本学教員の逮捕を受けて(総長メッセージ)
本学医学部附属病院で診療と研究教育に携わる現役教員が、収賄の容疑で逮捕されるという事態が発生しました。このことは極めて重大であり、総長としての責任を痛感しています。学生、患者の皆様をはじめ、本学関係者ならびに平素より本学をご支援くださっている方々に多くのご迷惑、ご心配をおかけしておりますこと、心よりお詫び申し上げます。
今後、進められていく捜査に全面的に協力し、本学としても外部の弁護士による調査をもとに事実関係を明らかにし、その結果を踏まえ厳正に対処してまいります。
また、事実関係が明確になり次第、私自身を含む執行部ならびに関係する部局長の責任の所在を明らかにし、しかるべき対応をとる所存です。
すでに報道された医学系研究科の臨床カンナビノイド学講座に関する事案を受けて大学としての改革を進めるなか、こうした事態が発生したことは、東京大学ひいては国立大学法人に対する社会の信頼をさらに大きく損なうものであると、重く受けとめています。
大学が社会との対話を深め、学外の企業や団体、個人の皆様から、ご支援あるいは協働のご提案をいただき、そのリソースを活用して教育研究を展開していくことは、公共の知の構築に奉仕する大学にとって極めて大切です。こうした連携を推し進める上では、皆様からの信頼がなによりも重要です。今回の一連の不祥事は、その信頼を毀損し、大学の教育研究活動そのものの発展を妨げる行為であり、決して許されることではありません。
失った信頼を回復すべく、執行部主導のもと全学が一丸となって、以下に示すガバナンス改革を速やかに進めます。
これらの改革はすでに起こった事案への単なる対症療法ではなく、本学が「世界の公共を担う」総合大学としての強固なガバナンス体制を確立するために、一体的に推進すべきものです。早いものは年内に結論を得て、速やかに実行に移します。この改革によって、本学が従来課題としてきた全学的なガバナンスが強化され、幅広い社会との協創を生み出すことが可能になると考えています。
本学が危機的な状況にあるという認識のもと、社会の信頼を回復し、教育研究ならびに診療等の活動を今後も発展的に実施していけるよう、この改革に全力で取り組んでまいります。
令和7年11月24日
東京大学総長 藤井 輝夫
ガバナンス改革について
- 1)民間からの資金の受け入れを伴う活動に関わる制度の見直し
先般の事案を受け、教職員の倫理意識の徹底、大学本部によるガバナンスの強化等を柱とした社会連携講座等の運営に関する、本学全体での改革策を策定しました。これらは順次実行し始めています。加えて今回の事案で指摘されている、利益相反のチェックを含む寄付金の受け入れ・執行管理の体制についても、現状を検証し、見直しを行います。
- 2)医学系研究科・医学部・医学部附属病院の抜本的改革
医学系研究科・医学部・医学部附属病院の組織体制や運営にどのような問題があるのかを明らかにし、その根本的な解決を図り、健全かつ持続可能な病院等の運営を実現します。このため、学外者を中心とした「医学系研究科・医学部・医学部附属病院改革委員会」 (PDFファイル: 316KB) を設置し、病院を医学部附属から大学附属とする可能性など組織体制の見直しのほか、運営の透明性向上、部門間の連携強化、情報共有の促進、寄付金を含む外部資金の管理・執行体制の検証・強化、人材の流動性向上・適正配置など、抜本的な改革の方向性を定め、速やかに実行します。加えて今回の事案で指摘されている、利益相反のチェックを含む医療機器選定の仕組みについても、現状を検証し、見直しを行います。
- 3)全学的なリスク管理体制の再構築 (PDFファイル: 153KB)
本学全体のコンプライアンス体制を抜本的に強化するため、国際機関や民間企業等を参考とした、より信頼性・実効性の高い仕組みを導入します。あわせて、事案発生時に迅速で的確な意思決定ができる危機管理体制を再構築します。
一方、一連の事案は、未だ捜査や係争が進行中ですが、可能な限り速やかに大学における対応プロセスの検証を進め、その結果を新たなリスク管理体制に反映してまいります。


