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中心小体複製の基本原理を解明 主要キナーゼPlk4の自己組織化特性が複製起点を制御する

掲載日:2019年4月26日

中心小体複製の新たなモデル
中心小体複製の新たなモデル
Plk4が母中心小体上で自己凝集することによって対称性が崩れ、複製起点が生じる。Plk4の過剰な凝集は中心小体の過剰な複製を誘導し、紡錘体の形成異常を引き起こす。
© 2019 Shohei Yamamoto, Daiju Kitagawa.

東京大学大学院薬学研究科生理化学教室の山本昌平特任研究員と北川大樹教授は、細胞分裂に重要な細胞小器官である中心小体の複製メカニズムを解明しました。主要キナーゼであるPlk4が、自己組織化し潜在的な複製起点を形成することで中心小体の複製を制御していることを明らかにし、研究成果は2019年4月18日付でNature Communications電子版に掲載されました。

中心小体はタンパク質の複合体から形成される非膜系の細胞小器官であり、動物細胞における中心体や繊毛・鞭毛の形成に必要とされます。中心小体を核として形成された中心体は、微小管形成中心として細胞分裂や細胞内極性の形成に重要な働きをしています。

中心小体の複製はDNAと同様に一細胞周期に一度だけ起こり、母中心小体の隣に一つだけ娘中心小体が形成されます。中心小体の消失や過剰な複製は、小頭症や癌の悪性化などヒト疾患の原因の一つとされており、適切な細胞の機能を保証するために中心小体の複製は厳格に制御されなければなりません。しかしながら、中心小体のコピー数を制御する基本原理は未解明のままでした。

今回、研究グループはPolo like kinase 4(Plk4)の自己組織化特性が中心小体のコピー数を制御することを解明しました。Plk4は中心小体の複製に必須のキナーゼであることが知られていましたが、Plk4がどのように中心小体のコピー数を制御しているのかは明らかになっていませんでした。

本研究によりPlk4は自身の天然変性領域を介して自己凝集し、液-液相分離を起こす特性をもつことが明らかになりました。さらにPlk4は自己リン酸化によって自己凝集体の物性を制御することがわかりました。このPlk4の特異的な物性により、新たに形成される中心小体の形成起点が一箇所に限定されることを明らかにしました。さらに、Plk4の過剰な自己凝集は中心小体の過剰な複製を誘導し、細胞分裂の異常を引き起こしました。

本研究成果は癌の悪性化などの疾患の原因解明に役立つと期待されます。

「なぜ1つの母中心小体から1つだけ娘中心小体ができるのか?というシンプルな問いの答えを探し続けてきました」と山本特任研究員は話します。「まだまだ答えは出ていないのでこれからも追求したいと思います」。

論文情報

Shohei Yamamoto and Daiju Kitagawa, "Self-organization of Plk4 regulates symmetry breaking in centriole duplication," Nature Communications: 2019年4月18日, doi:10.1038/s41467-019-09847-x.
論文へのリンク (掲載誌別ウィンドウで開く)

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