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東京大学基金研究者インタビュー : 高橋 嘉夫 教授

掲載日:2019年6月3日

写真:高橋 嘉夫 教授

東京大学基金 研究者インタビュー : 高橋 嘉夫 教授

大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻
専門分野:分子地球化学

―高橋先生が専門とされている研究分野「分子地球化学」について、わかりやすく教えていただけますでしょうか。
確かに、一般の方にとっては聞きなれない学問分野かもしれませんね。私たちが暮らす地球は、今から46億年前に誕生したと考えられていますが、地球自体を含む地球上に存在するあらゆるものは、すべて元素の組み合わせからできています。つまり、地球上で過去に起こった現象、これから起こるであろう現象を知るためには、元素の状態を観察することがとても重要であるということです。 
「分子地球化学」は、地球という大きな存在を、原子・分子のレベルから解明していこうという学問であり、地球の成り立ちや組成の基礎的研究、そして物質の循環、自然災害・環境問題など、応用的な問題解決までを含みます。我々が対象にしているこうした物理化学的法則は、宇宙でも地球でも過去でも未来でも成り立つはずです。ゆえに、地球の過去、現在、未来の正しい理解や予測を可能にし、その知識を生かしながら「夢のある科学」と「役に立つ科学」の両方を追求できる、21世紀に最も必要とされている学問であるといえるでしょう。 

(中略)

―高橋先生は東京大学運動会軟式庭球部の部長も兼務されています。募金活動を推進され、部のナイター設備の設置を実現されましたね。
私は東大で博士課程を修了後、広島大学に職を得て、その後教授となり、2014年に本学に戻ってきました。その際に、軟式庭球部の部長も兼務せよと仰せつかりましてね。実は学生時代、私自身も東大軟式庭球部の部員だったんですよ。当時を振り返ると、部活よりも勉強をもっとしておけばよかったという多少の後悔はあるのですが、もちろんいい面もたくさんありました。スポーツには必ず勝敗がついてまわります。試合での負けはある意味挫折ですが、スポーツの世界では次にまた勝負がやってくる。その連続によって、一度負けても次に勝つためにどうするかを考えるという、挫折を乗り越えるための思考を身につけられたと思っています。
今の東大生を見ていて、とてももったいないと思うことがあるのです。高校までは挫折しらずの成績トップクラスだった学生が、駒場の教養課程に入った瞬間に、ボトムクラスにいきなり転じるケースが当然出てきます。特に地方から東大に進学してきた学生は、その挫折や悩みを相談できる仲間がなかなか見つけられず、一人落ち込んでしまい、大学を去ることがままあるのです。東大としては、せっかく預かった優秀な人材を見捨てるのは実にもったいない。実は総長に直訴したこともありますが、この問題をなんとかしたいと思うのです。そういった意味でも、スポーツにはそこに歯止めをかけられる可能性があります。だから私は軟式庭球部の学生たちに挫折経験の意味と価値を伝えていますし、文武両道で頑張り社会を生き抜く力を身につけてほしいから、今も部長を続けているというわけです。

(中略:続きと全文は、「東京大学基金」ウェブサイトの研究者インタビューをご覧ください。)
 

―また、昨年2018年は「地球惑星科学の研究教育支援基金」も立ち上げられています。その目的などを教えてください。

ここまでのお話でおわかりいただけたと思いますが、「分子地球化学」は、地球を原子・分子レベルから研究することにより、地球や人間の生命史、気候の変化、資源、自然災害・環境問題、元素の循環などの解明に役立ち、さまざまな問題解決や未来予測にも貢献できる、21世紀、そして「令和」の時代に最も必要とされる学問分野だと確信しています。
その根っこにあるのは「理学」です。誤解を恐れずに言いますと、理学での発見が“種”になって、各種工学分野が生まれ、私たちの不便を解消する製品やサービスなどが発展していきます。長い目で見ると、理学が発見した種を常に増やし続けることが、地球と地球上の生命を長く守るための要です。そして、その重要な役割を担っているのが、理学系の研究者であり、私たちに課せられた使命であると思っています。
しかし、昨今よく報じられている「ポスドク問題」などの影響もあるのでしょう、博士課程に進む学生が減っています。朝日新聞が、40歳以上の社会人に対して、「生まれ変わって、20歳から人生をやり直せるなら、何になりたいですか?」という調査を2010年と2019年に実施したところ、両年共に1位は「大学教授・研究者」でした。私が言うと手前味噌になってしまいますが、本当に大学教授・研究者は夢のある素晴らしい職業だと思うのです。

写真:高橋 嘉夫 教授

少し前置きが長くなりましたが、「分子地球化学」やより広い「地球惑星科学」をさらに活性化し、進化させるためには、ここで学び、博士課程に進む学生を増やすことが重要です。しかし、近年の運営交付金の減少などにより、そのための資金が不足しています。大学や理学系、さらに地球惑星科学専攻(高橋教授は2017-2018年度の理学系研究科地球惑星科学専攻の専攻長)としても、大学の運営費交付金の一部を博士課程学生のサポートに充てたり、また私個人としても、研究費の一部を学生の支援に充てるなど、学生向けの支援を継続していますが、正直なところまだまだです。そこで、本学のOB・OGの皆様、関連企業の皆様、一般の方々から、「研究と教育の基盤構築」「学生の就学支援」「若手研究者の海外派遣」「本学問の理解を促進するアウトリーチ活動」などへのご支援・ご寄付をいただけることを願い、2018年12月に、地球惑星科学専攻として「地球惑星科学の研究教育支援基金」を立ち上げました。
2019年の4月には、理学部主導で、小石川植物園でのお花見イベントを開催。当基金として最初のお声がけをし、ご参加いただいたOB・OGを中心に、約100名の方々から多くのご寄付をいただきました。また、2019年9月のホームカミングデーでの説明会を予定しております。私たちの研究成果が、将来、皆様のお役に立てるよう、これからも一生懸命、当該分野の研究と後進の教育活動に取り組んでまいります。ぜひ、「分子地球化学」や「地球惑星科学」という学問分野の重要性をご理解いただき、ご支援とご寄付をお願いできればと思っております。


(全文は、「東京大学基金」ウェブサイトの研究者インタビューをご覧ください。)

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