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第3回東京大学地域連携シンポジウム 開催報告 地域課題の解決に向けて~大学は何ができるのか~

掲載日:2025年4月9日

第3回東京大学地域連携シンポジウム
「地域課題の解決に向けて~大学は何ができるのか~」 開催報告

2025年1月22日(水)、東京大学小柴ホールにて、第3回東京大学地域連携シンポジウムを開催いたしました。

本シンポジウムは、全学や各部署で展開している地域連携事業間の情報共有の場を設け、同様の課題を有する地域同士の連携を促進することを目的として、毎年開催しています。
3回目の開催となった今回は、「地域課題の解決に向けて~大学は何ができるのか~」をテーマに掲げ、人口減少や人手不足、災害対策・復興等、各地域で起きている課題に対して、本学と地域との連携事例を共有しました。

行政関係者、学生をはじめ、大学教職員、会社員等多くの方に会場にお越しいただいた他、オンライン配信には遠方からもご参加いただきました。

「復興支援から協働へ ~地域とともに歩んできた13年~」
秋光 信佳 東京大学アイソトープ総合センター教授

(秋光 信佳教授)

2011年3月11日の東日本大震災に伴い発生した福島第一原子力発電所事故後、福島県と連携して実施してきた取組を紹介しました。
復興知関係の人材育成に関する取組、楢葉町×東京大学総合研究博物館連携ミュージアム「大地とまちのタイムライン」の開館に向けての調整、創薬についての取組等、多岐にわたる連携が進められています。
当初はアイソトープ総合センターが放射線研究を行っていることから、原子力災害からの復旧復興を支援する立場でしたが、13年以上の活動を通じ、福島県が教育の場、大学の資源を活用する場、そして研究の場として唯一無二の存在となり、さらには地域の方々が、教育研究活動に欠かせない協働の仲間となったと語りました。

「熊本県と東京大学の連携」
高橋 浩之 東京大学大学院工学系研究科附属総合研究機構教授
百瀬 健 熊本大学 半導体・デジタル研究教育機構 教授



(上段:高橋 浩之教授
下段:百瀬 健教授)

高橋教授は、近年の熊本県での半導体産業の振興に伴い、半導体関連人材の育成、地下水の保全、交通渋滞対策といった課題に対し、東京大学が熊本県と共に取り組んでいる内容について紹介しました。
また百瀬教授は、日本最大の半導体産業集積地である熊本県にあり、半導体人材育成の中心的立場を担う熊本大学が、半導体の研究教育を行う新たな組織を立ち上げ、東京大学と連携した取り組みを実施していることを紹介しました。
ClimCOREプロジェクトの地域気象・気候データを活用した防災減災の取組や、中高生の育成プログラムにおける熊本県教育委員会との連携についても触れ、多岐にわたる連携を行っていることを説明しました。

「しまなみ学び・交流の場を活用して学びと社会を結び直す」
坂田 一郎 東京大学大学院工学系研究科教授・地域未来社会連携研究機構長

(坂田 一郎教授)

愛媛県今治市の大三島にて、陸・空・海Beyond5G連接通信の実証実験、しまなみテクノロジー市民大学講座、学生が現地で行うフィールドワークという3つの活動を密に重ね合わせて実施している取組を紹介しました。
フィールド活動では、学生が企業訪問や市長との面談 を行い、地域課題の把握と意見交換を行ったと紹介しました。
また、移住者が多い大三島で、学生が移住者や地元の方々・地域の学生との交流等を行うことで、移住者と地元の方々が一緒になって多文化共生のまちづくりを行っていることを学ぶことができると紹介しました。
また、デジタル化が進行する時代に合わせた、地方での「新学習地域」の形成のために大学ができることは、デジタル技術や人材等、構成要素となるリソースを提供することであると語りました。

トークセッション

トークセッションでは、秋山聰東京大学副学長・社会連携本部副本部長の進行で、
講演者に加えて福島県、熊本県、愛媛県今治市の自治体職員も参加し、大学と連携しての取組や課題等を紹介しました。

五月女有良 福島県企画調整部長 

  • 震災から13年以上経ったが、原子力災害特有の難しさがあり、復興のスタートが遅れている。福島イノベーション・コースト構想にて、大学の知を活用した取り組みを進めている。
  • 人材育成も一つの柱としており、「東京大学フィールドスタディ型政策協働プログラム」で福島に来た学生と、卒業後も関係を築きたい。

三藤由佳 熊本県東京事務所くまもとセールス課参事

  • 熊本県をフィールドとして、地域気象・気候データを活用した研究の社会実装ができるか、実証実験を行っている。大学の技術や知見と、地元が本当に解決したい課題とのマッチングの難しさを感じている。
  • 大学の研究を間近で見て、多様な研究の面白さを知った。文字では伝わらないこともあり、対話が重要であると感じている。

冨田義勝 愛媛県今治市地域振興部長

  • 人口減少対策として、移住定住に力を入れて取り組んでいる。移住相談や定住支援の施策を行い、2023年度には3,000人を超える方が移住している。
  • フィールドワークの受け入れを通じて、学生の視点から見た、地域の課題解決に対する提案をもらえることが嬉しい。
その後、以下の議論が交わされました。
  • 学生がフィールドワークを通じて得た地方との関係性を、社会人になっても継続できるようにしたい。地方で活躍している人の成功事例を共有すれば、地方と関係を持った学生が地方にかかわり続けるきっかけにできるのではないか。
  • 自治体と大学の連携として、会議体を形成して外部からの意見を取り入れられるような場を作るとよいのではないか。
  • 移住定住者を増やすためには、移住フェアや相談窓口の設置等も重要だが、まずは観光等での交流人口を増やすことも重要である。
  • 大学が行っているキャンパス公開等に自治体職員も参加し、結びつきを作れるとよいのではないか。
  • 東京と地方の物理的な距離を埋めるためには、オンラインツールの活用が重要である。
  • 自然災害に関して、全国各地で大地震が起きる予測がされている中、あらかじめ大学との関係性を作り、いざという時に連携できる体制を構築することも重要なことである。
  • 大学と地方との連携において、「災害」と「教育」というキーワードがあると言える。災害が避けられない日本であるからこそ、大学が災害に向けて取り組む必要性がある。
    
(トークセッション)
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