Hand。写真:貝塚 純一
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