イベント報告/世界の15賢人による「東京大学への39の提言」|広報誌「淡青」 34号より
11月25日、本郷キャンパス伊藤国際学術研究センターにおいて、第12回プレジデンツ・カウンシルが開催されました。今回は15名のメンバーが参加し、五神総長による基調講演“The University of Tokyo in a Changing World”の後、本学が国際社会で果たすべき役割や、産学協創の国際的拡充などについて、活発な議論を繰り広げました。議論のなかで発せられた東大に対する提言のなかから一部を抽出してお届けします。はたして、東大の進むべき方向性とは?
プレジデンツ・カウンシルとは?
世界各国から招聘した識者をメンバーとする、総長の諮問委員会。2004年の法人化以降、より一層の国際的地位向上を迫られる中、東大の進むべき方向性を議論し運営に活かすため誕生しました。
2006年11月の発足以降、年1~2回の頻度で開催され、今回で12回目。メンバーには現在17カ国25人の有力企業人、学識経験者、国際機関関係者などが名を連ねています。
第12回プレジデンツ・カウンシルプログラム
9:30 開会・基調演説「変化する世界と東京大学―その使命・改革・課題」 総長 五神真
9:45 議題1: 国際社会に対し、東京大学が果たすべき貢献とは?
11:15 議題2: 東京大学が産学協働を世界規模で展開するには?
13:30 「大学院教育の改革」執行役・副学長 小関敏彦
13:45 「社会・人文分野での取り組み」経済学研究科・副研究科長 松井彰彦
14:40 「理学・工学分野での取り組み」理学系研究科・副研究科長 山内薫
15:20 議題3: 世界で活躍できる人材をどのように育成すべきか? 大学院教育の国際化戦略とは?
今回参加したカウンシルのメンバー
1 | チュラポーン王女殿下 (タイ王国第三王女殿下/チュラポーン研究所所長) |
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2 | リタ・コルウェル氏 (米国/メリーランド大学、ジョンズ・ホプキンズ大学特別栄誉教授) |
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3 | ルシアーノ・コウチーニョ氏 (ブラジル/カンピーナス大学正教授) |
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4 | ビル・エモット氏 (英国/著述家・コンサルタント) |
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5 | ビクター・フォン氏 (香港/フォングループ会長) |
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6 | フレデリック・ヒルマー氏 (オーストラリア/ニューサウスウェールズ大学名誉学長) |
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7 | ハッサン・ジャミール氏 (サウジアラビア/アブドゥルラティフジャミール社副社長) |
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8 | 小宮山宏氏 (日本/三菱総合研究所理事長・東京大学第28代総長) |
9 | 黒川清氏 (日本/政策研究大学院大学客員教授) |
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10 | ステファン・ノレーン氏 (スウェーデン/元駐日大使) |
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11 | ペール・ヌーデル氏 (スウェーデン/元財務大臣) |
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12 | カリ・オラビ・レイビオ氏 (フィンランド/ヘルシンキ大学名誉学長) |
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13 | 許智宏氏 (中国/元北京大学学長) |
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14 | ハイメ・オグスト・ゾベル・デ・アヤラ氏 (フィリピン/アヤラコーポレーション最高経営責任者) |
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15 | 吉野洋太郎氏 (日本/ハーバード大学ビジネスクール名誉教授) |
東京大学は・・・・・・
機関同士が国を越えて問題解決に協力すべき。11
どんな人生を送りたいか、世界に何が貢献できるかを考える場であるべき。15
重要な社会的・政治的課題に取り組むよう学生と教職員に促すべき。15
世界的な問題は大学単体では解決できないので、協働の方法を考えるべき。13
課題解決の研究のみでなく、大発見につながりうる基礎研究も大事にすべき。2
未来社会に関する研究所を設立すべき。8
知が分散する時代に表現と研究の自由の砦として機能すべき。4
女子学生を増やすとともに、学術界でより多くの女性の活躍を推進すべき。2
知の創造と共有の拠点から問題解決の拠点へと歩みを進めるべき。7
倫理教育、学部教育、社会の支持が得られる教育を。13
領域横断のプロジェクトを推進すべき。11
気候変動の分野でも重要な役割を担うべき。10
投資機関が注目する国際研究プロジェクトで積極的な活動を。12
SDGs達成のため、排除ではなく包摂を進め、産業を非営利の活動に巻き込むべき。3
喫緊の課題である気候変動問題の解決に複数分野の知を統合すべき。3
高齢化が加速する日本のシルバーマーケットでチャンスを掴むべき。5
保護貿易主義が強まるなか経済学部が貢献を。14
予算・人員など継続的連携を支える仕組みの整備を。6
広報を通じ、産業との連携が評価される風土を醸成すべき。6
産業に扉を開く良いビジネススクールのように、オープンな環境を作るべき。6
教育と研究だけでなく「イノベーション」も重視すべき。5
まず国内の多国籍企業と適切な部局や研究室を繋げ、後に海外に展開すべき。7
大学は金を使い知を生むが、産業は知を使い金を生むという差異を意識すべき。12
社会的意義のあるプロジェクト(スポーツ科学等)を通じ、協働の生態系を構築すべき。3
学生だけでなく教職員の交換プログラムも増やすべき。9
グローバル化やアントレプレナーシップの知見を民間と共有すべき。11
イノベーションを起こし、民間も積極的に関わりたいと思うようにすべき。5
MITとランボルギーニのように様々なレベルの交流プログラムを用意すべき。7
複数分野に通じた「T型人材」を育成すべき。2
社会に出る「訓練」でなく、人間の「教育」として、倫理に触れる機会の提供を。6
本質的評価のためのスキル修得の場を提供すべき。12
政府にアドバイスを行い、科学的事実に基づいた政策決定の支援を。12
総長が日本の代表としてこれから進むべき道を明らかにすべき。11
学生調査で既存プログラムの妥当性を再検討し、大学院プログラムを拡張すべき。2
企業経営や公的サービスの教育の強化を。15
専門化は科学の要素のひとつだが、その知識の実践・応用についても教えるべき。3
学生を学際的なプロジェクトに参加させ、責任を与えるべき。4
優秀な学生が多いので今後の議論には学生も参加させるべき。7
世界における公的機関のあり方が急変する今、学生の要望や行動を調査すべき。5
今回のプレジデンツ・カウンシルは、世界各国でのテロやイギリスのEU離脱、トランプ大統領の誕生など、国際社会が大きく揺れ動く中で東京大学は世界に対して何ができるのか、ということが改めて真剣に問い直される場となりました。特に気候変動の話題は喫緊の課題として幾人もの口に上りました。こうした貴重な提言をまとめ、東京大学が世界における「問題解決の拠点」(base of solutions)となるための努力目標として、会の最後には5つのアクション・プランが示されました。現在の体制でのプレジデンツ・カウンシルは今回が最後。平成29年度からはUTokyo Global Advisory Boardとして、メンバーを変更して新たに生まれ変わる予定です。東京大学、そして世界のより良い未来のために、新体制に期待しましょう。
アクション・プラン
東京大学は- 「指定国立大学法人」として認定を受ける。
- 次回の会議における女性メンバーの数を増やし、学生・教職員の男女比を是正化するために一層の努力を行う。
- イノベーションと共同学習を加速するため、民間部門との接点を増やす方策について検討する。
- よりよいコミュニケーション戦略を策定し、自分たちの活動について世界に知らせるためのチャネルを発掘するとともに、既存の連携先の活用、新しい連携先の開拓によって、緊急性の高い問題を解決する。
- 学生に国際的な挑戦の機会を提供することで、彼らを支援し、将来、世界で出会うさまざまな課題に立ち向かえるよう、さらに教育に力をいれる。