公共政策大学院設立20周年記念シンポジウム「EBPMと政治」を開催

2025年1月、東京大学公共政策大学院は設立20周年を迎え、これを記念してシンポジウム「EBPMと政治」が伊藤謝恩ホールで開催されました。この特別なイベントには、国内外から約400名が参加し、政治家、大使館関係者、官僚、民間企業関係者、学生が一堂に会し、エビデンスに基づく政策形成(EBPM)の意義について議論しました。

シンポジウムの様子
はじめに、相原博昭理事が登壇し、公共政策大学院の設立20周年を祝うとともに、理事自身の物理学のバックグラウンドから、正確なデータに基づいて科学的推論を行うことの重要性を語りました。この重要性は自然現象の解明にとどまらず、複雑な社会問題の解決を目指した政策策定においても非常に重要であると述べ、今回のシンポジウムがそのような政策形成を進める場として期待されると述べました。

相澤理事の祝辞
シンポジウムは、川口大司院長による基調講演で幕を開けました。川口院長は、公共政策大学院の20年にわたる歴史を振り返り、設立当初から現在に至るまでの進化を語りました。特に、2010年に設置された国際プログラムコースと英語化の推進が大学院のグローバル化に大きく貢献した点を強調し、現在では留学生が学生の約半数を占め、授業の多くが英語で提供されていることを紹介しました。
また、政策形成におけるエビデンス活用の重要性を指摘し、公共政策大学院で行われているEBPM研究がいくつかの例を通じて紹介されました。川口院長はさらに、政策形成のトップダウン化や、学術研究が政策形成に与える影響の重要性について触れ、公共政策大学院のビジョンがリーダーの育成と、学術研究の深化を通じて、公共政策を改善させることであると再定義されたことを紹介しました。

川口院長の基調講演
続いて行われた基調講演では、河野太郎衆議院議員が登壇し、エビデンスに基づく政策形成の必要性について詳細に語りました。河野議員は、政策実行において財源の慎重な検討が不可欠であることを強調し、具体例として小児医療費無料化政策の実態を挙げました。この政策が選挙のたびに対象年齢を拡大する形で進行している現状に疑問を呈し、効果的な政策かどうかをデータを基に検証する重要性を訴えました。
また、河野議員は政策目標を的確にとらえる指標の選定や、リアルタイムで状況を把握できるダッシュボードの整備がEBPM推進の鍵であると述べ、データの整備と活用が政策形成における透明性を向上させると力説しました。具体例を交えたその講演は、参加者の関心を大いに引き、活発な議論への呼び水となりました。

河野議員の基調講演
基調講演に続くパネルディスカッションには、牧島かれん議員と浅野哲議員が加わり、川口院長の進行のもと、EBPMを通じて政策形成をどのように進めていくべきかについて議論が行われました。「103万円の壁」を例に、所得控除額の変更が国民に与える影響や、政策の効果を測るためのデータの収集と分析の重要性が話し合われました。また、税制や社会保障制度のわかりにくさが政策効果の理解を妨げている現状に対して、より分かりやすいコミュニケーションの必要性が指摘されました。
さらに、EBPM推進におけるボトルネックについての議論では、「行政の無謬性神話」を打ち破り、うまくいかなかった政策を柔軟に見直すアジャイルなアプローチの重要性が示されました。また、リアルタイムデータの活用や、データの学術利用環境の整備による政策研究の促進が議題に挙がり、学術界と政策実務の距離を縮める必要性が確認されました。
パネルディスカッションにて、牧島議員(左)と浅野議員(右)

パネルディスカッションの様子
質疑応答では、エビデンスと国民の声を政策決定にどう活用するかという質問が寄せられ、「エビデンスに基づく民の声を形成すること」が重要であり、エビデンスと民の声は必ずしも対立しない」という意見が共有されました。また、霞が関で働く人材の魅力を高めるためには、若手が政策形成に深く関与できる仕組みや、官民間の人材流動性を高めるリボルビングドアの実現が必要であるとの意見も出されました。

質疑応答の様子
シンポジウムの閉会に当たって、津田敦理事からは登壇した政治家への謝辞が述べられ、シンポジウムを通じて政策策定におけるエビデンスの重要性がより明確に理解できたとの感想が共有されました。津田理事は、公共政策大学院が今後も発展を続けることへの期待を述べました。

津田理事の閉会挨拶
シンポジウム全体を通じて、EBPMを基軸に公共政策形成の未来を構築するための課題が浮き彫りにされました。今回のシンポジウムは、公共政策大学院の20年の歩みを祝うだけでなく、政策担当者、学界、民間企業関係者そして学生が一体となって取り組むべき課題を共有する場となりました。イベントの模様は東大TVを通じて広く配信される予定です。

左から、谷口副院長、浅野議員、河野議員、牧島議員、川口院長
(写真:上野裕二)

シンポジウムの様子
はじめに、相原博昭理事が登壇し、公共政策大学院の設立20周年を祝うとともに、理事自身の物理学のバックグラウンドから、正確なデータに基づいて科学的推論を行うことの重要性を語りました。この重要性は自然現象の解明にとどまらず、複雑な社会問題の解決を目指した政策策定においても非常に重要であると述べ、今回のシンポジウムがそのような政策形成を進める場として期待されると述べました。

相澤理事の祝辞
シンポジウムは、川口大司院長による基調講演で幕を開けました。川口院長は、公共政策大学院の20年にわたる歴史を振り返り、設立当初から現在に至るまでの進化を語りました。特に、2010年に設置された国際プログラムコースと英語化の推進が大学院のグローバル化に大きく貢献した点を強調し、現在では留学生が学生の約半数を占め、授業の多くが英語で提供されていることを紹介しました。
また、政策形成におけるエビデンス活用の重要性を指摘し、公共政策大学院で行われているEBPM研究がいくつかの例を通じて紹介されました。川口院長はさらに、政策形成のトップダウン化や、学術研究が政策形成に与える影響の重要性について触れ、公共政策大学院のビジョンがリーダーの育成と、学術研究の深化を通じて、公共政策を改善させることであると再定義されたことを紹介しました。

川口院長の基調講演
続いて行われた基調講演では、河野太郎衆議院議員が登壇し、エビデンスに基づく政策形成の必要性について詳細に語りました。河野議員は、政策実行において財源の慎重な検討が不可欠であることを強調し、具体例として小児医療費無料化政策の実態を挙げました。この政策が選挙のたびに対象年齢を拡大する形で進行している現状に疑問を呈し、効果的な政策かどうかをデータを基に検証する重要性を訴えました。
また、河野議員は政策目標を的確にとらえる指標の選定や、リアルタイムで状況を把握できるダッシュボードの整備がEBPM推進の鍵であると述べ、データの整備と活用が政策形成における透明性を向上させると力説しました。具体例を交えたその講演は、参加者の関心を大いに引き、活発な議論への呼び水となりました。

河野議員の基調講演
基調講演に続くパネルディスカッションには、牧島かれん議員と浅野哲議員が加わり、川口院長の進行のもと、EBPMを通じて政策形成をどのように進めていくべきかについて議論が行われました。「103万円の壁」を例に、所得控除額の変更が国民に与える影響や、政策の効果を測るためのデータの収集と分析の重要性が話し合われました。また、税制や社会保障制度のわかりにくさが政策効果の理解を妨げている現状に対して、より分かりやすいコミュニケーションの必要性が指摘されました。
さらに、EBPM推進におけるボトルネックについての議論では、「行政の無謬性神話」を打ち破り、うまくいかなかった政策を柔軟に見直すアジャイルなアプローチの重要性が示されました。また、リアルタイムデータの活用や、データの学術利用環境の整備による政策研究の促進が議題に挙がり、学術界と政策実務の距離を縮める必要性が確認されました。

パネルディスカッションにて、牧島議員(左)と浅野議員(右)

パネルディスカッションの様子
質疑応答では、エビデンスと国民の声を政策決定にどう活用するかという質問が寄せられ、「エビデンスに基づく民の声を形成すること」が重要であり、エビデンスと民の声は必ずしも対立しない」という意見が共有されました。また、霞が関で働く人材の魅力を高めるためには、若手が政策形成に深く関与できる仕組みや、官民間の人材流動性を高めるリボルビングドアの実現が必要であるとの意見も出されました。

質疑応答の様子
シンポジウムの閉会に当たって、津田敦理事からは登壇した政治家への謝辞が述べられ、シンポジウムを通じて政策策定におけるエビデンスの重要性がより明確に理解できたとの感想が共有されました。津田理事は、公共政策大学院が今後も発展を続けることへの期待を述べました。

津田理事の閉会挨拶
シンポジウム全体を通じて、EBPMを基軸に公共政策形成の未来を構築するための課題が浮き彫りにされました。今回のシンポジウムは、公共政策大学院の20年の歩みを祝うだけでなく、政策担当者、学界、民間企業関係者そして学生が一体となって取り組むべき課題を共有する場となりました。イベントの模様は東大TVを通じて広く配信される予定です。

左から、谷口副院長、浅野議員、河野議員、牧島議員、川口院長
(写真:上野裕二)