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第3回「やっぱり物理が好き! ~物理に進んだ女子学生・院生のキャリア~」を開催

掲載日:2018年12月12日

2018年11月18日 (土) カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)と物性研究所、宇宙線研究所の主催により、物理を学ぶ女子学部生及び女子大学院生の支援を目的に「やっぱり物理が好き! ~物理に進んだ女子学生・院生のキャリア~」をKavli IPMU棟 (東京大学柏キャンパス) で開催し、13名の参加がありました。本イベントは、物理学科出身の様々な講師の方をお招きしキャリアパスを提示すると共に、参加者同士のネットワーク作りや物理学分野 (素粒子・原子核、宇宙・天文、物性、物理工学) の魅力を伝える機会として行われたもので、今年が第3回目となります。

最初に森初果物性研究所所長の挨拶があり、講演に移りました。1人目の講演者は、講談社海外キャラクター編集部で編集業務を行っている成清久美子さんでした。成清さんは、「異色の経歴を武器に ~物理出身が文系企業で生きる道~」と題して講演し、学生時代に従事していた海洋物理学の研究内容をまず紹介。研究の中で出会った一冊の科学書によって、伝え方次第で物の見方が変わることや、研究者と一般の方をつなぐ架け橋となりたいという思いを持ったことが出版業界に入るきっかけとなったことも紹介しました。その後は様々な部署異動で科学書の編集と全く違う部署になることもありながら、様々な種類の仕事を経験することで、全ての経験が有機的に繋がりあって現在の仕事に生きていることを伝え、経歴を活かせるかどうかは自分次第、というメッセージを参加者に伝えていました。

2人目の講演者は、国立研究開発法人 物質・材料研究機構 表界面物理計測グループの板倉明子グループリーダーで、「私が飽きなかった唯一のもの、いつまでも楽しい」と題して講演しました。最初に将来の職業選択を考えていく中で、どうして研究者として物理の世界に入ったかを、絵を描くのが好きだったことが要因なのか大学生時に描いた電磁気学のレポートのグラフを先生に褒められたというエピソードも交え紹介。研究テーマとしては、水素の可視化という現在のテーマに至るまでに学部、大学院、就職後も様々なテーマ変更があったことも紹介しました。そうした中で、表面反応、半導体、高分子化学など、どの分野であれ学部で学んだ基礎知識は役立つこと。加えて、物理学は科学としてだけでなく、使い回しが効く考え方で非常に役立つと述べました。周囲の助言や時代の束縛、様々な選択肢がある中で、フィルターをかけずにもしくはかかっていることを前提に情報を集め、何が自分にとって有益かや法則性や習慣を導き出すという、物理学で培われる考え方で人生の選択を自ら考え自ら選択していく大切さを参加者に伝えました。

3人目は、Kavli IPMUの森井友子特任研究員が「ついに完成!Belle II 実験用 SVD 検出器」と題して講演しました。Kavli IPMUが製作を担当してきた高エネルギー加速器研究機構 (KEK) の Belle II 実験で用いるシリコンバーテックス検出器 (Silicon Vertex Detector, 以下SVD) の第4層ラダー16本分 (および予備3本分) の製作過程や技術面について紹介。2018年5月24日付での製作完了に至るまで、どのようなスケジュールで進められ、どのようなトラブルが発生したか、そしてトラブルをどのような工夫で解決してきたかなど、物理学に必要なものづくりの現場を写真や動画を用いリアルに伝えていきました。製作過程で2回の出産も経験し、子育てとの両立をはかりながら携わっており、周囲の協力や理解、大学のキャンパス内に保育所があるという環境に非常に助けられてきたことも伝えました。

最後に講演を行ったのは、株式会社ニコン研究開発本部技術戦略部企画課で現在は技術戦略策定などの業務に携っている氏家知子さんが「私の中での物理の変遷」と題して講演しました。小・中・高校、大学・大学院、就職して現在に至るまでを丁寧に振り返りながら、その時々で何を考え物理学にどのようなイメージを抱いてきたのかを話しました。その中で、大学院時代に携わったラマン分光を用いた液体の動的構造の研究や、就職してから携わった研究の一例として結像理論と収差に関する研究についても紹介。また、現在の企画部門の仕事では、「社内外の状況を踏まえ、会社全体で効率よくどのようにして技術獲得できるか」という技術戦略を考えていく上で、物理学の考え方が役立っているということを述べました。最後のまとめとして、キャリアを築いていく過程で他者や環境の影響も大きくその時々で様々な変遷があったが、自らのキャリアも一例として参考になれば嬉しいと参加者に述べ講演を終えました。

講演の合間に行われた施設見学では参加者が3つの班に分かれ、Kavli IPMU と物性研究所、宇宙線研究所の3研究機関のうち2つの研究所を各班毎に見学しました。物性研究所では大学院生のスタッフが参加学生に自らの研究も交え研究装置の説明を行いました。最後に行われた交流会では、お茶やお菓子を片手に和やかな雰囲気の中で、講師へ積極的に質問する姿や参加者同士での交流がみられました。最後に徳永将史物性研究所准教授の挨拶で締めくくられ、盛況のうちに終了しました。

参加者アンケートからは、「女性のロールモデルがいるのは大変心強い」「モチベーションの高い物理女子とたくさん話せて、意欲が上がりました」「普段交流できない人達と交流ができて良かったです。どのような仕事に就いているのかが分かって参考になりました」「いろんなことを大学で学んで自分の視野を広げたい!!」など、参加者からの前向きなコメントが数多く寄せられました。


交流会の様子

参加者と講師、スタッフらの集合写真
参加者と講師、スタッフらの集合写真

施設見学の様子
施設見学の様子
 

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