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ケ・ブランリ・トウキョウ『聖霊の声——「驚異」の島マダガスカルより』

掲載日:2019年3月15日

基本情報

区分 展示
対象者 社会人・一般 / 在学生 / 受験生 / 留学生 / 卒業生 / 企業 / 小学生 / 中学生 / 高校生 / 大学生 / 教職員
開催日(開催期間) 2019年4月16日 — 2022年4月10日
開催場所 その他学内・学外
会場 インターメディアテク2階スペース「SPECOLA(スクエア)」
東京都千代田区丸の内2-7-2 KITTE2・3F
アクセス:JR東京駅丸の内南口徒歩約1分、東京メトロ丸ノ内線東京駅地下道より直結
時 間:11時-18時(金・土は20時まで開館、入館は閉館時間の30分前まで)
*時間は変更する場合があります
休館日:月曜日(月曜日祝日の場合は翌日休館)、年末年始、その他館が定める日

※新型コロナウイルス感染拡大防止のため、以下の来館者へのお願いを事前にご確認の上、ご来館いただきますようお願いいたします。
[1] 入館の際はマスクの着用、咳エチケット、手洗いや手指消毒にご協力ください。
[2] 入館時に検温を実施させていただきます。37.5度以上の発熱が確認された場合、ご入館をお断りさせていただきます。
[3] 過去2週間以内に感染が引き続き拡大している国・地域への訪問歴がある方は、ご来館をお控えください。
[4] 館内では他の来館者との距離をできるだけ2m取るように心がけてください。
[5] 館内ではお静かにご鑑賞いただくようお願いいたします。
[6] 展示物及び展示ケース、使用を中止している機器や壁にはお手を触れないようお願いいたします。
[7] 館内の混雑状況により、入館規制を行う場合があります。
[8] 10名以上での団体・グループでの入館はご遠慮いただきますようお願いいたします。
参加費 無料
申込方法 事前申込不要
お問い合わせ先 050-5541-8600 国外からは +81-47-316-2772(ハローダイヤル)
第七回ケ・ブランリ・トウキョウでは、マダガスカルの祭具類を展示します。

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 「船乗りシンドバッドの冒険」には、象を鷲掴みにして空中高く舞い上がる巨大な鳥が登場する。この種の怪鳥譚は、「ガルーダ」「ルフ」「ロック」など、場所に応じて鳥の呼び名こそ違え、東南アジアからインドを経てアラブ世界まで、広く民間に流布する。13世紀のマルコ・ポーロは、『東方見聞録』のなかで、怪鳥がアフリカ東端部の「モガディシオ」(現在のソマリア)に棲息するという伝聞を記しているが、音韻の類似からそれを「マダガスカル」と取り違える者がいた。大航海時代以降、船乗りも、冒険家も、皆が「マダガスカル」を復唱したことから、いつしかそこが怪鳥の住処とされるようになった。西洋人が近世に入ってからもなお、「マダガスカル」を驚異に満ちた島と信じ続けた所以である。実際、アフリカ大陸南東部沖4百キロメートルほどの場所に位置する「マダガスカル」は、南北に長い島であるというだけでなく、標高3千メートルに近い三峰を有する地勢のゆえに、多くの固有種を含む稀少な動植物相の宝庫として知られる。西インド洋に浮かぶ島には、紀元前4世紀には東南アジアのボルネオ島から偏西風を利してオーストロネシア系の人々が来島しており、そこに10世紀頃から東アフリカのバントゥ系の人々が加わって、独自の東南アジア=アフリカ混淆文化が誕生した。そのため、「マダガスカル人」と総称される人々の精神生活は折衷的で、複雑なものとなった。ばかりか、宗教や呪術や儀礼の写し鏡である祭具類もまた、他所に例を見ぬ、特異な造形に結実することになったのである。使われている素材には、たしかにアフリカの部族美術と通有なものが多い。しかし、輪郭やマッスの処理法に認められる繊細な細工は、紛れもなくアジア的である。マダガスカルの「驚異」は自然相のみに止まらない。

西野嘉章
インターメディアテク館長

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展示解説

 マダガスカルには、この世と並行して存在するもう一つの世界に対する根強い信仰があり、多くの事物がそのような世界空間を物語っている。その空間に存在するのは、絶大なる力、祖先、精霊や自然現象といった霊的なものである。魔除けの御守は個人だけでなく、家族・親族や共同体を守ってくれる。ここに展示されている「オディ」や「サンピィ」という御守は一本の捻じれた蔓植物から作られることが多いが、植物(木や根)、動物(コブウシの脂肪やワニの歯)、そして人工物(真珠や小銃の弾丸)の要素から成る複雑な組み合わせとなっていることもある。このような御守は、角か、あるいは小さな彫像が装飾された角形の容器として、しばしば持ち主が身に着ける。預言者と治療者の役割を同時にもつ人物は「オンビアジィ」と呼ばれ、問題の原因を判断し、それに応じて治療を施し、御守を作る。そして、祖先の精霊や自然の力がその御守を所有する人々を癒し、彼らに幸運をもたらすのである。祖先に捧げられた貢物のなかで、巨大な保護物の形をとる墓は最も基本的な役割を果たし、故人の子孫があの世と接触することを可能にする。墓を飾る葬礼彫刻とは、故人の家族を取り巻く富と名声を表す、人目を引くための記号にほかならない。女性像の場合は多産性が、男性像の場合は父性の力が、はっきりとその彫刻に表されている。現代の葬礼柱には、しばしば社会的成功を想起させるテーマや飛行機や車といった近代的イメージの装飾が先端部に施されている。

イヴ・ル・フール
ケ・ブランリ・ジャック・シラク美術館コレクション部長


主催:東京大学総合研究博物館+ケ・ブランリ・ジャック・シラク美術館
企画構成:イヴ・ル・フール(ケ・ブランリ・ジャック・シラク美術館コレクション部長)
後援:クリスチャン・ポラック氏+株式会社セリク

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ケ・ブランリ・トウキョウについて

 世界中にはさまざまな文明が生み出した力強く不思議な形態が存在する。その多様性は驚くばかりであるが、これらを日本で目にする機会は少ない。そこで、パリのケ・ブランリ・ジャック・シラク美術館のコレクションから選りすぐりのアイテムをここに展示し、ひとつの邂逅の場として設えた。この展示は、周囲の東京大学コレクションと時に共鳴し、時に対立することで、見る者に対し、人類が大いに関心を寄せるべき問題を投げかけるだろう。本プロジェクトはケ・ブランリ・ジャック・シラク美術館とインターメディアテクとの新たな文化的・学術的協働からなる。これによって、フランス国立ミュージアムが東京の中心に長期的活動拠点を獲得することになった。人々がもつ既存の世界観の転換を図るべく、アフリカ、アジア、オセアニア、南北アメリカの諸地域から象徴的なアイテムを選定し、定期的に展示更新を行う予定となっている。本拠点がすべての文化、時代、領域の交叉する創造的結節点として機能するために、ケ・ブランリ・ジャック・シラク美術館とインターメディアテクはいままでにない方法論を共有し、分野横断型のミュージアム活動を推進していく。


ケ・ブランリ・ジャック・シラク美術館

 ケ・ブランリ・ジャック・シラク美術館は、2006年6月パリに開館した。アフリカ、アジア、オセアニア、南北アメリカ美術を展示していたルーヴル美術館の「パビリオン・デ・セッション」を前身とする。ジャック・シラク元大統領(1995-2007年)が建設計画を推進し、建築家ジャン・ヌーベル(2008年プリツカー賞受賞)が設計を担当した。西洋中心主義を脱し、アフリカ、アジア、オセアニア、南北アメリカの芸術や文明に対し、文化的・宗教的・歴史的影響が交差した複眼的な視点から、それらにふさわしい評価や解釈を行うことに活動の中心を置く。学術的・芸術的対話のための場所として、また、市民・研究者・学生・現代芸術家をつなぐ交流拠点として、さまざまな展覧会、コンサート、催し物、シンポジウム、ワークショップ、上映会を定期的に開催している。

ケ・ブランリ・ジャック・シラク美術館 公式HP




写真© musée du quai Branly - Jacques Chirac, photo Claude Germain


 

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